ポーランド映画「Girls To Buy」
邦題は「札束と寝る女神たち」を観た。
刺激的なポスターや邦題とは裏腹に、
内容は、ひとりのセックスワーカーを通し、
ポーランドの抱える売春問題を見つめた
メッセージ性のある映画だった。
監督はマリア・サドフスカ
豪華絢爛・酒池肉林な
高級娼婦の世界を
垣間見せながらも、
監督の目的は
売春の是非を世に問う
こと。
売春をテーマとしているだけに、
当然、セックスシーンはあるが、
女性監督作品らしく、女性視線で描いてあり
生々しさはない。
エロが苦手な人も安心して見られるだろう。
その分、エロ期待から見たら、
肩透かしを喰らうかもしれない。
現代ポーランドを生きる、
ひとりの女性の
波乱に満ちた半生を描いた
人間ドラマとして見ても、
高級娼婦や売春組織へ好奇心から見ても、
概ね満足できる映画だと思う。
主人公親娘と仕事仲間親娘の、
2組の母娘の対比も興味深い。
映画の冒頭、テロップが表示される。
『本作は警察や検察の捜査資料や裁判資料、そして当事者の声を元に制作しました』
『彼女らを探し出すことはおやめください』
このテロップで、
視聴者はポーランドで類似の事件が
実際にあったことを知る。
次のシーンでは、
ゴージャスな美女の一団が登場し、
颯爽と歩いていく。
そこにナレーション(ピンク字)が被り、
視聴者は映画の世界へと導かれる。
聞いていい?正直に答えて
あんたは幾らもらえば男と寝る?
1000ドル?(15万円)
1万ドル?(150万円)
あんたの値段は?
今の年収以上に稼げるとしたら?
5年分なら?
正直になって
学費が払えるかもよ
お母さんの手術代が払えるかも
娼婦ってことが
誰にもバレないなら、やる?
今の年収![]()
年収の5倍![]()
なかなか上手い、問いかけだと思うw
(⌒-⌒; )
こうして視聴者の気持ちを掴んだところで
メイン・ストーリーがはじまる。
ストーリーは・・・
ある程度、想像がつくのでは?
ポジティブで野心的な娘が
高級娼婦にスカウトされ
その世界で成り上がり
お金持ちなるけれど
やがて運命の手痛いしっぺ返しをくらう・・・
そういう話だ。
クライアントは王族。
娼婦に勧誘されるのはミスコン入賞者や
カバー・ガール。
取材を重ねたというだけあって
高級売春の実態が具体的に示され
退屈させないが、
別世界の話だけに、傍観者に終始した。
唯一、感情を揺さぶられたのは
後半、
刑務所での母娘の面会の場面と、
帰郷するバス車内での改悛シーン。
主人公と母親の
和解と、寂しい永別が、心に沁みた。
娯楽性も社会性もそなえた
見応えのある映画だと思う。