著者:山崎 元(やまざき・はじめ)
経済評論家。専門は資産運用。1958年北海道生まれ。東京大学経済学部卒業
後、三菱商事に入社。野村投信、住友投信、メリルリンチ証券、楽天証券な
ど12回の転職経験を持つ。2024年1月1日逝去。
まえがき
・これから書く癌の話は、特定の治療方法を勧めたり、癌に関わる知識についてお伝えしたりしよう
とするものではない。主にお伝えしたいことは、癌という病気を自分の条件とした時に、私が何を
考え、どう意思決定したのかということになる。
第1章 癌患者と投資初心者は似ている
癌健診に消極的だった理由
・食道癌だとの診断を聞いて、大変厄介なことになったとは思ったのだが、大きな精神的ショックは
なかった。職業上、意思決定では「サンクコスト」(既に生じてしまって後から取り返しのつかない
損失のこと:埋没費用)を無視して、今後に変えられることに意識を集中するような習慣があった
ので、「これから、どうするかに集中するしかない」という気持ちになっていた。告知されたその日
のうちに、仕事の仲間や家族に病状を報告して、療養生活が始まった。
損得勘定だけでも「検査受けるべし」
・一年に一度程度の内視鏡検査の不愉快は、癌が見つかる段階での「コストの差」を考えただけでも
正当化できるような気がする。仮に早期で発見しても既に見えない転移があって助からないような
「本物の癌」であったとしても、初期の治療とその後のしばらくの生活の差を考えると、「早く見つ
けた方が良かった」と言えるのではないかと思われる。
・癌になる前の元気な時には、「早期発見できたとしても、助かるか、助からないかは変わらないとす
ると、早期発見のために検査を受けるのは気が進まない」と「助かる・助からないのレベル」で観
念的に考えていた。しかし、現実に即して経済計算をしてみると、損得勘定だけでも「検査受ける
べし」が正解になった。
長年の飲酒習慣と食道がん
・私は、長年にわたってお酒を飲んできたし、お酒を楽しんできた。特にウィスキーは食道癌の発症
に対しては影響があったのではないかと思われる。少しだけ寄り道を許して貰うと、氷でウィスキ
ーを冷やして飲む「オン・ザ・ロック」という飲み方は、ウィスキーが濃い状態で飲むので通人の
飲み方であるかのように思う人が少なくない。しかし、冷やすことによってウィスキーの香りを殺
す飲み方なので、ウィスキー好きの客やバーテンダーが、高いウィスキーをロックで飲む客のこと
を密かに軽蔑していると知られたい。香りを正確に味わうためには、常温の水で割って飲むといい
情報を制限しないと、身が持たない
・たまたま癌が治ったという本人や周囲の体験談は、癌患者にとって魅力的だが、その体験には個別
性・特殊性が大いにあって、判断のためのデータとしては、統計風に言うとサンプルが小さ過ぎて
参考にならない。体験記の書籍、体験談を元にしたアドバイスなどは「危険な情報」だ。
利害関係のない、好意的な医療専門家を探す
・情報ソースとして、最初に勧められたのは、国立がん研究センターのホームページだった。各種の
癌について要領よく説明してあって、概要を把握するには具合がいい。癌が見つかった読者、癌が
心配な読者は、先ずここを尋ねるといいだろう。
・かつては、早く手術をして病巣を取って、その後に抗癌材を使って転移を防ぐような手順と考え方
だったらしいが、手術前の体力がある状態で抗癌剤を十分使って癌の縮小を期すると共に、将来の
転移の可能性を叩くというような考え方に変化したらしい。
治療方針の決定
・ガイドラインに書かれている治療は、学会で認められているようなサンプル数のデータを伴った治
療方法で、いわゆる標準治療の最新版だ。概ね健康保険を使って治療ができるということでもあ
る。今回の自分のケースでは、「標準的な治療でベストだと思えるものでいい」と割り切ることに
した。加えて、「私は癌になりました」と伝えると、多くの「親切な人」が群がってきて各種の情報
をもたらしてくれる。こうした状況を考えて、筆者は、少なくとも治療の方針が固まるまで自分の
癌について対外的に知らせないこととした。
第2章 がん保険はやっぱり要らなかった
人生をやり直すとしたらがん保険に入るか?
・癌に罹ったという話をすると、いつどうやって癌が分ったかという質問(なぜかこの質問が圧倒的
に多い)の次くらいに多いのは、がん保険はどうしていましたか、だった。結論から言うと、筆者
はがん保険に入っていなかった。しかし、それで何の問題もなかったし、がん保険に入らないとい
う意思決定は、筆者以外の広い範囲の人にとってこれからも正しい。
衝撃の負担額
・筆者は、2022年の8月24日に食道癌と診断が確定し、9月上旬から抗癌剤治療で2回入院し、その
後10月27日に手術を受けて13日後に退院した。この時点で、医療費として直接支払ったお金は約
235万円だった。ただし、この中の約160万円は、入院一日当たり4万円のシャワー付きの個室を選
んだ筆者の意図的な贅沢によるもので、治療のためにどうしても必要だった費用ではない。4人一部
屋の入院だと一泊約7千円なのだが、この辺を自分の現状にとってほどほどだと判断した。残る費用
約75万円は、高額療養費制度の上限を適用しながら大学病院が請求した金額を支払ったものだ。結
局、どうしても支払わなければならなかった医療費は約14万円に過ぎなかったのだ。
・手術後の医療費はどうなるか。1カ月当たり3万円を1年間負担することになると見込んでいる。
たいていの人にとって貯金の一部取り崩しで十分に支払える額だろう。少々余裕を見るとして自由に
なる預金が200万円が300万円くらいあれば、がん保険に入っていなければ癌の治療費が払えないと
いう事態は先ずないだろう。がん保険の保険料を毎月支払うよりも、預金なり積立投資なりで早く
何百万円かの備えを作ることを考えた方がいいと思う、老後の生活に備えた蓄えの形成も必要なの
だから、同時に行うといい。
意思決定は結果論ではなく「事前」がベース
・がん保険に加入するか否かの意思決定は、自分が将来癌にかかるかどうかが分からない「事前の」
時点で行うものだ。保険会社が商品設計の際の計算に失敗しない限り、がん保険の条件は保険会社
が十分利益を期待できる水準に設定されていて、加入者側にとって損であるに決まっている。保険
会社が儲かっているなら、加入者は損をしていると考えて間違いない。
「がん保険には入らない」という結論を何度でもだす
・仮に筆者が30代、40代の自分に戻って、将来癌にかかるかどうか分からない時点でがん保険の加入
について検討するなら、「がん保険には入らない」という結論を、自信をもって出すはずだ。なぜな
ら、がん保険に入る事が確立を考えると大幅に損である一方、万一癌に罹っても自分の手元のお金
で十分対処できるからだ。
・保険一般として、利用の判断基準は、「損か、得か?」ではなく、「損だけれども、必要か?」であ
るべきだ。保険の専門家ほど、これが当たり前だと思っているはずだ。平均的に損であろうけれど
も必要な保険というものはある。他方、がん保険は、それ自体が損であることと同時に、がん保険
がなくても治療費の支払いに心配はないので不要である。
・因みに、先進医療特約については態度を保留する。保険料と有効性の期待値のバランスを考慮して
加入を決める必要がある。先進医療を受けたとしても効果が現れるかの確証はないので、一般論と
して先進医療特約は不用だろう。
安心ではなく必要性で判断する
・「生命保険は不幸の宝くじである」としばしば言われる。がん保険を含む生命保険では、不幸なイベ
ントが降りかかった人が保険に加入していて得をするからだ。宝くじは、別名「無知への税金」と
も言われるボッタくり商品だ。「がん保険に入っていて助かった」という経験者の話を聞いて感動し
て、自分もがん保険に入ろうと思う人は、相当に判断力が弱い。
・保険加入のような冷静に判断すべき経済行為は、漠然とした安心のような「感情によって」ではな
く、保険の必要性を冷静に判断して行うべきだ。保険それ自体は、(1)滅多におこらないことだけ
れども、(2)起こった場合の損失が破滅的に大きい、リスク・イベントに対して、人が集団で対処
する巧妙で賢い仕組みだ。
・自動車事故を引き起こしてしまった場合の補償に備える自賠責保険や、延焼の責任を問われること
もある火災に備える火災保険などは、多くの人にとって(1)、(2)を満たしていて(必要条件)、
他に変わりうる手段を持たない(十分条件)点で、加入が正当化されるし、必要でもある保険だろ
う。庶民レベルで生命保険が必要なのは、貧乏で且ついざという時に頼ることのできる家族や親類
などを持たない夫婦に子供が生まれた時に、一家の稼ぎ手が加入する死亡保障の保険くらいだろ
う。もちろん、「保険は損!」なのだから、子供が成人するまでの期間限定で、掛け捨ての保険がい
い。
相談はしても人間からは買わない
・街角の保険ショップには行かない方がいいというのが私の持論である。乗り合い代理店は、やはり
彼らにとって手数料の高い、稼げる保険を売るモチベーションで働きがちだ。
・本章をまとめるとい、意識決定の問題としては、がん保険に入らない方が圧倒的に正しい。仮に、
不運にして自分が癌に罹ってしまった場合でも、費用は貯金で十分に賄えるのだから、「がん保険と
いう損な賭け」には参加しない方が得なのだ。
第3章 癌になって分かった、どうでもいいことと大切なこと
「下級の落ち武者」のような髪
・抗癌剤の投与で髪の毛が抜ける話をご存じの読者は少なくないのではないか。筆者の場合は、大量
に脱毛して、そのままでは人前に出たくないような状態になった。この問題について考え、悩む時
間はそれなりに長かった。髪の毛の復帰にも時間が掛かった。
・入院のいわば中休みの期間は約2週間だったが、1週間を過ぎたくらいから顕著な脱毛が始まった
個人差があるが、投与し終えてから1週間くらい経つと髪の毛が抜け始めると聞いた。つまり、1
カ月後には髪の毛が抜けた状態になるということだ。
坊主か帽子かウィッグか
・「大き過ぎる問題」は手に負えないので、自分が考えることのできる問題として髪の毛がきになった
選択肢としては(1)坊主頭ないしはスキンヘッドにする、(2)ニット帽を被る、(3)ウィッ
グ(かつら)を使う、(4)そのまま様子を見る、の主に4通りがあった。筆者は(2)「ニット帽
を被ったおじさん」でいくことにした。
ウィッグは乗用車なみのコスト
・知人が利用しているウィッグの経済的条件は、人毛を使った高級なウィッグを使う契約料が年間約
50万円で、毎月のメンテナンス料が一月1万3千円かかるという。足し合わせると年間に66万円の
「サブスク」型の契約だ。
・当たり前のことなのだが、同じくらい毛のない人は世の中に普通にいることに気づいた。また、こ
の要素が最も大きいように思うが、毎日自分をみているうちに、自分の姿を「見慣れて」きた。そ
して、「坊主頭でも、不都合はないのではないか」という心境が芽生えてきた。坊主頭では恥ずかし
いのではないか、という思いは自意識過剰の産物に過ぎない。
こだわりは案外どうでもいい
・これだけのコスト差がありながら、他人から見ると「どうでもいい」自分のヘアスタイルに気をも
んでいたのはなぜなのだろうか。2回目の抗癌剤投与から5カ月くらい経ってから髪の毛の密度が戻
ってきた。ビジネスの状況も含む「他人からの評価」を考えてみよう。筆者の髪の毛が、年老いた
銀行員のような白髪半分の七三分けであろうと、アスリートでもないのに数ミリで揃えた坊主頭で
あろうと、筆者以外の人にとってはどちらでもいいことだろう。
・意識を変えて拘りを捨てることで、直接的にコストが節約できたり、時間が節約できたりするケー
スは少なくないはずだ。ヘアスタイルはその一例であり、他に、ファッションや各種の人付き合い
のイベントへの参加などがあるだろう。対象は様々であり得るのだが、「実はどうでもいいこと」を
見つけ出して捨てることの効果は実に大きい場合がある。
地位財競争から降りることが幸せへの道
・経済学に「地位財」と呼ばれる概念がある。自分の経済的な力・地位を対外的にアピールできる財
のことで、不動産、高級自動車、衣装、アクセサリーなどが典型的に該当する。人は何らかの地位
財について、意図的に競争から降りると、家計が楽になって生活の幸福度が改善することが多い。
これは、読者の役に立つ可能性がある一般論だと思うので覚えておいて欲しい。
「進行が早いので、半年は保証できません」
・癌患者側の実感として、病状の進行は均質なスピードで進むのではなく、休にスピードアップする
ことがあるという認識が必要であるように思う。主治医は「山崎さんの場合は進行が早いので、半
年は保証できません」と答えた。「待ち時間」の前提が急速に縮んだ瞬間だった。
癌患者にとって一番ありがたい人
・ある治療法をすすめられたとしても、それが有効かどうかを判断するには少なくとも時間のコスト
がかかるし、判断した後も精神的な負荷がかかる。しかし、アドバイスする側や見舞に来る側は、
そういう負担になかなか気づくことはできない。癌患者には、親切にしないで下さい・・これは半
ば本音である。
・一番ありがたく思えるのは、「聞きたいことがあったら、何でも聞いてね」、「こういうことは知って
いるけど、あんまりいろいろ言うと、情報過多になるね」とか、「暇つぶしの相手はいつでもするの
で、気が向いたら呼んで」といったことを言って、放っておいてくれる人である。
第4章 山埼式・終活のセオリー6箇条
人生の手仕舞いは難しい
・人生の手仕舞いは、なかなか難しい。その理由が、たぶん二つある。一つには自分で自分の人生の
手仕舞いを意識することが愉快ではないから、手仕舞いを考えたくないからだ。もう一つには、い
よいよ手仕舞いの時間が近づいた時には本人の判断力が必要十分ではない場合があるからだ。
・後者の場合に後で第三者が振り返ってみると、「相当に、損だった!」というケースが少なくない。
こうしたケースは、出来れば避けたいものだ。以下の「やり方」は、「これが正しい。こうするべき
だ」と主張するものではない。読者への参考として提示してみようとするものだ。山崎家で実際に
行っているあれこれを率直にご紹介する。
・要点をまとめると、①なるべく長く働く、②住居は縮小し、モノを減らしてシンプルに暮らす、③
便利な場所に暮らす、④介護が必要になったら、施設へ、⑤相続は、本人のアタマがしっかりして
いるうちに、明確に決める、⑥お墓・お寺と縁を切って、弔いはシンプルに、の六つだ。
「墓なし・坊主なし」のわが家の弔いルール
葬式の費用は37万円
・父の遺体は葬儀社で棺に納めた。家族は葬儀社の車に同乗し、先ず葬儀社へ、次に火葬場へ向か
う。火葬場では、焼香や読経その他が一切なく、立ち会った家族3人と、弟夫婦、甥の6人は、個人
との別れを惜しむだけでいい。家族は、葬儀社の車で遺体と共に自宅に戻った。
・お坊さんなしの弔い(「坊主フリー」と呼ぶか「坊主レス」と呼ぶか迷っている)をやってみて、
「何よりも、家族でゆっくり、心のこもった別れができたのが良かった」というのが故人と長年連れ
添った筆者の母であり、息子、娘も、100%同意するところだ。
お墓は撤去した
・お寺に墓があり、先祖の骨を持たれている以上、お寺と縁を切ることができず、いわば、骨と墓を
質に取られているような状態だった。2013年のある日、母がお墓を撤去して散骨を行うNPO法人が
あるとの記事を見つけて、興味を持った。彼女は、息子・娘に相談して、お墓を撤去して散骨を行
い、件(くだん)のお寺と縁を切る意向を固め、これに父も同意した。母の行動は早かった。「一般
社団法人・全国資産終活支援センター」と連絡を取り、更に寺と交渉して、お墓からお骨を取り出
し、お墓を撤去する作業を進めた。墓の撤去を終えて、お骨を父の一家にゆかりの深い小樽の海に
散骨して貰った。散骨の費用は一柱あたり当時3万数千円だったとのことで、11柱分の費用がかか
ったが、これで完全にお寺との縁が切れた。息子としては、母がしてくれた数々のことの中でも、
特に感謝したい快挙であった。
・母は実家の仏壇も撤去し、先祖数人の写真を箪笥の上に飾って、写真に向かって語りかけている。
彼女は、「狭い仏壇の中に閉じ込めておくよりも、はるかにご先祖様に対して親しみが湧くし、彼ら
のことを思い出す」と言っている。
第5章 お金より大事なものにどうやって気づくか
お金には「使い時」がある
・お金には「使い時」があり、ただただ貯めるよりも大事な「使い道」があるのだ。先日、ある読者
の勧めで『DIE WITH ZERO』を読んでみた。豊なエピソードが面白い本なので、読者にはぜひ本を
手に取ってもらいたいのだが、筆者にとって印象に残った主張は以下の四つだ。
(1)真に価値のあるお金の使い道は「経験」だ。良い経験は思い出として長らく効果を発揮する。
(2)人間の楽しむ能力は年齢に依存する。適切な時に惜しまずお金を使え。
(3)「仕事が面白い」は適切にお金を使わない理由にならない。
(4)寄付や相続も生きているうちに有効に行え。
・人生にあって「楽しむ能力」が最も大きい貴重な時期に十分なお金を使わないことは「もったいな
い」と言えるのではないかと付け加えることができる。
ゼロで死ね! 経済学者も絶賛した最上級に人生に響く生き方 | Jandyの本棚 ビジネス書 自己啓発書 要約
幸せになるための平凡な結論
・人間は、自分に関して他人による承認を得たことを実感して「幸せ」を感じる。いくらお金があっ
ても自由の範囲が広くても、友達も恋人もいないような人生では面白くないし、幸せを実感するこ
とが難しい。「お金」、「自由」の外に、「人間関係」の要素が幸福には影響するということだ。
自分に引き付けて考えてみるとしても、「人間関係の全てを失う」状態と、「金融資産の全てを失う」
状態とを想像上で比較すると、前者の方が圧倒的に嫌だ。
[最終章] 癌の記・裏日記
2023年12月25日(月)
・筆者は、先ず2023年の3月に再発が分った時に余命平均ベースで半年、悪いケースで3カ月の「持ち
時間」を覚悟した。2年、3カ月!、1カ月‼。原理は同じはずなのだが、1カ月ともなると、向こう
からも時間がこちらに迫ってくる感じがする。しかし、このような時こそ、原理に立ち返るべき
だ。最期の日のぎりぎりまえ幸福は追求できる。「本人」にとって、他人からの評価は「サンクコス
ト」に過ぎないからだ。
2023年12月26日(火)
・治療にあたって見落としがちだが、重要なことが2点ある。先ず、治療における患者の自己決定権
だ。思っているよりも患者の意志の効力は大きい。治療は自分で選べる、と認識しておくことは、
機嫌よく治療を進める上で有用なことのように思う。次に病院のコンプライアンスだ。訴訟を避け
るために張り巡らされた病院のコンプライアンスを反映して、医師は患者の自己決定件に従ってい
るのだ。
2023年12月28日(木)
・最後の最後に人生のコツをもう一つ付け加えるなら、「愛嬌」ではないか。愛嬌のある人は、色々な
面で得をする。経済評論家でもそうだし、生活でもそうだ。
あとがき
・最初に癌治療を始めた時は、治すぞという意識だったが、今は悪化しない時期をどう作るかという
意識に変わっている。癌によって「持ち時間」の使い方を意識すると、何をしたらいいかの見通し
が案外立てやすい。膵臓がんで亡くなったスティーブ・ジョブズが「もし今日が最後の日だとして
も、今からやろうとしていたことをするだろうか」と語った有名な講演がある。もちろん、「今日が
最後の日」だと思わなくてもいい。しかし、「今日が何日しか残されない時の一日だと思って、今日
を大切にしよう」と考えることはどんな人でも想像しやすい。
●● ピークパフォーマンス方程式 ●●
① 意思決定は「サンクコスト」を捨てるところから始まる
過去の損失に囚われず、今後変えられることだけに集中する姿勢は、病気でも投
資でも人生でも有効
② 検査は“助かるかどうか”ではなく“生活の質の差”で判断する
早期発見は治療負担や生活の苦痛を大きく減らす。損得勘定だけでも検査を受け
る価値は高い。
③ 情報は制限する方が心の健康を守る
体験談や民間療法はサンプルが小さく、判断を誤らせる。信頼できる専門家と公
的情報だけで十分。
④ 標準治療は最も合理的な選択肢である
学会が認めたデータに基づく治療は、費用・効果・安全性のバランスが最も良
い。迷ったら標準治療。
⑤ がん保険は「安心」ではなく「必要性」で判断する
滅多に起こらず、起きた時に破滅的損失となるリスクに備えるのが保険。がん治
療は高額療養費制度で多くが賄える。
⑥ こだわりの多くは“どうでもいいこと”である
髪型・服装・見栄など、他人はほとんど気にしていない。こだわりを捨てると、
時間とお金が大きく節約できる。
⑦ 地位財競争から降りると幸福度が上がる
家・車・ブランドなどの競争は終わりがない。見栄の消費をやめると、家計も心
も軽くなる。
⑧ 終活は「早く・シンプルに」が正解
住まいの縮小、介護の選択、相続の明確化、宗教儀礼の簡素化。判断力があるう
ちに決めることが家族の幸福につながる
⑨ お金は“使い時”に使わないと価値が下がる
経験は思い出として長く残る。楽しむ能力は年齢に依存する。貯めるだけでは人
生の価値は最大化しない。
⑩ 幸福は「お金+自由+人間関係」で決まる
資産があっても孤独なら幸せは感じにくい。人からの承認やつながりは、人生の
満足度を決める重要な要素。
