30年来の友の乳がんが再発しました。前の治療から9年経っていたそうです。今回は再建も視野に入れた手術になる、と言っていました。


乳がんのことは知っているようで知らない。彼女の話し相手にもなれない。乳がんについて知ることより、友として私がどうあるべきか。そんなことをぼんやりと考えていた時に、この本のことを知りました。


 テヘラン生まれ、大阪育ちの直木賞作家、西加奈子さんがカナダのバンクーバーで乳がんに罹った、その時のご自身のお話です。そこ抜けに明るいドクターや看護師に囲まれ、元気づけられながら西さんが少しずつご自分を取り戻していく姿が描かれていました。


 がんには顔がある、と聞いたことがあります。西さんの乳がんはホルモン治療が聞きにくいタイプのもので、抗がん剤治療でがんを小さくして切除するという治療。その最中の食事や子供の世話は友人たちが手分けして当たる、バンクーバーでは住民同士が助け合って暮らすのは当たり前のようです。病人は自分のことで手一杯。お節介が天の助けとなることもあったでしょう。


 印象深かったのは「コロナもがんも一生懸命生き抜こうと頑張っている。恨むとか共存するとかそんな気持ちはない」というくだり。西さんのようにがんと向き合ったら、もしかして苦しい治療も文字を奏でる音色にされるのかもしれないな。


 読み終えても、結局結論は出ない。してあげられることなんて何もない。だけど読んで良かった。


 手術が万事滞りなく、無事に終わることだけを願っているよ。



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