著者:村田沙耶香(むらた・さやか)

    1979年千葉県生まれ。玉川大学文学部卒業。2003年「授乳」が第46回群像

    新人文学賞優秀作となりデビュー。09年『ギンイロノウタ』で第31回野間文

    芸新人賞受賞。13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀

    夫賞受賞。当著で第155回芥川賞受賞。

 

 Amazon解説

 ・「普通」とは何か?
  現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作

 

  36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。
  日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、
  「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。

  「いらっしゃいませー!!」
  お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。

  ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、
  そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。

  累計160万部突破&39カ国語に翻訳(2023年7月現在)。
  米国〈ニューヨーカー〉誌のベストブック2018に選ばれるなど、
  世界各国で読まれている話題作。

 

 Amazonレビュー

 ・ここ数年、小説を読んでいなかったが久しぶりに手に取ったのが「コンビニ人間」だった。芥川賞

  受賞作品の発表の時に題名にインパクトがある強く記憶に残っていたから、いつか読んでみたいと

  思っていたがようやく8年越しにその想いが達成された。
  主人公の恵子は正常な人間としての反応ができない。公園で死んだ小鳥を見つけると母に「これ、

  食べよう」と言って、母をぎょっとさせてしまう。
  そんな中、ようやく出会ったのがコンビニ店員だった。恵子はコンビニ店員という生き物に着替え

  ることで、世界の正常な部品になることができた。
  オレはこれに憧れる。主人公の恵子のように人をぎょっとさせるようなことはないが、正常な部品

  として生きることができない。オレは彼女が世界の正常な部品として自分をプログラミングしてい

  く姿を見て、オレも自分をプログラミングしていく勇気をもらえた。
  彼女はオレの憧れだ。

 

 ・「コンビニ人間」は、コンビニで働く女性の物語。
  彼女はコンビニのルールやマニュアルに従って生きることに安心感を覚えており、自分の人生に満

  足している。
  しかし、周囲の人々は彼女の生き方を理解できず、彼女に変化を求める。
  特に、新しく入った男性との関係は、彼女のコンビニ人間としてのアイデンティティに影響を与え

  る。この小説は、社会の常識や価値観に疑問を投げかける作品。
  主人公は、自分の居場所を見つけたと思っているのに、他人からは異端者と見られている。
  彼女は自分の幸せを追求する権利がないのかと考えさせられる。
  また、新しく入った男性は、主人公と同じように社会に適合できない人物ですが、彼は彼女とは違

  って、コンビニに対して否定的な態度をとる。
  彼は恵子に何を求めているのか。
  読んでると、この男ただのヒモ野郎じゃねーか!と怒りが湧く。
  この小説は、読者にとっても共感できる部分が多いと思う。
  私たちは、自分の生き方に自信を持っているときもあれば、他人の目を気にしてしまうときもあ

  る。コンビニという日常的な場所を舞台に、人間の本質や幸せについて考えさせられる作品。

 

 以下、刺さるワードを記しておく

 ・私の喋り方も、誰かに伝染しているのかもしれない。こうして伝染し合いながら、私たちは人間で

  あることを保ち続けているのだと思う。

 ・同じことで怒ると、店員の皆がうれしそうな顔をすると気が付いたのは、アルバイトを始めてすぐ

  のことだった。

 ・私は今、上手に「人間」が出来ているんだ、と安堵する。

 ・学生時代は「黙る」ことに専念していたのでほとんど友達はいなかった

 ・これから、私たちは「店員」という、コンビニのための存在になるのだ。

 ・皆、変なものには土足で踏み入って、その原因を解明する権利があると思っている。私にはそれが

  迷惑だったし、傲慢で鬱陶しかった。あんまり邪魔だと思うと、小学校のときのように、相手をス

  コップで殴って止めてしまいたくなるときがある。

 ・コンビニで働いていると、そこで働いているということを見下されることが、よくある。

 ・「威張り散らしているけど、こんな小さな店の雇われ店長って、それ、負け組ですよね。底辺がい

  ばってんじゃねえよ、糞野郎・・」

 ・「この店ってほんと底辺のやつらばっかですよね、コンビニなんてどこでもそうですけど、旦那の

  収入だけじゃやっていかない主婦に、大した将来設計もないフリーター、大学生も、家庭教師みた

  いな割のいいバイトができない底辺大学生ばっかりだし、あとは出稼ぎの外人、ほんと、底辺ばっ

  かりだ」

 ・コンビニは強制的に正常化される場所だから、あなたなんて、すぐに修復されてしまいますよ。私

  はそれを口には出さず、のらりくらりと着替えている白羽さんのことを見つめていた。

 ・あ、私、異物になっている。・・・正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。

 ・「コンビニに居続けるには『店員』になるしかないですよね。それは簡単なことです、制服着てマ

  ニュアル通りに振る舞うこと。

 ・皆が不思議がる部分を、自分の人生から消去していく。それが治るということなのかもしれない。

 ・体調管理をして健康な体をお店に持って行くことも時給の内だと、2人目の店長に教わった

 ・赤ん坊を携えてない妹を久しぶりに見たので、何だか忘れ物をしているように見えた。

 ・妹は、前と少し喋り方が変わった気がする。妹の周りには、今、どんな人間がいるのだろう。きっ

  とその人によく似た喋り方なのだろう。

 ・私は、皆の脳が想像する普通の人間の形になっていく。

 ・「・・私と白羽さんも、交尾をどんどんして、人類を繁栄させるのに協力したほうがいいと思いま

  すか?」・・どうやら私と白羽さんは、交尾をしないほうが人類にとって合理的らしい。