上司が「鬼」とならねば部下は動かず

  染谷 和巳(かずみ)  投稿日:2011年12月30日(金)10時49分3秒
 
  ・上司である自分が強くなれば、部下を強い社員に育てることも出来る。また、会社も強くなる。上司の強さ、弱さが会社という組織の生死を分ける。上司が強くなることは、責務の第一条件である。

◎幹部に共通する欠点
・社長が幹部社員に抱く不満は、下に甘いこと。幹部は上には厳しい批判の目を持つが、下にはあきれるほど甘い。幹部社員は社長の代行者であり、社長の意思を下に伝えて部下に行わせるのが任務。社長サイドに立って部下と対決する姿勢をとるのが正常。

◎意識改革の入口は言葉から
・フランス語の「メルシー」、英語の「サンキュー」どちらにも過去形はない。世界中のどこにも「ありがとうございました」「おめでとうございました」はないのだ。感謝の気持は常に現在形である。
・会社の為にと思い行動することが、結局自分の人生の幸福となって戻ってくる。

・絵を観たり、音楽を聴いたりすることが重要な理由は、芸術の美を理解し、共感する能力が深まれば深まるほど、花の美しさ、山や海の美しさに感動することが出来るようになるから。

◎上司自身の意識を変える
・心が冷たい上司も良くないが、やさしすぎる上司もよくない。上司が部下に甘くなる原因は、思いやり過剰で言うべきを言わない。自分に甘い。部下は自分が思うほど信頼してくれていない。
・会社は、果たすべき使命と目標を持った戦闘組織である。にも関わらず上司が部下に甘い会社には許してはならない事がある。部下が嫌がっても押し通さなければならないことがある。会社の指導者はやさしいだけでは務まらない。鋼のごとき強い心の持ち主でなければ務まらない。幹部の意識の差が、勝ち組と負け組みの差である。

◎部下から「怖い」と言われる上司
・下に甘い原因は自分に甘い点にある。指示命令・・指示を出す時、課長は「悪いけど、これをやってくれないかな」と優しい言い方をする。部下は気持ちよく仕事が出来る。一方部長は「これをいつまでに仕上げ下さい」と高圧的な言い方をする。「今、忙しい」と言うと、「今している仕事を中断して、先にやって下さい」と一方的に言う。
・会社組織では、課長のようなお願い調の命令では、①命令拒否が発生しやすい、②部下が軽く受け止めて忠実に実行しない、③ミスが多発する。などの危険がある。
◆指示命令は、余計な感情を交えずに「命令は命令として」出す方が賢明。たとえ高圧的になり部下を不愉快にさせるとしてもである。「命令することによって部下を動かす」という上司としての基本的任務を果たしている点で優秀な指導者だということが出来る。

◆部下は不愉快だとか、やる気がなくなると言いながらも、上司としては、厳しく命令をする者を信頼する。遠慮して命令をするのは、上司ではなく、仲間だからである。
◆上司は、特に自分が命令者であるという自覚を強くもたねばならない。
◆嫌われることを恐れずに上司としての任務を果たしてみよ。部下はあなたを嫌うだろう。うるさい奴、いやな奴と思うだろう。露骨に反発する声も出てくるだろう。厳しく叱られたからと言って辞める者もでよう。それで良いのである。それこそが上司に値する。「怖い」と言われるだろう。「優しい人」「いい人」と言われたら侮辱だと思うべきだ。
◆部下から・・「怖い」と言われたらそれが上司の勲章である。

◎上司と部下の関係の骨格を崩すな
・上司は部下を動かして仕事の成果を上げることが任務である。部下は、指示命令に従う義務、報告の義務、規則に従う義務がある。これが上司と部下の関係の骨格である。
・部下は上司が嫌いだろうと、信頼できなかろうと命令には従わなければならない。上司は部下に嫌われることを恐れて権限行使をためらってはならない。部下は義務を果たさなければ処罰の対象になる。同様に、上司は部下を動かすという義務を果たさなければ処罰される。これが組織のルールである。

◎組織人として上司がなすべきこと
・会社が人を育てる。社員の意識を変えて一人前の人間にするには・・上下のけじめを叩きこみ、ルールを守らせ、秩序と規律を教える。礼儀を守り掟に従わせる。嫌われるのは覚悟でうるさく指導する。
・やさしく諭しても社員は変わらない。長期間だらけていた社員を変えるには強制により変えるしかない。問答無用で強制する。社員がそれに耐える。この強制に耐え切った人だけが、健全な意識をもつ一人前の人間になる。
・部長、課長は管理監督者である。管理監督者の任務を果たすには、どうしても部下に強制せざるを得ない。自由に放任しておけば責任は果たせない。
・権威がなくとも上司は部下を動かさなければならない。権限で動かすのだ。権限行使は強制が伴う。部下が嫌がっても強制する。反抗すれば処罰することが必要。

・学校と同じで、会社が管理をやめると、組織が機能しなくなり生産は低下し、たちまち衰弱する。管理は一方的な強制があって成立する。組織の秩序や規律が第一である。意識がどうであろうと「いい」「わるい」をはっきり言い、押しつけ、嫌でも従わせなければならない。

◎命令についての基本認識
・上司に命令している意識はなく、部下も命令されている意識はない。この現実が、上司と部下双方に、一つの謝った認識を植えつけている。
◆部下は、自分が命令されている立場にいると思っていない。上司は命令によって部下を動かす立場にいると思っていない。両者の関係を決定付けるのが「命令」というものだという基本認識をお互いがどこかへすっ飛ばしてしまっている。これにより無駄や弊害がはびこる。
◆上司には・・命令によって人を動かす権限、その重さに対する認識がなさ過ぎる。自分の考え通りに人を動かすということは、会社においては力がない者にも許されるのだ。自分が上司であることを自覚し、その役割に、命令によって部下を動かす権限を付与されていることを強く認識しなければならない。
◆上司は命令のルールの上に存在している事を片時も忘れてはならない。

◎どうすれば統率力が伸ばせるか
・統率力とは、人を自分の考え通りに動かして目的を達する能力である。
・気の弱い上司は、仲良くやっていきたいという気持ちに負けてしまう。この気持ちに負けなかった男、鬼のごとく部下を使い切った指導者だけが、会社を発展のレールに乗せる事が出来る。人の上に立つ人は、ワンマンでなければならない。

◎部下の反発を跳ね返す行動力
・言った言わないの問題は、いかなる場合も伝える側(発信者)が悪い。受けてに罪はない。これが、言った言わない問題の最低原則である。
◆間違った注意をして部下の反撃にあって恥をかく。これを恐れてはいけない。ともかくその場で直ぐ注意する。どう切り出そうかなどと考えないで先ず口を開く。十言うべきを三だけ言って様子を見たり、遠慮してソフトに言ったりしてはならない。
・部下の反発、抵抗が恐ろしくて言うべきことを言わないなら、部下の信頼を失うだけでなく、上の信頼も失うことになる。
・上司の顔色を見て、意見をクルクル変えてはいけない。迎合盲従する管理者は、上からも下からも信頼されない。

◆あなたは自分の部門の運営責任者である。たとえ社長の意見でも、反対すべきはする。それでも社長が決定したら「はい」と言って従う。「納得できない。しかし命令だから従う」これが行動力ある管理者の姿勢。

◎考える力を伸ばす具体的方法
①大量に本を読む。②朗読と暗記(理解力と表現力を飛躍的に伸ばす秘訣)。③大量に文書を書く。(量が必要。1日2千字書く。)

◎部下の育成
・社員教育の目的は、①基本的な躾と習慣づくり、②思考力、理解力、表現力の養成、③意識の向上(思想教育)の3点である。社員教育をどのように進めていくかを考える際には3つの目的を頭に叩き込んでおかねばならない。

◎会社の空気の色で活力度が変わる(安岡正篤氏の発言より)
・液体空気で冷却したガラス管の中に息を吹き込むと、息の中の揮発性物質が液化する。安定した精神状態の時は、その液は無色に近いが、怒っている時は栗色の粕が残る。この粕をネズミに注射すると数分で死んでしまう。一時間の激しい怒りにより造り出された栗色の粕は、人間80人を殺す猛毒なのである。その人の吐く息が空気中に散布されることによって、他人をも病気にし死に至らしむる。

◎強者の条件
・上杉鷹山は火鉢の灰の中の小さな火種を見て、これがあれば大きい火に出来ると気付き、心ある藩士に藩政改革を説いて同士を増やしていった。
・足を使わなければ足が弱くなる。噛まなければ歯が弱くなる。頭を使って考えなければ、考える力が衰える。これを医学用語で「廃用性萎縮」という。使わなければ衰えるのだ。


●● ピークパフォーマンス方程式 ●●
◆指示命令は、余計な感情を交えずに出す。たとえ高圧的でも部下を動かすという基本的任務が果たせる。部下は不愉快でも、厳しく命令する者を信頼する。
◆嫌われることを恐れずに上司の任務を果たすこと。
◆部下から「怖い」と言われたら勲章である。「優しい人」「いい人」は侮辱だ。上司は部下を動かす義務を果たさなければ処罰される。それが組織のルール。
◆部下にはその場で直ぐ注意すること。迷わずに先ず口を開くこと。
 遠慮してソフトに言ったり、言うべきことを言わないと、部下の信頼も上の信頼も失う。