著者:N.ゴールドスタイン、S.マーティン、R.B.チャルディーニ
副題:仕事と人間関係が変わる21の心理学
はじめに
・本書は二十一の短い章からなり、効果的な説得手法を紹介しています。どの手法も、あなたの要請
に相手が同意し「イエス」と言う見込みを高めると実証済みです。本書の提供する知見は、何十年
もの間、説得の研究者たちは他者に影響を与えるうえで、普遍的な効果があると示された法則と手
法を研究してきました。本書は説得力が身につく見込みを高めると科学的に裏付けされたアイデア
と法則だけを紹介しています。もしあなたが本書の知見を思慮深く信頼を得られるやり方で用いる
なら、あなたが「イエス」という言葉を聞く回数はきっとずっと多くなっていくはずです。
1.与える
◎与えることが、欲しいものを手に入れる最初の一歩です。
・与えるという行為は人間らしさの中心をなし、説得という行為とも密接な関連をもっていますが、
相手がもし協力を必要とするときには、してもらったことのお返しに手を貸そうと思う気持ちが強
くなるためです。そう考えるもとになっているのが、「返報性の規範」、つまり、人間は自分が最初
に受け取った行為をその相手に同じ形で返そうとするもんであると説く社会的ルールです。あなた
もきっと、親御さんから「してもらいたいと思うことを他の人にしてあげなさい」と教わったこと
でしょう。
・大切なのは、大ぴらに惜しみなく与えれば、あとはひとりでに返報性の原理が働くということで
す。見落とさないで頂きたいのは、他の人に対して「先に」援助やプレゼントやリソースを提供す
ることこそが、返報性の原理を発動させるという点です。返報性のルールを用いて説得を行うとい
うことに関して、わかっていることが一つあります。それは、援助、協力、支援を最初に行い、し
かもそれを一見無条件の、個別化されたやり方で行う人は、たいていの場合、職場で、あるいは友
人グループや社会的ネットワークのなかで、最も説得力のある人とみなされるということです。
3.プレゼントを贈る
◎本当に大切なのは気持ちです。ですから、相手に何が欲しいか尋ねましょう。また、自分の欲しい
ものを求めましょう。
・もし友達や家族から、プレゼント選びで、気遣いができ、物惜しみしない人だと言われ(しかも、
その一方で密かに節約精神の健全な人であり)たいなら、アドバイスはこうです。プレゼントには
高価な商品の手頃な品ではなく、安価な商品カテゴリーの高級品を選んで購入しましょう。そうす
ることにはいくつものメリットがあります。プレゼントをもらった人はより感謝するでしょう。あ
なたの気前のよさへの評価も上がります。そして、おそらくは何よりも重要なこととして、「ケチ
だ」と言われる心配がなくなります。
4.協力する
◎「あなた VS. 私」ではなく「私たち」と考えれば、人は二つ以上の点であなたの味方になってく
れるでしょう。
・他の人と協力関係を作る効果的な手法は、あなたとの共同作業に相手を積極的に誘うことです。計
画の草案を作成し、それを同僚に渡して意見を求めることです。承諾を得ようとすることが、彼ら
の協力と、彼らの当事者意識(これが大切です)を得ることになるのです。人の傾向として、作り
出すのに自分が一役買ったものに対してだと、評価が非常に甘くなるからです。
・今度売り込みたいプロジェクトや提案があるときには、上司にこう言いましょう。「この件について
ご意見をいただけると本当にありがたいのですが」。上司から意見をもらうことで、両者の考えにま
とまりが生まれます。そして、これが説得成功の鍵となります。
6.譲歩する
◎最初の要請が、その後の要請の成否を大きく左右します。ですから、まずは厳しい要求を出し、そ
の後で譲歩をしましょう。
・研究でわかったのは、人はより負担の大きいお願いに「ノー」と言った直後だと、より小さな頼み
に対して「イエス」と言う見込みがずっと高くなりがちだということです。もし小さく始めれば、
最後も小さく、というか、さらに小さく終わりかねません。気をつけていただきたいのは、すぐに
という単語です。すぐに妥協案を出すというのは、たいてい、忘れられています。
・こう自問して下さい。「自分の理想的ゴールは何だろう。そして、どんなことなら譲歩できるだろ
う」。前もって求めるものと落としどころを用意し、それらを頭に入れておきましょう。どうせ断ら
れると思い込んで、最初の要請のラインを下げる誘惑に負けないようにしましょう。
8.認める
◎自分の考えの不都合な点に対して正直であることが、信頼度と説得力を高めます。
・いくつかの場面では、進んで自分の短所について正直になることが、立場を危うくするどころか、
有力な立場を得るのに役立つと、心理学の研究は示唆しています。優秀な人物が失敗を認めると、
その人物への好感度が向上する場合があるようです。ですが、あまり優秀でない人物は、同じ行為
がマイナスの効果をもたらします。心理学ではこれを「しくじり効果」と呼んでいます。この効果
は、もともと比較的有能な人物に限り、失敗を認めた後で魅力が増すと述べています。
・他の人に影響を与えたい場面でのアドバイスはこうなります。小さな失敗を進んで打ち明けましょ
う。そうすることはあなたが、間違うこともある人間、つまり、他の人とまったく同じだと示すの
に役立ちます。やり取りの早い時点で、ざっくばらんに小さな欠点を打ち明けると、それを聞いた
相手の、こちらに感じる信憑性、誠実さ、信用性、信頼性が高まります。
10.会話する
◎上手に影響力を行使することに関していえば、お喋りは有効です。
・会議やイベントの場面を考えてみましょう。あなたはそういう時に人付き合いを避けるタイプでし
ょうか。それとも、「積極的に張り切る」タイプの人でしょうか。つまり他の人とのつながりを求め
ていくタイプで、いつでも興味深い人と知り合いになる可能性に目を光らせるほうでしょうか。
・実はほとんどの人が、そうした場面では人付き合いを避けようとします。もしあなたがそちらのタ
イプなら、知っておいたほうがよいかもしれない話があります。もし、人脈を広げ、それによって、
将来のチャンスも広げたいと思っているのでしたら、やるべきことははっきりしています。雑談を
してください。
・私たちは、見知らぬ人と話を始めるチャンスが来ても、たいていの場合、関わりよりも孤独を選び
ます。そして、相手も同じことを考えているという点には、ほとんど思い至りません。多くの人
は、知らない人に話かけた場合、会話を拒否されるリスクがかなり高いと考えていますが、実験で
は参加者の百十八人のなかに、会話を拒絶された人は一人もいなかったのです。
・次にそうした機会があった場合には、スマホや本をしまって、隣の人と会話を始めてください。そ
れが知り合いを増やし、より広いコネクションを打ち立て、その後、あなたの影響力を広げる、即
効性のある方法のひとつなのです。会話が始まってしばらくのあいだ、相手のことを知り、相手に関
する興味深い事実を探そうと努めるなら、実のところ、拒絶される心配はほとんどありません。
15.理由をつける
◎要請にはいつも理由をつけましょう。
・相手に「イエス」と言ってもらう見込みを大きく上げるやり方の一つは、その要請を行う理由も述
べるということになりそうです。要請を行う理由を相手に示すことが重要なのは確かにせよ、理由
があることのほうが、さらにいっそう重要なようです。そして、理由の存在を示す時に使うと抜群
の効果を発揮する単語が存在します。そえが「(だ)から」です。
(例)・・しやすくなる気がするものです「から」。
健康にいいです「から」、
価値があります「から」。
始まるの「だから」。
・あなたの要請、提案、考えに「イエス」と言うように誰かを説得するときには、いつも必ず、しっ
かりとした論拠を添えるようにしてください。例え、その理由が、言うまでもないことのように思
える場合であってもです。どうやって納得させるかという問題の答えは非常に単純です。理由を示
し、最後に「(だ)から」と言ってみましょう。
16.コミットする
◎要請に対する本物のコミットメントを受け取るために、人の目があるところで、数値化できる目標
設定を行うように力説しましょう。
・あっさりと引き受けてもらえたことが、同じくらいあっさりと実行に移されることはまずありませ
ん。そうなる理由はかなり単純です。何かをすると約束するのと、それを実行するのとは、まった
く違う話だからです。多くの社会心理学的研究から、コミットメントを行うやり方と、そのコミッ
トメントの管理の仕方に小さな工夫をいくつか施せば、望ましい変化に向かう「粘り強さ」を大き
く改善できることが分っています。
・永続するコミットメントというのは、ほとんどの場合、人前で能動的に行われたものです。人は、
自分で能動的に記入したときのほうが、それに従って行動する見込みが高まるようです。ですから
「何かをするという約束」を「実際にそれを行うこと」にする上で、書き取りや詳細な説明を、自発
的に人前で行うようにさせれば、結果は大きく変わります。しかし、目標を達成しようとするとき
には、他にも考慮すべき要因があります。二つの重要な要因は「やりがい」と「到達可能性」です
・幅のある数値目標を設置したほうが、コミットメントが長続きするので、その目標に取り組む時間
が長くなり、その結果達成度も高くなりやすいのです。自分で目標を設置するときには、きっちり
とした数字一つでなく、満足できる結果の範囲を定めましょう。そうすれば、きっと全力を尽くせ
ます!
18.比べる
◎あるアイデアや要請を何と比べるかは、そのアイデアや要請自体と同じくらい重要です。
・世界的に有名なある大学で過去五年間に実施された面接の結果をいくつか無作為に拾ってみたとこ
ろ、そのほとんどで、最後に面接を受けた人が採用されていたということがわかりました。これは
単に、審査を受ける場面では、早い段階で登場した候補者の記憶が審査員のなかで薄れてしまうと
いうだけの話なのでしょうか。驚くべきことに、それは候補者の出来よりも、彼らが出てくる順番
のほうとずっと強く関係しています。
・選別の担当者は最初の候補者を評価する時に、評価が辛くなりがちですが、これは最初のほうの参
加者に高い点数を与えてしまうと、その後もっと良い候補者が出てきたときに、評価に差をつける
余地がなくなってしまうとわかっているためです。ですから、他の条件がまったく同じなら、三人
以上の候補者がたった一つの採用枠を争うような場面でのアドバイスはこうなります。最後にまわ
りましょう。
20.失う
◎損失は利益よりも重く感じられるので、説得を行う際には相手が失ってしまうものを強調しましょ
う。
・私たちの心のなかで、損は得よりもずっと大きなものとして現れるのです。いくら失うかというメ
ッセージは、節約できるというメッセージの二倍も、お勧めの行動を実行させたのです。あなたの
助言やお勧めに従わなければ失われてしまうものを嘘偽りなく示すことは、相手を行動に駆り立て
たり、「イエス」と言わせたりするうえで、非常に効果的な戦略となります。
・良い出発点の一つは、人間の心に備わった損失と利益の交換レートは、一対一よりむしろ一対二に
近いので、現状より多少メリットがある程度の提案に、何かを変えさせる効果はまず見込めないと
認識することです。つまり大切なのは、代替案のほうが断然多くの長所をもっていることをはっき
りと伝え、その上でそうした長所を、放っておけば失われてしまうものとして提示することです。
・あなたの時間に価値を与えましょう。「一日空いているから、そっちの予定に合わせる」と言っては
いけません。「土曜日の四時か七時なら会える」と言いましょう。
●● ピークパフォーマンス方程式 ●●
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まず与える人が最も説得力を持つ
返報性は普遍的に強力で、先に与える人ほど協力を得やすい。 -
プレゼントは“安価カテゴリーの高級品”が最も効果的
気前の良さが伝わり、評価も上がり、ケチと思われない。 -
協力を引き出すには“意見を求める”が最強の一手
人は自分が関わった案に甘くなるため、当事者意識が生まれる。 -
最初に大きく要求し、その後に譲歩することで承諾率が上がる
“ドア・イン・ザ・フェイス”効果は実証済みで、最初の要求が鍵。 -
小さな欠点を先に認めると信頼が増す
有能な人ほど「しくじり効果」が働き、魅力と信頼性が高まる。 -
雑談は影響力を広げる最も簡単な投資
人は拒絶しない。話しかけるだけで人脈と機会が増える。 -
要請には必ず理由を添える(“だから”の力)
理由の質より「理由があること」自体が承諾率を上げる。 -
コミットメントは“人前で・自分で書かせる・数値化する”が鉄則
能動的で公開された約束ほど実行率が高まる。 -
比較の順番が結果を左右する
選考・提案・プレゼンでは“最後に出る”ほうが有利になりやすい。 -
損失を強調すると行動が促される
人は利益より損失を2倍重く感じるため、「失うもの」を示すと動く。
