♪12年♪ | 波岡一喜オフィシャルブログ「天下統一ゆえノ刻印」Powered by Ameba

♪12年♪

さかのぼること今から12年前。
俺は19歳の予備校生。
大阪から出てきて、横浜の予備校の寮で生活していた。
毎日寝ても覚めても勉強勉強。
遊ぶ時間も、遊ぶお金も全くなかった。
良い美容院で髪を切るお金なんか当然なかった。

ある日、同じ寮の仲良い連れが言った。
「地元の先輩の友達が青山の美容院で美容師をやっててカットモデルを探してるらしいぞ。」
と。
俺はすぐに紹介してもらった。

後日、初めて行く青山。
しかも早朝7時。
閑散とした中にある独特の都会的な空気を感じ、19歳のロン毛の俺はドキドキした。
オープン前の店内。
一人の女の人が待っていた。
俺は言った。
「はじめまして。波岡です。よろしくお願いします。」
と。
すると、女の人は、
「こちらこそ、はじめまして。今田です。よろしくお願いします。」
と、ニャロメのような笑顔で言った。
それから髪を切ってもらいながら、俺がどういう人間か、なんで東京に出てきたのか、どうなりたいのか、などなど色んな話をした。
髪を切ってセットしてもらい、俺が言った。
「今日はホンマにありがとうございました!」
と。
すると、
「またいつでも来てい~よ。こっちこそありがとう。」
と、またニャロメのような笑顔で言った。
これが19歳の俺と23歳の今田さんとの出会いだった。

それから予備校に通ってた1年間、ずっと2ヶ月に1回くらいのペースで髪を切ってもらっていた。
徐々に俺も心を開き、俳優を目指してることも言った。
今田さんもとても応援してくれた。
俺はよく言っていた。
「いつか俺も俳優で飯が食えるようになったら今田さんにちゃんとお金払って切ってもらいますね!」
と。
すると今田さんは、
「楽しみにしてるね~!」
と、またニャロメのような笑顔で言った。

大学の4年間。
ずっと変わらず今田さんに髪を切ってもらっていた。
ただ、無料で切ってもらってる申し訳なさから、行く頻度はガクンと減っていた。

その後、俺は大学を無事4年で卒業し、バイトをしながら役者を目指していた。
そんなある日、今田さんと昼飯を食うことになり、青山のカフェで飯を食った。
今田さんが言った。
「私、今の美容院辞めて、独立することにしたから。」
と。
軽々と、またニャロメのような笑顔で。

簡単なことではなかったかもしれないが、今田さんの人柄にお客さんはみんな付いてきた。
同じ青山に看板も出さず外からは全く見えない個室のような美容院を作った。
店員は今田さん一人。
客は知り合いか紹介のみ。
それでもなかなか予約が取れないほど大人気になった。
俺はそれからもタダで髪を切ってもらっていた。

それから、2年が経ち、俺は25歳。
徐々に映像の仕事をやり始めていた。
そんなある日、髪を切り終わった後、俺は言った。
「今田さん。もうだいぶ一人前になったから、今日からちゃんとお金取ってな。今までホンマにありがとうございました。」
と。
すると今田さんは、
「本当にもらっていいの!じゃあ、毎度ありがとうございます!」
と、いつもと何の変わりもないニャロメのような笑顔で言った。
まだまだえらそうなことは言われへんかもやけど、俺は今田さんにちょっと恩返しできた気がした。

それから今までずっと、俺は今田さんに髪を切ってもらってきた。
髪質、頭の形、髪のはえ方、似合う髪型、全てにおいて、今田さんの方が俺より全然わかっている。
役に応じて変える髪型も全部相談して決めた。
時には今田さんに衣装合わせに来てもらったり、現場のメイクを今田さんの店に連れて行って決めたりもした。
急ぎの時は、真夜中に切ってもらったりもした。
俺のわがままにいつも付き合ってもらった。





先日、いつも通り髪を切りに店に言った。
ちょっと前に書いた髪を切ったblogの時だ。
いつも通り、俺の仕事の話やプライベートな話をした。
突然今田さんが言った。
「私、10月に結婚したんだ!」
え~~~!
そう言えば、今田さんと男女の浮いた話をしたことがなかった。
「めちゃめちゃめでたいやん!おめでと~!いや~!もっと早くに言ってくれたら良かったのに~!」
と、俺は心から喜んだ。
俺は言った。
「仕事ど~すんのん?」
と。
続けるよって言うと思ってた俺の予想は大きくはずれた。
「実は前々から働き過ぎで腰を痛めてて、ついに今年に入ってドクターストップがかかって。だから店を閉めて、旦那が住んでる愛知県に行くことになったの。」
と、寂しそうなニャロメ顔で今田さんは言った。
俺は、結婚おめでと~って気持ちと、腰大丈夫!?早く治したほ~がえ~でって気持ちと、店閉めるって・・・美容師辞めるって・・・って気持ちと、旦那と一緒に住んで専業主婦って大変やろうけど頑張ってって気持ちと、ごちゃごちゃになって頭が混乱した。
でも今田さんに全部伝えて思ったことは、幸せな家庭を作ってちょってこと。




31歳の俺と、35歳の今田さん。

初めて逢ってから12年。

お互いちょっとは成長したんかな。

出逢いがあり、別れがあり。

別れはまた、出逢いのスタートでもある。

今言えること。

それは、













今田さん。
















今日まで12年間、
ホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマに、













ありがとうございました~!!!!!!!!!!!!













大好きな今田さんへ。



波岡一喜より。













P.S.
もしど~しても今田さんに切ってもらいたくなったら、新幹線乗って愛知県まで髪切りに行きますね(^・^)Chu♪