財務3表一体理解法

  國貞 克則  投稿日:2011年 5月21日(土)07時53分52秒
 
  ◎財務3表は繋がっている
・財務3表は、「どのようにお金を集め」、「何に投資し」、「利益をどれくらい上げたか」が理解できる道具。
・B/Sの右側が、「どのようにお金を集め」たか、B/Sの左側は、「何に投資し」たか、PLが「利益をどれくらい上げたか」。
・キャッシュフロー計算書CSでは下から、財務キャッシュフローは「どのようにお金を集め」たか、投資キャッシュフローが「何に投資し」たか、営業キャッシュフローは「利益をどれくらい上げたか」と繋がっている。

◎PLの5つの利益を覚える
①売上総利益(営業利益-売上原価)
②営業利益(売上総利益-販売費及び一般管理費)・・本業からの儲け
③経常利益(営業利益±営業外収益及び費用)・・日常的な経済活動による儲け
④税引前当期純利益(経常利益±特別利益及び損失)・・臨時発生の利益・損失を足し引き
⑤当期純利益(税引前当期純利益-法人税等)・・税金支払い後の利益

◎B/Sの構造
・会社が自分で稼ぎ出す分は「利益剰余金」と呼ばれ、「純資産の部」に入れる。
・PLの「当期純利益」はB/Sの「繰越利益剰余金」に繋がっている。
・「流動比率」をより厳しく見るために「当座比率」がある。当座比率=当座資産÷流動負債当座資産は「現預金+受取手形+売掛金」で、確実に現金化されるものだけを対象にし、『お金払い度』が出せるのだ。

◎1つの取引を2つの側面から見る
・1つの取引を2つの側面かれ見て帳簿に記帳していくのが「複式簿記」。全ての取引を2つの側面から捉え、「資産」「負債」「純資産(資本)」「費用」「収益」の5項目に分類して記帳するのが複式簿記。それが一定の決まりで記帳されたのが「残高試算表」。
・1つの取引は必ず、5つのどれか2つの組合せになり、その組合せにするかのルールが「仕訳」。
・PLとBSを作るためにあるのが残高試算表で、それを作る為のルールが仕訳なのだ。

◎CSの構造
・財務活動によるキャッシュフロー⇒資金調達や返済を表す
・投資活用によるキャッシュフロー⇒設備投資等の現金の動きを表す
・営業活動によるキャッシュフロー⇒販売・仕入等の現金の動きを表す
⇒CSでは、合計が+ならば現金が残っていることを示し、合計が-ならば入るお金より、
 出て行くお金の方が多かったことを意味する。

・営業CF、投資CF、財務CFのどこに分類していいか明確でない現金の動きは、営業CFの「小計」の下にまとめて入れられている。
⇒「利息の受取額(+)」「利息の支払額(-)」「法人税等の支払(-)」が並ぶ。これらはルールとして「そういうもんだ」と覚えるしかない。

・CSには直接法と間接法があるが、実際の企業は殆どが間接法のCS。「間接法CSはPLとBSの数字を使って作るCSだ」と覚えておくこと。

◎財務3表の5つの繋がり
①PLの当期純利益が、BSの「純資産の部」の「繰越利益剰余金」と繋がっている。
②BSの左右の合計は一致する
③CSの一番下「現金及び現金同等物の期末残高」は、現在ある現金の額を示しておりBS
 の「現金及び預金」は一致する
④PLの「税引前当期純利益」が、間接法CSの一番上にくる。
⇒「そういう決まりになっている」と覚えるしかない。
⑤間接法CSの営業CFと、直接法CSの営業CFは一致する。

◎基礎編
・固定資産を購入した時は、購入の処理だけを行い、減価償却費の処理は期末に行う。
・会社設立には設立以前に登記料金等の費用が発生する。この創立費用は初年度だけの費用
 としてPLに計上するのではなく、資産としてBSに計上することが出来る。これが「繰
 延資産」の考え方。
⇒「そうするように決まっている」と考えるしかない。
・繰延資産として資産計上できる費用は、「創立費」のほか、開業準備の為に費用である「開業費」、その他「開発費」、財務活動に伴い発生する「社債発行費」、「株式交付費」の5つに限定されている。
・その支出の効果が1期だけでなく、将来に渡って出てくるものなので、決まりとして5つを覚えること。
・開発費は売上原価もしくは販売費及び一般管理費で処理し、それ以外は営業外費用で処理することになっている。

・繰延資産は、毎期に按分してPLに費用を計上していく。
・経営者は財務会計の内容を熟知し、説明できる能力が不可欠。よって、職位が上がっていくにつれ、管理会計だけでなく財務会計の知識が必要になってくる。
・売掛金は「将来支払いを受ける権利」のことで「債権」と呼ばれる。

・間接法CSの営業キャッシュフローの欄で、売上債権が増加したら(-)、仕入れ債務が増加したら(+)となる。感覚的な想いとは逆のことをする・・と覚えておこう!
・固定資産には財務省令で「法定耐用年数」が定められている。
・創立費は5年以内に償却しなければならない。

・法人税の計算の基準となるのは、会計の「税引前当期純利益」ではなく税法でいう「課税所得」。
・会社は利益が出れば株主に配当できる。したがって当期純利益がそのまま繰越利益剰余金になるわけではない。この理解の為には、BSの「純資産の部」の構造を詳しく頭に入れておく必要がある。
・新会社法で純資産の部は、「株主資本」、「評価・換算差額等」、「新株予約権」の3つに大別。中でも重要なのが株主資本。それはまた、「資本金」、「資本剰余金」、「利益剰余金」、「自己株式」の4つに分かれている。
・資本金は、株主からの出資金で資本金と資本剰余金を合わせて「元本たる資本」と呼ぶ。
・資本剰余金の中の「資本準備金」は、株主から払い込まれた資本のうち資本金に組み込まれなかった金額を表す。
・資本剰余金にはもうひとつ、「その他資本剰余金」があるが、これは減資がなされたり、資本剰余金が取り崩されたりした場合に減少した金額を計上する場合などに使われる。

・利益剰余金は、株主が出資したものではなく、会社が自らの事業活動で稼ぎ出したお金に係るものだからだ。会社が稼ぎ出したお金を社内に留保しておくことを意味し、「内部留保」などとも言う。
・利益剰余金の中に利益準備金があるが、これは法律で義務付けられた内部留保が計上される部分。資本準備金を含めて資本金の4分の1の金額になるまで、会社は配当金の10分の1を利益準備金として積み立てなくてはならない。
・「任意積立金」は、会社が稼ぎ出したお金のうち、会社が株主の意志として任意に積み立てることを決めたものをここに計上する。
・会社の利益は配当金として外部に分配される部分と、利益準備金や任意積立金として社内に留保される部分に分けられ、どちらにも入らなかった部分が、「繰越利益剰余金」でPLの「当期純利益」と繋がっている。

◎決算書を読み解くツボ
・ROE(自己資本利益率)=当期純利益÷自己資本
・ROA(総資本利益率)は総資本経常利益率と同じ考え方
⇒計算式は営業利益÷平均総資本(期首の総資本+期末の総資本÷2)。6%以上が優良。

・BSは「経営者の成績表」と言われるが、利益剰余金を見ればその会社が過去に利益を上げてきたかどうかが分る。
・CSのプラスは会社にお金が入ってきていることを、マイナスは会社からお金が出て行っていることを表している。

◎発展編
・退職給付会計とは、将来支払われるであろう退職金を期間按分して各期の費用として計上するというもの。
・退職給付引当金は将来支払わなければならない負債、しかも1年を超えて支払われる負債なので固定資産に計上する。

・時価会計とは、金融資産と金融負債の一部を期末の時価に基づいて評価し直す会計のこと。
・売買目的有価証券とは、長期保有が目的ではなく、短期間で売買して利益を上げるために保有する有価証券のこと。
・投資有価証券とは、売買して利益を上げるのではなく、株式の持ち合いなど長期間保有しておく有価証券のこと。
・関係会社株式とは、子会社や関連会社の株式を指す。
・これら株式等有価証券の取得は資産として計上される。

・時価で評価されるのは、「売買目的有価証券」と持ち合い株式などを指す「その他有価証券」の2つで、売買目的有価証券の差額益はPLに金額が計上され、その他有価証券の差
 損益はBS右側の純資産の部に「評価差額」が直接計上される。
・満期になるまで保有する国債などを指す「満期保有目的の債権」と「子会社・関連会社株式」は、市場価格が変わっても財務諸表では、取得原価が記載されたまま動かない。

・減損会計は、固定資産の収益性が低下し、固定資産にかけた投資額の回収が見込めなくなった場合に適用される。時価会計は固定資産には適用されないが、減損会計では建物や機械装置などの固定資産にだけ適用される。減損会計は評価が下がった場合に帳簿価格を下げるだけで、評価を上げることはない。

・会社が、既に発行されている自社の株式を取得して保有することを「金庫株」という。
・会社が、会社の重要な資本を意味する株式を所有することで、会社の「持ち主」である株主の数が減る・・何やら、トカゲが自分のシッポを食べているような感じなのだ。
・自己株式にマイナスが入るのは、自分で自分を所有していることを「マイナス」で表しているのだ。

・会計では「収益-費用=利益」だが、税法では「益金-損金=課税所得」となる。
・法人税、法人住民税、法人事業税の3税で課税所得の40%程度が徴収される。

・税効果会計とは、税法による実際の税額表記を残したまま、貸倒引当金を計上している会計と整合性がとれるよう税額も同時に表示しておくもの。
・税効果会計で出てくる繰延税金資産とは将来支払ってもらえる権利ではなく、将来税金を減額してもらえる権利だから、将来的に事業が赤字で税金を支払わない場合は、税効果会計は適用できない。

・減資は、株主に金銭の払い戻しをしない「無償減資」と、株主に払い戻しをする「有償減資」の2つに分かれる。
・DES=デット・エクイティ・スワップは「債権の株式化」で、事業再生で最近、よく使われる。


●● ピークパフォーマンス方程式 ●●
・財務3表は、「どのようにお金を集め」、「何に投資し」、「利益をどれくらい上げたか」が理解できる道具。
◎財務3表の5つの繋がり
①PLの当期純利益が、BSの「純資産の部」の「繰越利益剰余金」と繋がっている。
②BSの左右の合計は一致する
③CSの一番下「現金及び現金同等物の期末残高」は、現在ある現金の額を示しておりBSの「現金及び預金」と一致する
④PLの「税引前当期純利益」が、間接法CSの一番上にくる。
⇒「そういう決まりになっている」と覚えるしかない。
⑤間接法CSの営業CFと、直接法CSの営業CFは一致する。