実家じまい終わらせました！

　副題　：　大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方

　著者　：　松本明子（まつもと・あきこ）

　　　　　　1982年歌手デビュー。現在は、バラエティー番組の他、ドラマ、映画

　　　　　　舞台と幅広く活動中。

　１．「空き家」ってこんなにお金がかかるとは！

　　空き家の維持に25年、かけた費用は1800万円！

　　・2018年１月、高松市の実家を約600万円で売却しました。空き家のまま25年も維持してきた家で

　　　その間にかけた費用は実に約1800万円！1年で水道代が約12,000円、電気代は母屋と離れを合わ

　　　せて約8万円。ほかに固定資産税が年約8万円、火災保険が年約10万円。合わせて年約27万円ほ　

　　　どの維持費が少なくとも必要でした。

　　父の思いに揺れた実家じまい、ついた売値は600万円

　　・放置された空き家は倒壊の危険があるだけでなく、放火のターゲットにされたり、大麻の栽培に

　　　利用されたりするなど、犯罪の温床にもなります。2014年11月には周囲に危険を及ぼす可能性

　　　のある空き家の所有者には固定資産税を最大6倍にする「空き家対策特別措置法」が施行されて

　　　います。

　　・いざ実家じまいをすると言っても、築45年の家をそう簡単に売ったり、貸したりできる筈があり

　　　ません。しかも高松の郊外です。売るにしろ貸すにしろ、もう少し綺麗で使いやすいほうがいい

　　　と思い2回目のリフォームを行いました。かかった費用は約250万円。前回分と合わせると約600

　　　万円になります。最終的に実家のために使った費用は1800万円以上になりました。

　　・番組の収録で、高松の不動産屋さんに査定してもらったのですが、「買取価格は築年数が古いの

　　　で上物の価値はゼロ、土地の価値だけで200万円」と言われ、思わず絶句、倒れそうになりまし

　　　た。「更地にすれば買い手はつきやすいですけど、費用は500万円ほどかかりますね」と追い打

　　　ちをかける言葉が・・・。

　　・香川県が運営する「空き家バンク」というサービスを知りました。物件情報を地方自治体が主体

　　　となって運営する空き家バンクのホームページに公表し、空き家を借りたい、買いたい人が利用

　　　できるようにしたものです。実際の仲介業務は、不動産業者さんに頼んで行います。調査で問題

　　　がなければ、写真付きの物件情報が登録になります。掲載料は無料です。空き家バンクに登録し

　　　て間もなく、購入希望者が現れました。

　　家財や遺品の整理は死ぬほど大変

　　・買い手が見つかり、やれやれと思ったのも束の間、実家じまいの最大の大仕事がまっていました

　　　実家に大量に残されていた家財や遺品の処分です。書斎にあった本は、すべて車に積んで東京ま

　　　で持ち帰り、神田の古本屋さんにもっていきました。でも、ほとんど二束三文。百科事典などは

　　　中身が古すぎて一銭にもならず、結局、捨てました。

　　・廃棄した家財や遺品は２トントラック10回分。1回10万円したので計100万円です。「ゴミ」を

　　　すてるのにこれだけかかりました。一つ心残りがあるとすれば、家財や遺品を丸ごと全部整理し

　　　て、売れるものは売ってくれる専門の業者さんがあることを知らなかったことです。

　　・こんなに荷物を残して親が亡くなったら、あとで子供が大変なんだよね、ということを、上手に

　　　話して理解してもらうのが、結局は一番いいのかな、と思います。そうした準備がないまま親が

　　　亡くなると、どこに通帳があるのかさえわからないし、通帳が見つかっても、今度は届印がどこ

　　　にあるのか、どれなのか、あちこちひっくり返して探さないといけなくなります。

　２．実家の「空き家問題」はどうすればいいですか？

　　実家の空き家問題とは何か？

　　・日本の空き家は2018年の調査では約849万戸まで増加し、空き家率も13.6％と、実に日本の住宅

　　　の約７戸に１戸を占めるようになっています。この35年で空き家率は約2.5倍に増えたのです。

　　　理由の一つには住宅を作り過ぎたことが挙げられます。やはり大きいのは少子高齢化です。それ

　　　まで親が住んでいた家が売却や賃貸などで活用されないまま空き家になるというものです。

　　・空き家を売る時の大原則は、なるべく所有期間を短くして、適切に管理すること。維持費が抑え

　　　られるし、管理状態がよければ、売りやすくなるからです。たとえば雑草は放っておくとたちま

　　　ち腰の高さくらいまで伸びますし、夏場なら草の種類によっては人の背丈ほどまで成長します。

　　　雑草の生い茂った家は一目で空き家とわかるので、ゴミのポイ捨てに始まり家電や粗大ゴミの不

　　　法投棄を招きやすく、どんどんあれてしまいます。

　　・空き家を放っておくと、地元の役所からまず「草が伸びているので刈ってください」といった法

　　　によらない改善のお願いがきます。これは通常、文書ですが電話の場合もあります。これに従わ

　　　ないと「特定空家等」に指定される可能性があります。

　「負動産」にしないための実家の空き家対策

　　・空き家が多い地点か否かを調べる方法は、「地域名　空き家」で検索すれば自治体のホームペー

　　　ジがでてきます。あとは、以下のような情報サイトを利用するのもいいとおもいます。

　　　◎スーモ　◎ライフルホームズ　◎アットホーム

　　　空き家バンクにどれだけ情報が掲載されているかは大事なポイントです。

　田舎でも「即利用可」の空き家なら売れる

　　・一番可能性が高いのは、買った人が自分で手を入れることなく、すぐに住める「即利用可」の空

　　　き家です。これは市場性があります。

　　・空き家バンクに登録するなら、現地調査の前に草刈りや剪定をしたり、家の掃除もやっておいた

　　　り、と少しでも写真映えをよくする努力も大切なんです。田舎の場合、「好立地」と「古民家」

　　　以外はなかなか厳しいのが現実です。

　更地にするには多額の解体費用がかかる

　　・空き家の売り方の基本的なパターンは２つです。

　　　１つは建物付き中古住宅として売るケース。もう１つは空き家を土地として売るケースです。建

　　　物の解体を伴うのでこれには次の３つがあります。

　　　①「古家付土地」での売却、建物がたっている状態で売却し、引き渡し後に買主が費用を負担

　　　　て建物を解体する。②「更地渡し」での売却、③「更地」での売却

　　・空き家の多い地域では、売却価格より解体にかかる費用のほうが高くなることも多く、そうなる

　　　と売れたとしても収支はマイナスになってしまいます。空き家を解体して更地にするには、通常

　　　100万円以上かかることが多いです。首都圏であれば、100万円から200万円が相場でしょう。

　　　実際の費用は、立地、道路、敷地、建物の構造などによって々程度の空き家でも大きく違ってき

　　　ます。家の前面にある道路にトラックなどが出入りできる、というのが標準価格の前提。

　実家の生前贈与

　　・親が意思決定できなくなると、施設入所などにお金が必要で実家を売却したいと思ってもそれが

　　　叶わなくなります。民法で定められた法定相続人の範囲は、必ず相続人になる配偶者のほかは、

　　　第一順位が子ども（子どもが亡くなっている場合は、孫）、第二順位は父母・祖父母、第三順位

　　　は兄弟姉妹（兄弟姉妹も亡くなっている場合は、その子ども＝甥・姪）です。

　　・配偶者と子どもがいれば、第二順位以降は法定相続人とはなりません。第三順位の人は第二順位

　　　までの人がいない時に法定相続人となります。

　実家を共有名義にしない

　　・実家は一人で相続しなさい、ということ。兄弟姉妹などの共有名義にすると、実家を処分しよう

　　　にも共有名義の全員の合意がないと難しいからです。

　相続放棄をするには

　　・相続は、自分が相続人だと知ってから３箇月以内に裁判所で手続きをすれば、相続放棄をするこ

　　　とができます。ただし、放棄するのは空き家だけで、ほかの預貯金などは相続したい、というわ

　　　けにはいきません。相続を放棄する場合はすべての財産を放棄する必要があります。

　親が施設に入る前にやっておくべきこと

　　・親が認知症などで意思決定ができなくなると、相続まで売却等の活用ができないことが確定しま

　　　す。裁判所は、子どもが「空き家の管理が大変」とか「自分の生活費にしたい」などと言っても

　　　そうした理由では売却を認めてはくれません。

　３．思い出の品はどうしたらいいですか？

　　親の意向はエンディングノートを活用して把握する

　　・終活は、より自分らしく生きられるようにすることを重視しています。そのためによく活用され

　　　るのがエンディングノート（終活ノート）です。終活カウンセラー協会は、終活を包括的に進め

　　　るという立場から「実務的なこと」と「感謝や感情の想い」の両面が調和するノートを提案して