おひとりさまの老後

  上野 千鶴子  投稿日:2012年11月10日(土)09時35分56秒
 
  ①ようこそシングルライフへ
・65歳以上の高齢者で配偶者のいない女性の割合は55%と半分以上。
・今の世の中、子供は老後の頼りになるか? 今時の高齢者の平均的な暮らしは、夫婦が揃っているうちは、夫婦ふたりで暮らす。片方が要介護になれば、夫婦の間で老老介護をする。そしてどちらか片方に先立たれたら、子供世帯と中途同居をはじめる。
・なじみと付き合いを失い、見知らぬ土地に適応を強いられ、他人の家風に従い、場合によっては要介護の「やっかい者」として扱われる高齢者の暮らしが、幸せなはずがない。
・夫婦世帯で暮らしていた高齢者が、一方に先立たれたあともひとり暮らしを続けるケースが増えている。それが高齢者単身世帯率の増加となっている。
・同居はどちら側からみても、すすんでする選択とはいえないようだ。
・「いっしょに住んだら」という誘いは、どちら側にとっても、悪魔の囁きなのだ。
・同居を開始した途端、せっかくのおだやかな老後を失い、親子関係までこわしてしまうことになりかねない。

②どこでどうくらすか
・誰でも、最後まで自宅で暮らしたいが本音。
・どんなに評判の良い施設でも、自分の意思ですすんで入居したひとは、ほとんどいない。
・もし自宅で介護を受けることが可能なら、そちらを選びたいというのが、先進ケアを実践するひとたちの偽らざる気持ち。
・きょうびの解体屋さんは、家の中にある家財ごと始末してくれる。
◎コレクティブハウス(共同居住型集合住宅)
⇒各自の個室のほか、食堂などの共有スペースをもち、食事づくりや掃除など生活の一部を入居者が共同で行う。
・ケアの質と料金は相関しない、ケアサービスに市場淘汰は働かない、とういうのが、歴史が教える事実。
◎安心して一人暮らしが出来る場、それに対する答えが、コレクティブハウスだ。

③だれとどうつきあうか
・何年も合わずにすむような関係を、わざわざ友人と呼ぶこともない。必要な時にかけつけてくれ、慰めてくれ、経験を分かち合ってくれるからこそ、友である。だからこそ、友人をつくるには努力もいるし、メンテンスもいる。
◎メンテナンスのいらいないのが家族、と思っている向きもあるが、これは完全な勘違い。家族のメンテナンスを怠ってきたから、男は家庭に居場所を失ったのだ。ほうっておいても保つような関係は、関係とはいわない。無関係というのだ。
・友人は利害関係のない、異業種にもとめるべきだ。
・趣味のサークルやボランティア活動に参加すれば、自分とは全く違う暮らし方をしているさまざまな異業種の人々に出会う。
・いつでも泣き言を聞いてくれ、困ったときに助けてくれる人を調達し、かつメンテナンスをしておくこと。友人とは、そのためのものだ。

④お金はどうするか
・ケアという商品な限っては、価格とクオリティが連動しない。
・香典の相場は親族だと3万円~10万円、友人でも1万円~3万円。
・最近の訃報でゆかしいのは、「親近者による密葬を済ませました」という案内。
・ケア付き住宅の使用料、月額12万円~15万円を生活費の目安にする。
・年金プラスアルファのゆとりが必要だが、ゆとりも月に数万円。とんでもない額ではない。
・日本の高齢者の問題は、年金だけでは暮らせないこと。だから年金に加えてわずかでもよい毎月のフロー、つまり収入が入ることが不可欠である。
◎おひとりさまなら、持ち家を誰かに貸して、自分はケア付きワンルームに移るという、玉突き転居もありうる。その差額が収入になる仕組みだ。

⑤どんな介護をうけるか
・介護されることを勇気をもって受け入れること。
◎PPK(ピン・ピン・コロリ)という思想がある。死ぬ前の日までピンピン元気でいて、ある日コロリと逝くのが、老いと死の理想というもの。
・介護されているひと自身、「出来れば介護は受けたくない」と思っているもの。女であれば、この感情はもっと強くなる。
・介護を受けるには、自分の基準よりも、結局、ヘルパーさんの基準にこちらが合わせた方がスムーズにいく、という経験をしている。
◎言わなくてもわかるでしょの以心伝心は、夫婦や家族の間でも禁句だ。夫婦は他人、家族は異文化の集合体。

⑥どんなふうに終わるか
・ケア付き住宅で終身利用権を買取り、お金を使い果たしていれば一番スッキリするが、それでも貯蓄や保険等の金融資産がいくらかは残る。
・自宅は、アジアからの貧しい留学生が共同住宅みたいにして住んでもらえばいい。
・遺言の前にたちはだかるのが「親族遺留分」という壁。個人の意志は遺言に対しては半分までしか及ばないのだ。遺言状にどんなことが書いてあっても、半分までしか効力がなく、残りの半分は法定相続人のところへ逝くよう、法律は親族の権利を守っている。
・何を残すか?・・守ってくれる人のいない墓はいらない。欧米で暖炉の上などに家族写真を飾る習慣がある。家族写真は人の記憶がのこる限り、暖炉の上に飾られる。そして。記憶がのこる間は死者はその人なかで生き続ける。その他人がなくなれば、自分がこの世に存在した痕跡もはがれ
 おちていくが、それでいいではないか。
・おひとり様は、病院や施設にいれば、医療や介護のプロが看取ってくれる。その人たちに「ありがとう」と言って死んでいけばいい。
・大阪には、将来お墓を守ってもらえないひとたちへの、お寺がある。納骨は15,000円から、永代使用料は10万円以上(以上は気持ちということ)と安い。
◎後始末が最後までとりおこなえる程度の費用は、謝礼とともに用意しておく。人が動く費用はただとは考えないこと。


●● ピークパフォーマンス法定式 ●●
安心して一人暮らしが出来る場、それにが、コレクティブハウス(共同居住型集合住宅)。PPK(ピン・ピン・コロリ)という思想がある。死ぬ前の日までピンピン元気でいて、ある日コロリと逝くのが、老いと死の理想というもの。