2024年のバスレフ共鳴管① | リュケイオン2

2024年のバスレフ共鳴管①

上手くまとまるか、試しに図面を起こしてみたが、当初想定していた方向とは異なり、fd=86Hzの最低共鳴音域64Hzとなった。

実効振動半径:r=3.7㎝から振動板面積を求めると43㎠なので、断面積65㎠のダクトは振動板面積の1.5倍となり肝心のバスレフ動作並びに前後の空振り動作をしてくれるのか怪しくなって来た。

ユニット裏から開口部までをL=1.1mと仮定すると、音響迷路計算では↑156Hz, ↓312Hz, ↑469Hz, ↓625Hzとなる。

大まかな構造は現用メインスピーカー「タイタン」と同じだが、60Hzが薄いスピーカーを作ったとしても自分で使う事は有りえないし、何しろ試行錯誤の学びが少ない。

特に低域特性が非常に見にくい。一目盛りが2dBなので振れ幅も大きく他のF特との比較に混乱するので部分拡大してみた。

1kHz~5kHzに掛けても凹凸が激しいので、1kHzを基準に低域を観るとフラットと言えるのは200Hzまでで、150Hzではもう5dBほどマイナスとなり、80Hzでマイナス10dBくらいだろうか。

ユニットについてはカノン5Dさんが詳細にツイートして下さっているので参考になる。通信傍受が怖くてスマホにはTwitterをインストールしていないため、スクリーンショットを貼らせて貰った。

F特の暴れからすると「精緻」は期待薄だが「パワフル」には期待する。↓

電子楽器用のスピーカーユニット↑との事で、美声が聴けるようなルックスでは無いが、ソアボ2の白いコーン紙も外見とは裏腹に素晴らしい女性ボーカルを聴かせてくれたので期待は出来る。

男女ボーカルは5~6㎝フルレンジでも充分に帯域カバーしてくれるので納得だが、大編成のクラッシックとなるとある程度の低域再生と大音量が必要かと思う。タフで高耐入力なユニットを目指している印象で、昔のテクニクスユニットのようなタイプだろうか。

エッジが柔らかいという事は、音の立ち上がりを重視しているのか。

シンバルに違和感というのは、単純に9㎝フルレンジフェライトマグネット仕様なので高域スパイスが届かないのだと推測。

5~6㎝フルレンジユニットでも、フェライトマグネット仕様だと高域は鋭さが出ない。

この辺はとても残念。「自作マニアに挑むなら本気のユニットで来い」と長岡先生ならメーカー担当者に仰るだろうか。ハードでシャープでダイナミックな長岡派にはやや物足りないスペックなのは音からも推測出来そう。

 

ヤマハ独自の振動系素材テクノロジーを使った9cmフルレンジスピーカーユニット(以下、ヤマハ製フルレンジスピーカーユニット)で、スピーカーを自作してみませんか?このユニットは、新開発素材の振動板とサラウンド(エッジ)によるプロトタイプで、サイズを超えた低域表現とダイナミックレンジを特長としています。
完成した自作スピーカーの試聴イベントも開催予定です。ふるってご応募ください。
主催:ヤマハ株式会社
共催:株式会社ヤマハミュージックジャパン
協力:MJ 無線と実験(株式会社誠文堂新光社)

上記でスピーカー自作を呼び掛けているのが妙だ。高性能ユニットかも知れないが安価で高耐入力が特徴のように読める。

サイズを超えた低域表現というのは、所詮9㎝フルレンジの帯域範囲という事で100Hz程度を想定しているのかも知れないが、安いユニットを使い易い木工を愉しんでるDIYマニアならいざ知らず、名うてのスピーカービルダーに呼び掛けるには物足りない気がする。スピーカー筐体の良し悪しは100Hz以下の低域再生に掛かっているのだから。さすがにこのユニット販売で儲けを出そうという目論見ではないと思うので、単純にユーザーを楽しませるのが目的だろうか。少なくとも、応募作品から何らかのヒントを見出そうという尖ったユニットでは無いと思う。

■内容
スピーカーを自作していただく方は、ご応募の中から選出します。選出された方にヤマハ製フルレンジスピーカーユニットをご提供します。
・自作スピーカーの中から、試聴イベントに出品するスピーカーを選出します。
・試聴イベントに出品するスピーカーは、ヤマハの無響室で音響特性を測定し、製作された方に結果をお知らせします。

上記がとても気になる文言である。自作派の愉快な仲間達で馴れ合いして貰おうという企画なら応募者すべてに有償配布し写真掲載してお茶を濁しそうだが、基本的に作品を選出するという姿勢が有る。試聴イベントまで企画しているという事は、広く聴かせる意図は確かに有りそう。しかし、100Hz以下は見込めないスピーカーで何を聴かせるというのか不思議。無理やり整合を付けると、応募者の技量が問われる100Hz以下の筐体は期待せず、中高域で無様な酷い音を出さない応募者を慎重に選別し、イベント等にて広告代わりに活性化を図ろうとしていると観るがどうだろう。この推論が正しければ、自分のような不細工なべニア造りの長岡派は一次審査ではじかれるであろう事も容易に推測出来る。しかし、軸上1mのF特測定結果を添付すればどうか?バスレフ共鳴管の目論見がすべてジャストミートすれば、望外の重低音実測をお見せ出来るはず。しかし、これは恐らく信用されないだろう。自分以外に頻繁にF特を公表している御仁は滅多に居ない。ならばこそ、メーカー謹製の無響音測定室にて同条件測定して頂きたいところ。正直、自分で測定したF特とメーカー測定と、その違いには興味津々である。可能で有れば、自分の作品だけでも測定結果を広く公表して欲しいところ。自分の場合も長岡先生の作例F特を食い入るように見入って音を想像したものなので、スピーカー自作の楽しさと可能性を広く知らしめたい想いが有る。
ヤマハ製フルレンジユニットの仕様書はこちら
※ヤマハ製フルレンジスピーカーユニットは非売品です。 

■開発者からのメッセージ
 私は電子楽器の音響部品を担当する設計者です。始まりは「フラッグシップ電子ピアノに相応しい、究極のスピーカーユニットが欲しい」という要求でした。主な要求性能は、小口径・高能率・広帯域・高耐入力・低歪、しかもかけられるコストに限りがあるという無茶ぶりです。真っ先に相談した社内のユニット専門部署からは「非現実的で難しい……」との反応でした。これらを実現できる素材が無かったためです。
 「素材が無いなら作ればいい―――」。電子楽器開発セクションと研究開発セクションによるタスクフォースが立ち上がりました。楽器、ユニット、振動板素材、エッジ素材の専門家が力を合わせ、従来技術にはない素材と製法を駆使することで、2年をかけてようやく理想のユニットが出来上がりました。このユニットがフラッグシップ電子ピアノ設計部門の高い評価を得られたのは勿論のことですが、私は、HiFi用のユニットとしても とてつもない可能性を持っているのではないか!と気づいたのです。そして沸き上がってきたのは「この感動を一刻も早くお客様に届けたい」という想いでした。
 私たちは、完成品としてのスピーカーにはこだわらずに、このユニットをお客様にどのように届けるべきか検討を始めました。そして「スピーカーを自作される方たちなら、このユニットの良さを理解してその価値をさらに引き出してくださるのではないか」という仮説の下、「MJ無線と実験」編集部の方々やオーディオライターの小澤隆久氏の協力をいただき、このユニットを用いた自作イベントを開催することができることとなりました。
 本イベントの趣旨に共感いただき、可能性探索へともに取り組んでいただける、たくさんの方の参加をお待ちしております。

担当者の名前を出さないのも時代の流れか。取り敢えずで雇い入れたアルバイト氏の仕事ではなく、YAMAHA技術者からの呼びかけという事で興味深く拝読した。

しかし会社から要求された内容は「安くて電子ピアノにふさわしいユニットを造れ」なので世界のトップエンドスピーカーに挑むものでは無い事は行間に示されている。2年掛けて出来上がった理想のユニットというのは、理想的低コストユニットという意味合いが強いのではなかろうか。担当者氏も「hi-fi用のユニットとしても可能性をもっているかも?」と期待してはいるが、「このユニットの中高域の良さを理解」出来る層としてスピーカービルダー諸氏にお呼びが掛かったと見る。「価値をさらに引き出す」と丁寧に記載されては居るが、箱造りの腕の見せ所である100Hz以下の重低音には端から期待しておらず、このユニットの持ち味である中高域をそのまま出してくれる程度の期待をしているのだと思われる。

YAMAHAは変わったメーカーで、他社が重低音競争に明け暮れたCD黎明期から素っ気ない低音でお茶を濁して来た社風が有る。

ソアボ2を聴いて確信したが、重低音を出すのは簡単だが多くの場合中高域を汚すので潔く重低音は二の次にしているという印象があり、今回のユニットも社風であるところの「綺麗な中高域」をゆかいな仲間たちに褒め称えて貰おうというイベントではなかろうか。しかし、「可能性探索へともに取り組んで」の一文に重きを置く。YAMAHAも暗中模索の最中なのだろう。