リフレはヤバい

小幡 績(おばた せき) 投稿日:2013年 8月 3日(土)11時47分42秒
  
  ◆リフレ政策とは何か?
・リフレとは、インフレをわざと起こすこと。安倍首相は、インフレを意図的に起こすことすなわちリフレという政策を主張した。そして、メディアはリフレ政策を中心とする安倍首相の経済政策をアベノミクスともてはやした。

・何故、リフレ政策が悪いのか。それは、リフレが国債を暴落させるから。国債が暴落すれば、国債を大量保有している銀行は、経営破綻に追い込まれ、銀行危機となる。そうなると、貸ししぶり、貸し剥がしとなり、中小企業はひとたまりもない。

・国債が暴落しているから、政府が銀行に資本注入しても、その資金を調達する為に発行する国債を買ってくれる人がいない。それを日銀に引き受けさせようとすれば、更なる国債暴落を招き、銀行の破綻は加速する。これこそ、スパイラル的金融危機だ。

・安倍首相は3つの矢といっている。①強力な金融緩和による、デフレ、円高の脱却(物価を上げて、円安にする)、②財政政策、③成長戦略。

・リフレ政策①インフレターゲット
 =日銀にインフレ率の目標(今回は2%)を与へ、それを達成させるを義務とすること。

・リフレ政策②マネーの大量供給
・通常は金利の引き下げをするが、現在はゼロ金利。代わりにマネーを増やす手段のひとつは、民間金融期間が保有する資産を日銀が買うこと。この資産が普通は国債。

・リフレ政策③日銀法改正
・インフレターゲットを明確な目標として設定し、それを達成出来ない場合には、日銀総裁等を解任出来るというもの。
・日銀がインフレターゲット2%を受け入れたことに対し、ドイツの中央銀行幹部等、世界中の中央銀行関係者は強い懸念を表明した。


◆その時日本経済に何が起こるか?
・現実世界でインフレ、物の値段が上がる為には、景気がよくならないといけない。景気をよくする為にインフレを起こすこと、それは無理。因果関係が逆なのだ。
・物価が上がる一方で、景気が悪くなることをスタグフレーションという。

・今の日本でインフレが起きる、物価があがるとすれば、輸入品(食料と資源)があがるということ。資源がバブルにならなくても、円が暴落してドル建ての資源価格が円換算で上昇する可能性がある。つまり、円安によるインフレである。

・整理すると、今の日本で実際にインフレが起きるとすると、そのメカニズムは、円安などによる輸入インフレによるもの、というのが最も可能性の高いシナリオである。


◆円安はどのようにして起きるのか?
・何故、円安は円高ほど話題にならないか、その理由は、円安のほうは、間接的に見えない形で全ての人に少しずつ影響が拡がるから。
・輸入に関しては、円高の方が圧倒的にいい。輸出は、円高の影響を受けない製品が多いのに対し、輸入の多くには円安のディメリットが直撃する。つまり、円高の方がけいざい全体でははるかに得なのだ。

・安倍政権になり実際に円安は起きたが、それは安倍政権誕生が10円の円安効果を持った訳ではなく、世界中の株価も同時期に大きな上昇トレンドにはいった。株価上昇も円安も、この流れに沿ったものだ。
・この場合の株高は、円安半分と世界的な流れが半分であったことは留意しておく必要がある。

・それよりもはるかに重要なことは、日本国債の価格の動きである。国債が下落すると、日本経済は直ぐに危機に陥る懸念が出てくるので、国債価格には注視が必要なのだ。
● 円安で注意しなければならないのは、国債価格の下落=すなわち名目金利の上昇なのだ。逆に言えば、これさえ起きなければ、リフレ政策でも何でもやってかまわない。

◆円安で日本は滅ぶ
・今の日本では、短期的には円安がいい可能性はあるが、長期的には間違いなくよくない。
・今の日本でインフレが起きるとすれば、円安によって起きるシナリオしかない。その円安が起きるシナリオは、日本が主導して起こすことは難しく、米国の動向によって起きるのだ。
・極端な円安は極めて危険である。何故なら、それが日本国債の下落をもたらす可能性が高いからだ。日本国債の動向。それが全てを握るのだ。日本の国債残高は、先進国ではダントツの世界一。

・銀行は集まった預金の貸出先が不足しているし、生命保険も保険料という長期の運用資金があるから、その運用先としての代表格が国債なのだ。国債は、他の金融商品などの投資運用手段に比べて圧倒的に優れている。
・バランスのとれた運用をする投資家なら、必ず一定割合を国債への投資に回す。
・国債が何故優れた運用先かと言うと、買いたい時に買え、売りたい時に売れるからである。つまり流動性が高いことこそが、国債の最大の魅力なのだ。

・国債のいいところは、利回りが固定していることだ。つまり、債権は利子率が3%とか5%と言うわけだが、これを発行時に額面で買えば、利子額は決まっていて、100億円投資すれば、毎年3億円とか5億円、固定額の利子が収入として上がってきて、満期が来ると元本の100億円も一緒に返ってくるということだ。

・逆い国債に投資した時のリスクは、まずデフォルトがある。デフォルトとは債務不履行のことで日本政府が国債の利子や元本を支払わなくなるということ。財政破綻しなくても、国債への投資には大きなリスクがある。それは、国債の値下がりリスクである。
・では、何故みんなが国債を買うのか? 売り浴びせるインセンティブは既になく、大量保有しているから、売り浴びせて値下がりしたら、自分が大損をしてしまうのだ。さらに大暴落の恐怖でパニックになることもない。
◎値下がりしたのは、誰かが売ったという理由だけの筈なのだ。国債は大口の資金を動かす機関
 投資家が中心だから、誰が売ったかは直ぐに解る。

・このままで行けば、財政破綻することは間違いないが、国債の売りが売りを呼ばなければ、暴落は起きない。これまでは、暴落は起きるはずがなかったのだ。財政破綻がいつか起きるという事と、暴落が今すぐに起きるということは、別のことだったのだ。
◎これがガラッと変わる可能性がある。暴落の可能性がある。それが円安なのだ。円安はそれ自体が国債の暴落を意味するのだ。

・円安が進む可能性が高いことがコンセンサスになった。つまり、値下がりし続ける可能性が高いことが皆、解っている。(アベノミクスにより)国債は皆が投資している。日本国債を保有し続けて、為替のヘッジをするという方法と、国債を売って、米国債に乗り換える方法があることも、
 皆が解っている。
・多くの人が米国債に乗り換えたら、国債は値下がりする。全員が国債を売り、米国債買いへと動く。しかし、それは更なる円の下落をもたらす。何故なら、国債を売って得た円を売ってドルを買い、そのドルで米国債を買うわけだから、円売りドル買いの動きが強まるからだ。
・こうして、円と国債の暴落スパイラルが始まると、銀行、とりわけ地方銀行は預金の半分を国債で運用している場合もある為、大事な資産が失われてしまうということなのだ。

・銀行などの金融期間は時価会計を使う。国債は金融資産である為、値下がり分を損失計上しなけばならない。結果、日本の銀行全体で資本が減ることになり、貸し剥がしに繋がる。
 これを止める為には、政府は銀行に資本を注入しなければならないが、政府が国債を発行すれば益々、国債が供給過剰になり、金利は上昇し国債の暴落が加速する。
・国債暴落からの銀行危機、政府財政危機スパイラルの始まりとなる。スペインで起きた危機はこれで、財政破綻が起きなくとも経済が破綻するのだ。

・こうして円安を機に、日本は、金融危機から銀行危機となり、経済危機へと陥るのだが、その時に円安を恨んでも、遅いのだ。

◆インフレは望ましくない
・デフレとは、継続的な物価の下落のことで、我々が日常、買うものの値段が下がり続ける、それがデフレである。銀行は貸出先がなくて困り果て、国債をかっている。
・エコポイントは最高の反面教師だ。2011年、12年に世界に名だたる電気メーカーが大赤字になった。ソニー、シャープ、パナソニックが典型だ。共通しているのはテレビ事業の大赤字だ。
 エコポイントがなければ普通に売れていた部分も売れなくなってしまい、トータルではマイナスになったのだ。
・ファッションブランドや百貨店でバーゲンばかりやっていると、バーゲンの時以外は誰も買わなくなってしまい、トータルで売上が減ってしまうのと同じなのだ。

・物価が下落する結果、景気が悪くなるのではなく、景気が悪いので、需要が弱く、その結果が物価の下落となるのだ。ユニクロは価格が安いから売れているのではない。ユニクロはブランド力があり、ファストファッションとしては相対的に価格は高めで、利益率は極めて高いのだ。ユニ
 クロはもっと値下げ出来るが、しなくても売れるので、あえてしないのだ。

◆やはりインフレは起きない!
・日銀のトップ、総裁をはじめ、議決権をもつメンバーは国会で決める。国会同意人事といって、国会が承認しなければ、人事は認められない。よって、任期は5年だが、最初に選ばれる時には、政権与党の意向に沿った人が選ばれるのだ。
・日銀は、ゼロ金利のエキスパートであるだけでなく、量的緩和というものを編み出し、金利が下げられない状況でも、金融緩和を拡大し、景気刺激を試みた。

◆それでもリフレを主張するリフレ派は何故インフレが好きなのか?
・量的緩和とは何か?
 目標金利を引き下げる金融緩和が普通の政策だが、ゼロ金利では下げようがない。そこで、ゼロ金利でいくらでも短期の資金を銀行が日銀から借りられるようにしたのが、オリジナルの量的緩和であった。
・今の量的緩和は、日銀が金融市場で買い上げる金融商品の量を増やすということなのだ。

◆リフレ派の理論的誤り!
・イギリスは例外的な国で、世界に所有する鉱山等の採掘権、利権を種に企業を経営し、それに依存した経済になっている。世界の金融資産だけでなく、実物資産も押さえる。それで世界で存在感を持ち、同時に長期に渡って食っていくという戦略なのだ。
・よって、金利と為替がイギリスにとっては生命線で、その重要性は他国とは次元が違うのだ。だからユーロを使うことが出来ず、景気の波よりも資産価値の維持の方が重要なので、金融政策を共通で使うことが出来ないのだ。

◆円安戦略はもう古い!
・通過は高い方が基本的にその国の経済にはプラスになる。自国の資産は殆どが自国通過に連動しているので、国富の増大とは通過価値の上昇なのである。自国の国富、国の経済を動かす資産を守る為には、自国の通過が値下がりすることは最も避けなればいけないことなのだ。
・日本よりも成熟度が低い国(韓国)、資本蓄積の低い国は資産が少ない為、通過安で失うものがその分少ない。よって、思い切り通過安競争が出来るのだ。

・工場における労働コストは、サービス業でなく製造業においても、全体のコストの1割に過ぎない。賃金が半額であっても、トータルコストの5%しか変わらない。5%の為に工場の立地まで変えるのはやりすぎで、しかも、それが変化した時に、また移さないといけなくなる。
・ドルで考えれば、工場をどこに置くかは、市場が魅力的で、消費者の近くで生産する消費市場立地で考るか、その地域の人々の教育水準が高く、質の高い労働力があるので、それを利用する為の生産拠点として考るか。どちらの軸を選ぶか、それが重要になる。

◆リフレ政策ではなく何をするのか!
・日本経済にとってひつようなのは、雇用である。人的資本の蓄積をもたらす雇用。そういう雇用を増やす。これが唯一の日本経済の課題である。
・人的資本の蓄積は、若年層にとって重要である。学校を卒業して、最初に働く職場。仕事。これが決定的に重要なのだ。そのひとつの提案は学校を作ること。高専を拡大、充実させるのだ。
・新しい構造の中で、新しい役割を持たせ、新しい働き方をつくる。その為に、政府の政策は動員されるべきなのである。


●● ピークパフォーマンス法定式 ●●
・リフレとは、インフレをわざと起こすこと。リフレ政策を中心とする安
  倍首相の経済政策がアベノミクス。国債が下落すると、日本経済は直ぐ
  に危機に陥る懸念が出てくるので、国債価格には注視が必要だ。円安で
  注意しなければならないのは、国債価格の下落=すなわち名目金利の上
  昇だ。