二十四節季に言う「大暑」である。大暑の句で先ず有名なのは芥川龍之介の「兎も片耳垂るる大暑かな」であろう。逆に芥川龍之介を詠んだ句に「芥川龍之介佛大暑かな」がある。名手久保田万太郎には珍しい破調の句である。
芥川には「大暑」ではないが、暑さを詠んだ句もある。「蝶の舌ゼンマイに似る暑さかな」。蝶の舌など見たことも無いが、この句を見れば蝶の舌がくるくると延びて蜜を吸う様子が見えてくる。いや、この場合蝶が吸うのは甘い蜜ではなく、ただの水だろうか。芥川の奇才もしくは鬼才がありありと見えるような句であろう。
梅雨が長引いてどうなることかと気を揉んでいた天候もようやく、いつもの夏に戻ったようだ。
河童忌や皿も干上がるきのふけふ 波舟