本「金色の野辺に唄う」

金色の野辺に唄う
出版社:小学館
著者:あさのあつこ
夜明けより少したった、しかし陽の出る前の、朝の群青の時間や空気の様な作品。
その蒼は死出の世界。その単色の時間を、燃えるような柿の実の赤や、竜胆の紫、毬の柄の振り袖など、生きる者たちの息吹が鮮やかに彩る。
死んでいく90歳の女性と、彼女にかかわる人間達の6篇のショートストーリー集。「死」の周辺を描いた意欲作だ。老女の周辺の物語は、登場人物とそれぞれが持つ「業」「運命」などがきめ細かく静かに描かれ心地良い。そして彼らが老女の死と向き合いながら、ゆれる。群青の空気の中、深い森をかすかに通り過ぎる風のように、その枝葉を重く、かすかにうねらせる。
しかし老女の死に対面した表現には、違和感と不信感を覚えた。「死」を哀しく美しく現している。その表現の明確さはどこから来るのだろう。「死」はそんなに穏やかなのか、そんなに哀しいのか。「業」を描いてそれと感じさせない抑制された心地良い文章が、「死」を描いたとき生々しく揺らぐ。…気がする。でもそれは「死」を前にして今だ幼いボクの心持ちのせいかもしれない。
読む方々の年齢によっても感じ方は様々であろう。一読をお奨めします。












