YAMAHAと創るスピーカー自作と試聴イベント | リュケイオン2

YAMAHAと創るスピーカー自作と試聴イベント

まさかと驚くような情報が上がっていた。YAMAHAが自社ユニットを用いた自作スピーカー競演を開催するとの内容。

■応募資格
以下を満たす方がご応募いただけます。
・ヤマハ製フルレンジスピーカーユニットを使って、スピーカーを自作できる方
・2024年10月中旬に開催予定の試聴イベントに自作スピーカーを出品(事前送付) できる方


■製作条件
応募時に「作りたいスピーカーシステム」についての構想を記入いただきます。製作時には以下の点にご留意ください。
・ヤマハ製フルレンジスピーカーユニット(9cm)を左右チャンネルに1本ずつ使用すること
・スピーカーユニットは提供品のみを使用し、他のユニットと組み合わせないこと
・ウーファーやツイーターなど、他のユニットの追加はしないこと


■応募期間
2024年3月8日(金)9:00~5月24日(金)23:59


■選出と結果発表
・スピーカーを自作していただく方について
応募時に記入いただいた内容を参考に選出します。結果はご応募いただいた皆さまに、2024年6月中旬にメールでご連絡します。


・試聴イベントに出品するスピーカーについて
スピーカーの情報(写真、コンセプト、構成、特徴など)を参考に選出します。結果は選出された作品を製作された方のみに、2024年9月中旬にメールでご連絡します。
しかし、肝心のユニット仕様を見るとショボい性能でバスレフ共鳴管の本領発揮出来る物ではない。
先ず、最低強振周波数が高過ぎて小型スピーカーで充分な企画である。バスレフ共鳴管の真骨頂は小型スピーカーでは御法度の40Hz付近を再生してボーカル帯域に影響しない事なので、フラットと言えるのは精々80Hz程度のお気楽スピーカーでは他者と差が出ないだろう。というか負ける可能性も高い。
余談だが、昭和の終わり頃隆盛を極めた598スピーカーの再生範囲がその程度だったと思う。なので100Hz付近からだら下がりになるD-55でも、200Hz付近が持ち上がっている特性を捉え「低音が厚い」と評価されたりもした。とは言え、低域下限への伸びが圧倒的に違うので、当時の598スピーカーはあくまでも大きなブックシェルフタイプという位置付けは納得できた。
さてYAMAHAの9㎝フルレンジユニット。Q0も0.66と高く、鋭い立ち上がりの繊細なボーカルは期待出来ないであろう。
現用サブスピーカーやセカンドでも、5~8㎝のフェライトマグネットユニットでは退屈な音色で、共鳴管ならではの精妙なボーカルは聴く事が出来ない。超小口径フルレンジを中高域に充てているとは言えども、ネオジウムマグネットユニットが有ればこそのバスレフ共鳴管なのだ。
現有サブスピーカーは全高77㎝ほどの小型サイズであり、机上でも最大限の効果を発揮出来そうであるが、この小ささでも再生帯域下限は40Hzを誇るフロア型であり、軽低音をカバーする音域と背圧を受けない女性ボーカルを両立させる世界のトップエンドスピーカーと比較出来る音色を目指している意欲作で有り、デスクトップエンドスピーカーなどと称している。

さて、応募して最終試聴まで残ったとしてもバスレフ共鳴管の醍醐味を示せないであろう条件下ではあるが、上記F特グラフを見て設計するならどのような筐体になるだろうか。

先ず、バスレフチューニングは前代未聞の120Hzで振動板面積比100%~120%のダクト部を仕込む。共鳴管としての全長は1.5mほどを目指して最低域を60Hzで、軸上30㎝測定時に中高域マイナス10dBなら上出来ではなかろうか。これは上記F特グラフで言うとプラス5dBほどであり、現用サブスピーカーの6㎝フルレンジユニットだけの実測値と同じ程度の低域上昇なので、無謀な目標では無いと思う。
ただ、くどいようだが今回のYAMAHAの9㎝フルレンジユニットが、ボーカルの美しいユニットでなければ他者自作方式との差異が出ないのでどんぐりの背比べになり、素人木工のこちらは圧倒的に不利であろう。万一、この競作ユニットが素晴らしい女性ボーカルを聴かせてくれる優秀な逸品であれば、逆に素人細工の筐体は工作素人でも再現性が高く作り易く敷居が低いという利点になるのだが、恐らくそのような目標で造られたユニットではないらしく美声は望むべくも無し。
ショボい仕様ユニットではトップを目指す事も叶わず、べニア細工の素人工作では一次審査で落とされる可能性も高いが、それでも競作に出品する意義は有ると思う。
先ず、重低音についてはこの仕様ユニットでは大差は出ないかも知れないが、それでもバスレフ共鳴管の重低音効率は圧倒的であろう。少し考えてみて負けるとしたらスワンタイプで有るが、あれは団子状の低音がモコモコ出てくる印象なので、量感では負けたとしてもウッドベース基音を細かく描き分けるハイエンドタイプに重低音では無いので除外する。更に共鳴管ならではの簡単な工作で重低音タップリとなれば、もはやバックロードホーンの必要性は無くなるであろう。
そして共鳴管ならではの特質が床を選ばないという点であり、畳の上でも絨毯でも殆ど影響を受けず、硬くて丈夫な床を必要としない。
これはちょっと凄い事なのだが誰も気付かないかも知れず、やはりハイエンドユニットに依る競作でなければ不甲斐ない結果に陥りそう。

 

3/13追記

なんとカノン5Dさんの作例がツイートされていた。

 

 

コメントを読むと120Hzでマイナス10dBと有るので、何だろう?と公式F特の横線スパンを良く見ると20dBピッチだった。

というわけで、大幅に目標周波数を修正したので悪しからずどうぞ。

何かに似ていると思ったら、現用6㎝フルレンジユニットと似たような高低バランス。

↓こちらは6㎝フルレンジユニットの軸上30㎝実測F特。2kHzを基準にすると80Hzがマイナス10dBくらいだろうか。

YAMAHAの9㎝フルレンジは↑こちらの6㎝フルレンジに近いF特なのだろうか。

 

3/22 追記

競作の意図は不明かと思っていたが、製品化のヒントにすることも有るのだとか。

知的財産権の取り扱い
・本イベントの結果に基づき、ヤマハが独自に発明・考案・創作等を行ったとしても、また、これらの結果に基づき、それらをヤマハが独自に
商品化したり、サービスとして第三者に提供したりする等したとしても、お客さまは何ら主張や異議を唱えることがないことをご確認ください。
・お客さまが創作した著作物または実演については、当然お客さまが原著作者または実演家となる権利物です。当該権利物が本イベントの結果に含まれ、ヤマハに対しその
使用を許諾いただきますようお願いします。
・お客さまは、製作されたスピーカーのデザイン、仕様、動作の仕組みや考え方を第三者(ヤマハを含みます)が模擬(模倣)することまたは参考にすることに対して、異議を唱えないこととします。

お問い合わせ
ヤマハミュージックジャパン会員事務局
※お問い合わせ種別は「イベント・キャンペーンについて」を選択いただき、お問い合わせタイトルに『スピーカー自作&試聴イベント』とご記入ください。
※メールにて順次回答いたします。土日・祝日を挟んだ場合およびご質問の内容によっては、回答までに日数がかかる場合がございます。あらかじめご了承ください。

まるで、寄せられた応募作を基に新たな商品開発でもするかのような文言だが、もし製品化のアイディアを募集しているのであればこのような書き方はしないのではないか。これは、京都アニメーション事件を受けて禍根を残さないようにとの配慮だと思う。

それにしても先は長い。一次審査を通ったかどうかの連絡すら三か月後。その後、製作猶予期間が約二カ月で、更に二週間後に二次審査の結果連絡が来るとのタイムスケジュール。

6月中旬とされている参加者へのご案内は随時行うべきではないか。早々に申し込んだ人たちは二カ月半も宙ぶらりんのまま着手出来ずに居ることになる。2万円の代金負担と、二次審査に漏れる可能性を承知の上でならどんどん先に進めさせて欲しい。

製作期間の2カ月は充分かというと、板材カットサービスを受けてくれるところは少なく、1カ月待ちはざらなので正味2週間ほどで組み立てと調整を終える事になりかなりタイト。

とは言え、ユニットが到着しなければ実際にどのような音が出て来るか分からず、調整も出来ない。なので対応の早い応募作には順次前倒しでどんどん結果を出すというルールには出来ないのだろうか。コンテストなら期間の公平性は厳密に成されるべきだが、今回の企画は広く公募する程度の意味合いなので逐次一次審査、二次審査の合否を伝える方向で良いのではないか。

メーカー側のリスクを考えてみると、非売品ユニットが流出するというのが有るかな?応募するフリをして、非売品ユニットを手に入れヤフオク等で高く売りつける輩は居るだろう。しかしそれは、長期間を設けても同様のはずで、二次審査から漏れた人たちが二万円で手に入れた非売品ユニットを放出するのは想定内であろう。

審査期間を緩く広くした場合に、同じ人が何作品も応募して来たらどうか?一次審査に落ちるような人が何度も応募してくるのは問題無いだろうが、二次審査まで通るような人が何作品も応募して来たら一人で何点も応募出来る事になる。実際に、スピーカービルダーというのはピンキリで、十人の十作品よりも達人の十作品の方が遥かに価値が有る場合も多い。

それを避けたいなら一人一作品の縛りを設ければ良いだけだが、そのような規約は無い。もしかすると、応募数が極端に少ないと見込んでいるのではないか。3カ月の応募期間を設けても二次審査に通りそうな応募作が10作品にも届かないと見越しているのかも。

■製作条件
応募時に「作りたいスピーカーシステム」についての構想を記入いただきます。製作時には以下の点にご留意ください。
・ヤマハ製フルレンジスピーカーユニット(9cm)を左右チャンネルに1本ずつ使用すること
・スピーカーユニットは提供品のみを使用し、他のユニットと組み合わせないこと
・ウーファーやツイーターなど、他のユニットの追加はしないこと

改めて製作条件を見直してみても選出基準は設けていないようだ。つまり何の変哲もないバスレフ箱の応募作だらけになる可能性も有る。筐体構造に工夫の無い応募作は落とされるのか、それとも木工技術を求めているのか?

ルックス重視で木工仕上げを競わせる主旨と想定するとシックリくるが、そうなると一次審査の意味が薄い。筐体構造を競わせるつもりなら、せいぜい100Hz程度のユニットでは本来の意味で役不足。筐体構造を競わせる目的ならせめて100Hz以下で差が出るユニットが必要だし、出来れば50Hz前後にf0が有るユニットがふさわしい。

一般公募イベント前に、有名どころスピーカービルダー5名と小澤氏による発表会を行ったとの事で、MJ誌4月号に僅かながら記事が載ってた。

↑表紙にはYAMAHA製ユニットの表記は無く、重きを置いていない事が判る。

少し判り難いが、一般販売されていないから本誌に作例を出せないが競作イベントはOKという事?

踏み込んで読み取ると、一般販売されていないユニットでは、本誌へ作例を発表する意味が薄いので、競作イベントとして楽しんで、という文意かも。

非常に見難いが、上から①小澤氏②カノン5D氏③新井氏となっており、グラフ横軸は10-20-50-100Hzの順で、小澤氏の作例だと70Hz付近までフラットに仕上げて有り素晴らしい。自分が考案中の作品で、すべてのアイディアが奏効してもここまで良い特性になるか怪しいので、何人もこのレベルが居るのは嬉しい。

こちらは一番上④がステレオ誌で常連の塩ビ管スピーカーの人で、最低域はなんと40Hzまで伸びている。高域比でマイナス10dBというのは、長岡式BHと同じような高低バランスなのだろうか。

中段は⑤てつさんと記載されているが、60Hz付近までフラットであり中高域比で100Hzがマイナス5dBほどと音圧が明らかに高く、頭一つ抜けている感じだろうか。

下段は⑥バックロードバスレフの御仁で、正確なF特は初めて見た。中高域付近に暴れは有るものの50Hzまで伸びている低域はさすがである。インピーダンス変化が塩ビ管の人と似ており、バスレフ箱との違いが顕著。

もう少しインピーダンス特性は凹凸レンジを広く見やすくして欲しい所。

さて感想はというと、これらの作例と肩を並べるのは難しい、というかほぼ無理だろうと思う。となると、改めて自分の作品を応募する事で新ユニット開発に弾みがつく可能性も低く、今回は様子見で見送って来年以降により強力なユニットで公募されたらチャレンジするのが無難かも。

自分のバスレフ共鳴管をメーカー無響音室にて精密測定して頂くのが楽しみだったが、縦軸が狭すぎて期待値が下がる。

特性としては④と⑥に近くなると思うが、スピーカー自作なら設定fd値や音道長などのデータとインピーダンス特性を比較して読みたい。

雑誌記事を興味深く読み込んでみたが、自作スピーカーに熱心なのは小澤氏の方で、メーカーとしてはそれほど高性能筐体には期待していないニュアンスだろうか。