ちいさないさな王様

  アクセル・ハッケ  投稿日:2014年 4月 8日(火)05時53分38秒
 
  当著との出会いは、STAP細胞を発見した?(今では・・疑いもあるが)と話題の小保方晴子さんが中学時代に書いた読書感想文が、最優秀賞をとって新聞にも掲載されており話題となったので読んでみた。
正直にいうと、期待したような思いは生まれなかった。しかし・・これは自分が大人になりすぎているからかもしれない。
以下に、あらすじを抜粋しておく。



ちいさなちいさな王様

 アクセル・ハッケ作  那須田淳/木本栄共訳
 ミヒャエル・ゾーヴァ画  講談社

あらすじ
ある日突然、主人公のところに、人差し指くらいの大きさの、太った王様が現れます。

王様は、主人公の家の本棚と壁のすきまに住んでいるようです。
そして王様は、「僕」に、「お前の世界のことを話してくれ」と言ってくるのです。

「僕」はこの世界のことを、そして王様は、自分の世界のことを話します。王様の世界では、生まれたときが一番大きく、何でもできるといいます。そして、毎日少しずつ忘れていき、少しずつ体が小さくなっていきます。いろんなことを忘れ、想像して楽しむ、いわゆる子供時代がやってきます。
王様の世界では小さいほうが偉いので、大きい人は、小さい人の疑問にもとことん付き合わなくてはなりません。

ある日、父親がものすごく小さくなって、見えなくなってしまったので、王位を継承したのだと王様は言いました。

王様は「僕」の話を聞いては、自分の世界と比べて、「おれの世界は素晴らしい」という考えになるようです。
もっとも「僕」自身、それに否定はできません。
王様の世界は、すべてがうまく、幸せそうにできているのを感じるからです・・・。
王様は、少しずつ小さくなりながらも、「僕」にいろいろなことを教えてくれます。
たとえば、毎日歩いていく会社までの道も、王様と一緒だと、全く別の世界になってしまいます。

また夜空を眺めて、王様が教えてくれたのは、「僕」たちが死んで星になった後、王様の世界にいつか生まれ変わるということでした。
その話の中、「僕」は疑問に思います。
王様の世界は、「死」があるんだろうか?
見えないくらい小さくなったからといって、そこにいないとは限らない。
それなら、王様の世界では、ずっと永遠に存在しているということじゃないかな・・・、と。


【本文】(折り返し改行せず。画像にない部分は「略」とした)
私は大人になりたくない。日々感じていることがあるからだ。それは、自分がだんだん小さくなっているということ。
もちろん体ではない。夢や心の世界がである。現実を知れば知るほど小さくなっていくのだ。私は、そんな現実から逃げたくて、受け入れられなくて、仕方がなかった。

(中略)
われている夢をみている。そして、夜ベッドに入るとおまえはようやく目を覚まし一晩中、自分の本当の姿に戻れるのだ。
よっぽどいいじゃないか、そのほうが」と。私はこの時、夢があるから現実が見られるのだということを教えられたような気がした。
 小さな王様は、人間の本当の姿なのだと思う。本当はみんな王様だったのだと思う。ただ、みんな大人という仮面をかぶり、社会に適応し、現実と戦っていくうちに、忘れてしまったのだと思う。
 いつか、小さな王様と「僕」がした、永遠の命の空想ごっこ。私は、永遠の命を持つことは、死よりも恐ろしい事だと思う。
生きていることのすばらしさを忘れてしまうと思うからだ。それに、本当の永遠の命とは、自分の血が子供へ、またその子供へと受けつがれていくことだと思う。
 王様は、人は死んだら星になり、王様は星から生まれると言っていた。私は、王様は死んでいった人々の
(中略)
り、自分の子供時代に、ということになるだろう。私も、自由奔放で夢を見続けられる王様をうらやましく思う。でも、私はそう思うことが少しくやしかった。なぜなら自分の子供時代を、今の自分よりよいと思うことは、今の自分を否定することになるのではないかと思ったからだ。まだ私は、大人ではない。なのに、今から、自分を否定していては、この先どうなっていってしまうのだろうと思って恐かった。でも、また一方では、「前向きな生き方」や「プラス思考」などというものは、存在しないようにも思えた。
 夢には、二面性があると思う。持ち続ける事も大切だが、捨てる事もそれと同じ位大切な事なのだと思う。
どちらがいいのかは、わからない。また、私がこの先どちらの道に進むのかも。ただ、言えることは、みんなが夢ばかり追いかけていては、この世は成り立たなくなってしまうということだけなのだと思う。
 私は王様の世界より、人
(中略)
と思う。なぜなら、もう「僕」には王様の存在の必要がなくなったからだ。私と「僕」は答えを見つけた。「夢を捨ててまで大人になる意味」の答えを。それは、「大人になる為に、子供時代や夢がある」ということだ。最後の赤いグミベアーは、さようならのメッセージなのだと思う。
 これからは、「僕」も私も前を向いて生きていけると思う。王様は、まだ答えの見つからない、王様がいなくて淋しがっている人の所へ行ったのだろう。私は本の表紙に名前を書いた。王様が教えてくれた事を大人になっても忘れないように。
 王様の存在が夢か現実かはわからないが、この本を読む前の私にとっては夢であった。しかし、少なくとも、今の私の心の中で生きている王様は現実だということは紛れもない事実である。
 世の中に、ちいさな王様と友達になる人が増えたら明るい未来がやってくる。そう思ってやまないのは私
(後略)