著者:澤円(さわ・まどか)

    (株)圓窓代表取締役。元日本マイクロソフト業務執行役員。立教大学経済学

    部卒業後、生保会社のIT子会社を経て1997年にマイクロソフト入社。2006

    年には、世界のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイ

    ツ氏が授与する「Chairman's Award」を受賞した。現在は、自身の法人の代

    表を務めながら、武蔵野大学専任教員、スタートアップ企業の顧問やNPO

    のメンター、Voicyパーソナリティ、セミナー・講演活動を行うなど幅広く活

    躍中。

 

     

 

 はじめに Giverになると新しい扉が開く

 ・社内を見渡すと、ある人のまわりでは、みんなが協力的で率先して動いている、という光景を目に

  することがあるでしょう。企業の顧問やアドバイザーを務めてきた僕が指摘したいのは、彼ら彼女

  らの大半に共通する「ある資質」であり、マインドセットです。すなわち、「Giver」(与える人)で

  あるということです。

 ・Giverは、人に惜しみなく与え、相手の利益や幸福を優先し、見返りを求めない人を指します。「人

  を動かす」ことのできる人は、先ず自らが「与える人」なのです。Giverは、極めて実利的な「利他

  という武器」なのです。本書では、令和の日本で「人を動かす」即戦力となるスキル、マインドセ

  ットを提案したいと思います。Giverという生き方は、働き方を一変させます。

 

 第1章 AI時代の「人を動かす」思考法

 インターネット革命以来の大転換が起きている

 ・生成AIの飛躍的な進化により、僕たちはいま、時代の大きな転換期に立ち会っています。約30年

  前のインターネットの普及依頼の最大の出来事であり、今後のビジネスシーンと仕事観を一変させ

  るでしょう。これまで費やしてきた多くのことは、むしろ人間がやらない方が質も高く、時間もか

  からない。2025年1月時価総額世界ナンバーワン企業、エヌビディアCEOのジェンスン・フアン

  が「将来的に、あらゆる企業のIT部門はAIエージェントの人事部門となるだろう」と発言し、

  世界中を驚かせたのです。つまり、これまで各部門で業務をこなしていたビジネスパーソンにとっ

  て代わり、今後はAIエージェント(AIを活用して業務を自動処理するシステム)がタスクをこ

  なし、IT部門は、AIエージェントを適切に配置する人事部のような役割になるという意味です

 「人とうまくやっていく」ことが最大の仕事になる

 ・注目したいのは、AIによって管理の大部分が肩代わりされ、経営と現場の付加価値だけが残ると

  いうメカニズムです。残る管理とは、経営におけるミッションやビジョンを本質的かつ的確に理解

  し、それを現場に伝えるスキルとなります。そんな「経営と現場をつなげる力」が管理(ミドルマ

  ネジメント)に求められるでしょう。

 自ら動き、Giverになるという意識革命

 ・「人とうまくやっていく」ことが最優先課題となる局面において、Giverになることが最良の道筋と

  なります。Giver、すなわち与える人は、まず自分から動きます。自分から自発的に行動し、相手が

  ハッピーになるものを与えます。すると化学反応が起きて相手も動き、互いの幸福度が最大化す

  る・・この好循環を生むのが、Giverのスタイルです。他者にもポジティブな影響を与えることで、

  「その他者も誰かに対するGiverになっていく」メカニズムがここでのポイントです。

 ・「人を動かす」プロセスは、まず自分がGiverになり、他者にポジティブな影響を与えることで、そ

  の人もまた誰かに対するGiverになる。その応答は必ずしも与えた人にダイレクトに返ってくるとは

  限りませんが、別の誰かへとGiveはパスされる、というものです。

 強権的なリーダーシップの弊害

 ・Giverは、時代が求めている新しいリーダー像でもあり、目指す価値のある理想の姿です。いまや多

  くの人々が、強権的な職場環境に甘んじるよりも、「自分の人生を生きたい」という価値観を持って

  います。力ずくで人を動かそうとするリーダーや強権的な組織体制は、もう古いのです。

 ・現在のマイクロソフトのマネージャーは、「サーバントリーダーシップ制」といって、チームメンバ

  ーの仕事上の「障害」を取り除くことを支援する役割です。マネージャーは奉仕する人であり、

  Giverにとても近い存在であることがおわかりになると思います。

 「人にGiveしたいこと」を最大化する

 ・自分が幸せになるために「本当にやりたい」ことに向けて行動し、それによって得た果実を人に

  Giveすることが、他者を幸せにするということ。これからの「できる人」とは、他者をGiverにでき

  る人だと、僕は再定義したいと思います。人に貢献することで自分がハッピーな気持ちになること

  こそが仕事の本質です。AIエージェントの活用で、誰もがそんな働き方にシフトできる機会がい

  まや公平な形で開かれつつあるのです。

 3つの「言わない」を守りましょう

 ・環境を整え、互いがGiverになるような職場環境をつくり出すにあたって、いくつかの「やってはい

  けないこと」があります。この前提を踏まえないと、あらゆる方法論は徒労に終わりますので、以

  下の3つを守ってほしいと思います

   ① 「愚痴」を言わない

   ② 「〇〇すべき」と言わない 

   ③ 「難しい」と言わない

 ・グローバル企業の文化のなかで働いてきた身からすると、どうにも日本企業の多くは、愚痴と批判

  の文化が強すぎると感じます。

 先に自分から動く方法

 ・「人を動かせる」人は、まず自分から動いています。特にマネージャーやリーダーが「先に自分から

  動く」ことで、メンバーがお互いに自発的に貢献し合える関係性を育み、チーム内に根付かせてい

  くことができます。そんな習慣を身につけるうえで、すぐ実践できる簡単な方法をご紹介しましょ

  う。

   ① 自分から挨拶する

   ② どんな些細なことでも、必ずお礼を言う

   ③ 自分が持っている情報を気軽にシェアする

 

 第2章 ビジネスは「壮大な推し活」

 相手にとってのメリットが行動を促す

 ・膨大な選択肢が広がるなかで人を行動へと促したかったら、その人にとって明確なインセンティブ

  となるものを与えることが大切です。行動経済学の観点でも、人は「現状維持バイアス」に強く影

  響されるからです。この”サボリたさ”が人間の初期設定であれば、やはり人が動き出すきっかけは

  意図的に工夫されたものが必要になるわけです。なかでも協力なのが、相手が「ハッピーになるも

  の」(相手にとってのメリット)を提示することです。

 「アンサングヒーロー」を称えるマネージャーの役割

 ・マイクロソフトでは、注目されにくい仕事をする「縁の下の力持ち」に光をあて、表にでにくい貢

  献を如何に発見し、評価するかがマネージャーの手腕(義務・役割)とみなされていました。組織

  やチームをささえる非常に重要な役割を担う人たちを指して、「アンサングヒーロー」という言葉も

  使われるようになりました。

 ・カーネギーは『人を動かす』のなかで、人を動かす三原則のひとつとして「重要感を持たせる」、つ

  まり「心から相手を重要な人物と思わせる大切さ」を説いています。相手に本物の関心と敬意を持

  ち、相手に「自分は重要な存在だ」と認識してもらうのは、結果的に人動かすための普遍的な原則

  だとする教えです。

 組織やチームを動かす「ビジョン」を共有する

 ・ではどうやったら、チーム全体にグリップ感を育んでいけるのでしょうか? 先ずは、組織やチーム

  全体の「ビジョン」を共有するというプロセスが重要になります。明確なビジョンは、「これなんの

  ためにやっているんだっけ?」という問いに対して本質的な目的を示し、「この方向へ進もう」と行

  動に踏み出すための道標となります。よくある間違いが、ビジョンではなくゴールを共有するだけ

  のマネージャーやリーダーです。

 ・確かに組織としてKPI(重要業績評価指標)の設定は欠かせませんが、それ以前に「この会社はなん

  のために存在していて、社会でなにを実現したいのか」というビジョンを共有しなければ、「数値目

  標さえ達成できればなにをやってもいい」と解釈されかねません。また、よくあるもうひとつの落

  とし穴が、「生産性を2割上げなければならない」などという、ぼんやりしたゴール設定です。

 「観察」によって相手の隠れた願望・才能に気づく

 ・人は誰かからなにかしてもらう際、どんなことが一番嬉しいでしょうか。「自分でも気づいていなか

  った」願望やニーズをぴたりと満たしてくれるサプライズこそが最高のギフトだと僕は思っていま

  す。その人のなかにある「当人が知らない」価値を見つけて、ポジティブに「推す」。実は、この知

  らなかったことを「知っている状態」にすることが、当人が主体的に動くきっかけになるのです。

 ・参考になるのは、自己理解と他者理解を深めるためのモデル「ジョハリの窓」です。このモデルは

  自分についての情報を「自分が知っている・知らない」「他人が知っている・知らない」という2軸

  で整理したものです。ここで、自分は知らないけれど、他人が知っているのが「盲点の窓」の領域

  です。自分が気づかない場所に宝(自分の魅力)が眠っており、それに「どのような意味があるの

  か」「どこが素晴らしいのか」を言語化し、ポジティブにフィードバックしてあげることで、その人

  は大きな気づきを得ることができます。

 顧客の「機嫌がいい時間」を狙え

 ・「上機嫌が人を動かす」という視点は、行動経済学の中心的な理論である「ナッジ理論」でも説明

  することができます。行動経済学は「頭でわかっていてもうまく行動できない人を望ましいい行動

  へと動かし、幸せに導くためのエッセンスが詰まった学問」だといいます。ナッジを直訳すると、 

  「そっと後押しする」「肘で軽くつつく」という意味合いの英語で、ここでは、「認知バイアス(直感

  の習性)の特性に沿って人を動かす手法」というニュアンスで用います。

  ここで、人に動いてもらううな提案をする際に、おすすめするナッジを3つ紹介します。

 

   ナッジ① 相手が疲れていないタイミングを選ぶ

   ナッジ② 選択肢を奪わない

   ナッジ③ 話の最初と最後をポジティブなイメージに設計する

  

  ①一日の疲れが溜まる夜は、現状維持バイアスが強いため、新しい提案は拒絶される可能性が高

   まります。朝一番に話すことで柔軟な判断になりやすくなります。

  ②有益な話でも、頭ごなしにいわれると誰だって反発したくなる。押し付け感をなくすには、相手

   に選択肢を与えましょう。自分が選んだことは行動につながりやすくなります。

  ③多くの場合、最初に受けた印象がその後の判断に影響し(初頭バイアス)、最後の印象が記憶に定

   着します。そのため、最初と最後にピーク(重要な要素)がある設計にすれば、相手は提案を受

   け入れやすくなります。

 

 第3章 ストーリーで人を動かす黄金則

 ストーリーづくりの黄金則は「抽象化・共通化・課題解決」

 

   ①抽象化 ・・・・ 本質を伝える

   ②共通化 ・・・・ 自分ごと化させる

   ③課題解決 ・・・ ありたい姿を提示する

 

  ③課題解決 「as  is」から「to  be」を示す

   人により気持ちよく主体的に動いてもらうには、その人にとっての「ありたい姿」を示すことが

   なにより重要だと考えています。「as is」(現状)から「to be」(ありたい姿)へ、相手の視点

   を未来に向けるストーリーを伝えるのです。

 理想の未来を「自分の言葉」で語ろう

 ・「to be」(ありたい姿)のビジョンへと導く魅惑的なストーリーは、文字通り聞き手の人生を変える

  力を持っています。孫正義さんの、「ソフトバンク ワールド2024」で行った特別講演での宣言で

  は、AI革命によって、あらゆる産業の構造が転換されるとし、具体的には、「人間の知能と同等レ

  ベルに達するAGI(汎用人口知能)は2年から3年後、人間の知能の1万倍のASI(人口超知

  能)は10年以内に来る」「2026年後半~2027年以内に24時間自分専用のパーソナルエージェント

  が実現」と言った、未来像にいたるストーリーを提示したのです。僕が心から感銘を受けたのは、

  未来は誰にもわからないにもかかわらず、彼の頭の中には確固たるストーリーがあり、それを自分

  の言葉で話していたことです。

 ・顧客を幸せにするためのビジネスの提案に、自分なりの未来のストーリーを描くことはきっとでき

  るはず。人の心を震わせたり、行動へと結びつくストーリーには、必ず可能性に満ちた未来が描か

  れています。

 

 第4章 「たとえ話」で内発的な気づきを生む

 共通認識をつくる最強メソッド「たとえ話」

 ・たとえ話とは、話を伝える相手との間に「共有するもの」(年齢・知識・情報・価値観・カルチャー

  など)がないときに、新しく共通認識をつくってくれる強い味方となります。多くの人が「共通し

  て見ているもの、理解しているもの」は必ず存在します。

 たとえ話と「抽象思考」の関係

 ・僕のプレゼンの中では、上の階層で決めた方向性が下の階層に降りてきて実行され、その一方で下

  の階層の工夫や成果が上の階層にフィードバックされる構造のなかで、最も重要でかつボトルネッ

  クにもなりやすいものが中間のマネージャー層であることを指摘します。マネージャーの本質を理

  解すると、ドラッカー風に言うなら「マネージャーとは、個の足し算をチームの掛け算に変える触

  媒である」という「抽象化」もできるでしょう。

 「具象→抽象→具体化」で考える

 ・たとえ話をつくるプロセスについて、整理しましょう。

   ①具象→②抽象→③具体化

  ①の「具象」とは、話のテーマがどのような要素から成り立っているかを掴むプロセスです。

  ②の「抽象」とは、①の具象の理解を助けるために、聞き手との間に「共通認識」をつくっていく  

   プロセスです。

  ③の「具体化」は、②で導かれた言葉でたとえ話をつくり、それによって理解を深めていくプロセ

   スです。

 メタ的な視点に切り替わると行動が促される

 ・あなたが仕事で大きなミスをしたとします。目の前が真っ暗の気分になるでしょう。でもこの時に

  「会社の中の自分の仕事は、人類や地球にとっては全く大したことではない」と考えることができた

  らどうです? そんな気楽さを持ったうえで、いったん視点を切り替えて自分を解放してみるので

  す。その後、「でもなんの因果か、この仕事に関わることになったのだから、もう一回やってみる

  か」と戻ってくると、意外と仕事がうまく回っていくことがよくあります。そして、メタ思考を使っ

  てピンチを脱したその体験は、自分にとって大きな成功体験へとつながっていくのです。

 

 第5章 「褒める力」が好循環の行動を生む

 相手の本質を「褒める」と人は動く

 ・多くのGiverは褒める達人です。普段から他者に対して興味のアンテナを張っていると、相手のこと

  を丁寧に観察し、その人の本質的な部分をきちん認めて褒めてあげることができます。褒めるとき

  は必ず「観察」が先と、心がけましょう。

 「本人が気づいていない部分」を褒める

 ・人が褒められて一番嬉しいのは、本質的かつ「自分でも意識していなかった部分」に光をあてら

  れ、気づきとなったときです。

 ・「自分が知っている・他人が知っている」部分(開放の窓)を褒めてあげれば、相手に納得感がうま

  れます。「頑張りを認められた」安心感です。しかしもっと効果的なのは、「自分が知らない・他人

  が知っている」という「盲点の窓」の領域を褒めることです。

 ひとこと目に「いいね!」を意識する

 ・誰かを褒める行為は、相手へのささやかなGiveです。互いを褒め合うようにすると、ポジティブな

  空気感が醸成されていきます。誰かが小さな貢献をしたら、ひとこと目に必ず「いいね!」「助かっ

  たよ」という言葉を口にするよう心がけましょう。僕がマイクロソフトで出逢った優れたリーダー

  たちは、難しい交渉の場面でも、ひとこと目には必ず、「毎日一生懸命働いてくれてありがとう」と

  話かけていました。

 「自分から動く」という気構え

 ・大事なことは、誰が一番早く動けたかということではありません。「自分から動く」という気構えの

  大切さです。危機的な場面や突然トラブルが降りかかったときに、動ける人と立ち尽くしてしまう

  人の違いは、常に「自分には何ができるのか」ということを考えてシミュレーションしているかど

  うかの違いです。

 ・僕は、「なにか起きた時はパッと自分から動こう」という意識をもち、普段からイメージトレーニン

  グしています。だからもう、思考を超えた”体の癖”となっているのです。ちなみに僕は、ビジネスの

  イベントやパーティーなどでも、自分から積極的に手伝うようにしています。長年そうしているの

  で、もう体が勝手に動いてしまう感じです。僕が動きはじめると、その場に雰囲気ができて周りも

  動き出します。

 ・チーム内で自発的な行動を促したかったら、まず自分が動くこと。それを見て周囲の人が動いてく

  れたら「褒める」こと。褒められたことで人は嬉しくなり、「次は自分から動こう」という気持ちに

  なれます。この「動く→褒める→動く」というサイクルを再現するのがポイントです。

 結果を褒めるか、プロセスを褒めるか

 ・どれだけ頑張っても、周囲とうまく協調できる人であっても、主要な成果が伴わなければ評価され

  ないのがグローバル企業のベースラインです。しかし、結果を出す為のプロセスも評価するのが近

  年のトレンドです。「仕組み」(人員の適正配置など)という土台の上に、「働きやすい環境」や「褒

  め合う文化」を載せてこそ、現場のパフォーマンスは飛躍します。

 コントリビュート文化がマイクロソフトを変えた

 ・コントリビュート文化とは、社員各々が積極的に他者に貢献し、貢献を感謝する「感謝の好循環」

  を生む考え方、価値観のことです。「利他」の好循環は、巡り巡って『利己」にもなる。あなたの人

  生を大きな可能性へと導くサードドアを開くことにもつながり得るのです。

 

 第6章 「心理的安全性」が動ける組織をつくる

 なぜ職場の「心理的安全性」が大切なのか

 ・組織やチームにおいて、「人が動かなくなる」最大の要因のひとつは、その場に「心理的安全性」が

  ないことです。心理的安全性とは、アメリカの組織行動学者エドモンドソンが提唱した組織行動論

  における概念を指します。エドモンドソンは心理的安全性を、「対人関係においてリスクをとって

  も、拒絶されたり罰せられたりしないという信念」と定義しています。個々の仕事に対するエンゲ

  ージメント(愛着・熱意・貢献意欲)を高め、能力を最大限に発揮してもらうには、働く環境の不

  安要素というボトルネックを解消する必要があるのです。

 「誰がメンバーか」よりも、「どう協力しているか」

 ・米グーグルでは、2012年から2年以上にわたり、社内の何百というチームを調査した結果、パフォ

  ーマンスの高いチームに共通して心理的安全性があることがわかり、その重要性がビジネス界で大

  きな注目を浴びました。職場に必要不可欠だと示されたのが、スキルや経験よりも、「安心して発言

  できること」だったのです。この事実をもとに、組織やチームにおいては「誰がメンバーであるか」

  よりも、「チームがどのように協力しているか」が重要だと考えています。

 ・チーム内で協働し、互いの専門性や強みを掛け合わせて初めて多くの価値を生み出せます。つま

  り、人材の価値は”静的コンテンツ”としてのラベリング・・東大卒、エンジニア歴5年の〇〇、と

  いった要素で決まるのではなく、あくまで、「どう協力しているか」という「行動」によって決まる

  のです。経歴ではなく、「行動」で社員は評価されるのが欧米のグローバル企業では一般的です。

 ・心理的安全性のある状態とは、なにもまわりに遠慮して波風立てない、動かないことではありませ

  ん。むしろ、「どのうような提言をしても」「どんな挑戦をしても」その組織はチームでバカにされ

  たり批判されたりしない動的な環境の保証を意味します。

 失敗を許容する文化が鍵になる

 ・皆さんに伝えたいのは、行動した結果を失敗と呼ぶか、学習とみなすかは、解釈の問題に過ぎない

  ということです。なにも行動しなければ学習データはゼロですが、行動してうまくいかなかった経

  験は、貴重な学習データになります。つまり、成功であろうが失敗であろうが、すべての行動は学

  習データの収集だと捉えてみる。そのうえで、リスクが大きい失敗をいかにスピーディーに安全に

  発見できる仕組みをつくれるかが、今後の企業の競争力にとって重要なファクターとなるでしょう

 ・心理的安全性がある職場では、たとえ失敗しても、「ダメでした」「やってしまいました」と、包み

  隠さずにいえる雰囲気がある。失敗しても批判されないと信じられるから、失敗からフィードバッ

  クを得て、次々と行動していけるわけです。

 トラブル時は「Why?」ではなく「What?」で訊く

 ・普段のトラブル時には、マネージャーやリーダーはどうのような声かけをすればいいのでしょうか

  「なにがあった?」「なにが問題だったの?」と訊くと、対象となる問題や課題が自分たちの”外側”

  に置かれることになります。そんれにより、みんなでその問題の方を向く事ができ、解決に向けて

  のネクストアクションを、より建設的に議論できるようになるのです。

 ・逆にダメなパターンは「Why?」で訊くことです。「なぜそうなった?」「どうしてそうした?」と 

  訊くと、責任追及の矢がその担当者だけに向き、心理的安全性が損なわれてしまいます。つまり、

  「Why?」は相手を問い詰めるだけの訊き方で、問題解決から逆に遠ざけてしまうのです。

 ・イシュー(問題)にベクトルを向けることで、心理的安全性が担保されているのです。「Why?」の

  ベクトルを相手に向けているときは、非常に無駄なエネルギーとリソースを費やすはめになります

  トラブル時には、とにかくイシュー(問題)に集中し、人に集中しないことが重要です。

 「重要かつコントロールできる」問題に集中する

 ・組織の問題に集中するときには、どのようなプロセスで対処すればいいのか、具体的な方法を説明

  していきます。最初にやるのは、「重要度(緊急度)が高い」ものでかつ「コントロールできる」問

  題(A領域)を見つけて片付けることです。「重要度(緊急度)が低い」ものでかつ「コントロール

  できない」問題(D領域)は放っておいて問題ありません。注目したいのは、「重要度(緊急度)が

  高い」けれど「コントロールできない」問題(B領域)です。重要度が高い問題を放っておくのは賢

  明とはいえません。

 ・B領域の問題には、必ず「観察」のプロセスを挟み込んでみてください。コントロールできないよう

  に見える問題のなかに、コントロールできる要素がないかを探してみるのです。観察によって、でき

  る限りコントロールできる要素を探していく姿勢が、問題解決を早める結果につながるのです。

 セクショナリズムを乗り越えるミッションドリブン

 ・心理的安全性を脅かすセクショナリズムをなくしていくには、まずトップが余計なルールをなくし

  て、仕組みを変えていくことが最良の選択です。しかし、プレイヤーであっても、セクショナリズム

  を打破する行動を取ることはできます。それは「明文化されていないルール」には従わないと決め

  ることです。

 

 終章 未来に向かって人を動かす

 Giverが未来をつくり出す

 ・僕が長年大切にしてきた信念は「自分から先に貢献する」というものです。ちょっとでも何か自分

  が手伝えるな、役にたてそうだなと思ったら、すぐに自分から動いてみる。困っている人がいた

  ら、「なにか手伝えることはありますか?」とまず声をかけるのです。「大丈夫?」「いつでもいって

  ね」と声をかけてあげるだけで、「あなたのためにいつでも手助けする用意がある」という意思表明

  になります。

 理想はさすらいの用心棒

 ・僕の他者への利他行動は見返りを求めた結果ではなく、もはや「思わず動いてしまう」体の習慣の

  ようなものです。そんな行動の積み重ねが、自分と自分がかかわった人の未来をよきものへと変え

  ていくと信じられるからです。

 ・あなたの日々の小さな行動は、他社からの共感と貢献を引出し、自由で楽しいハッピーな時間を作

  り出していくでしょう。

 

 

 ●● ピークパフォーマンス方程式 ●●

 ① 先に動く人が、場を前向きに変える

  自分から動くと、周囲も自然に動き出す。 小さな行動が、協力の空気をつくる。

 ② 相手の“気づいていない価値”を見つけて伝える

  人は、自分の盲点を褒められると深く心が動く。 観察して言語化するだけで、信頼が強まる。

 ③ 目的(ビジョン)を共有しない組織は動かない

  数値より先に「何のためにやるか」を示す。 目的が分かると、人は迷わず行動できる。

 ④ 心理的安全性があると、行動量が一気に増える

  責めずに「何が起きた?」と訊くことで安心が生まれる。 安心は挑戦と報告のスピードを高める

 ⑤ 行動を促すのは“相手のメリット”である

  人は、自分に得があると動きやすい。 提案は、まず相手のハッピーを示すことが鍵。