天才!成功する人々の法則

  マルコム・グラッドウェル  投稿日:2010年11月 6日(土)08時54分57秒
 
  本書では、「成功者」に対する「努力と個人的資源が全てを決める」という考え方が間違っていることを伝えている。成功者達の出自を訊ねてこそ、成功者とそうでない者の背後に潜む本当の理由が見えてくる。

◎カナダ アイスホッケー界の鉄則
カナダのアイスホッケー選抜チーム全選手の40%が1月~3月生まれ、10月~12月生まれは10%しかいない。カナダでは単に、同じ年齢の少年を集めてクラスを作る時、年齢を区切る期日を1月1日に設定してるからだ。
つまり、思春期前は12ヶ月の差が身体の発達に大きな違いを生む。身体が大きく、器用な少年を才能ありとみなしがちだ。ところが13歳~14歳になると、熱心な指導と、人よりも多い練習量のおかげで本当に優れた選手となり、上部リーグに入れる可能性が高くなる。
最初の小さな優位点はなくならず、その後もずっと同じパターンが続くのだ。

幼い頃の発育差は、大人になっても解消されずに根強く残る。多くの学生にとって、子供時代の不利は大学に行くか行かないか、そして中流階級で成功出来るか出来ないかの差となって現れる。

早く生まれた選手は、同じ年齢の仲間達よりはるかに有利なスタートを切っている。そしてその好機こそが、選手達の成功に重大な役割を果たした。社会学者のロバート・マートンはこれを『マタイ効果』と呼んだ。
成功とは、社会学者が好んで呼ぶ『累積するアドバンテージ』の結果なのである。

◎1万時間の法則
ベルリン音楽アカデミーで全員の練習時間を調べた。トップクラスの学生の総練習時間は、1万時間に達していた。優れた学生グループでは8千時間、将来の音楽教師レベルの学生は4千時間であった。一流の音楽学校に入る実力を持つ学生がトップになれるかなれないかを分けるのは、『熱心に努力するか』どうかによることを示している。

頂点に立つ人物は他の人より少しか、ときどき熱心に取組んできたのではない。『圧倒的にたくさん』の努力を重ねている。世界レベルの技術に達すには、どんな分野でも、1万時間の練習量が必要ということ。

◎歴史上の世界の富豪ベスト75
1位、ロックフェラー 資産32兆円、2位、アンドリュー・カーネギー 資産30兆円、7位、フォード 19兆円、17位、サム・ウォルトン 13兆円、21位、クレオパトラ10兆円、37位、ビル・ゲイツ 6兆円、41位、ウォーレン・バフェット 5兆円、59位、堤義明 4兆円

75位までの内の20%14人が一つの国の一つの時代に集中している。それはアメリカの1831年から1840年生まれで、今後、待ち受けている可能性を察知するために生まれるには絶好の期間だったのだ。

Q:マンホールの蓋は何故丸い?
A:四角形の蓋だと斜めにすると落ちてしまうが、丸は絶対に落ちないから。

バスケットボール選手にとって身長は十分高ければそれでいいし、大学卒業時に大学院に進めるか否かは精々IQ115程度あればいい。世界的成功を決めるのは、高いレベルのIQの差ではなく、個人のパーソナリティや特性に見られる傾向なのである。このことは、近年のノーベル医学賞を受賞した25人のアメリカ人の卒業大学を見れば解る。
<ノーベル賞受賞者の20%は、ユダヤ人とのデータを別の書籍で学んだ記憶がある!>

ユダヤ人移民は、ヨーロッパで何世紀も前から土地の所有を禁じられてきたため、都市や町に寄り集まって暮らし、都市特有の商売や知的職業に従事していた。70%は何かしら手に職をつけていた。
1900年になる頃には、服飾業界は東欧出身のユダヤ人の手中にあった。ユダヤ人達は「歓迎してくれた国に深く食い込み、それこそ無我夢中で自分達の出来ることに取組んでいたのだ

服飾業界の奇跡が与えた最も大きな影響は、意義のある仕事をしていた家庭で育った子供達の身にもたらされた。つまり、一生懸命働いて、自分の意見を主張し、頭脳と想像力を働かせれば、世界を望み通りに形作る事が出来る、という教訓だった。

ユダヤ人が成功した理由については、彼らが「本をよく読む人種」であることは一理あるがユダヤ人の優位点は実践的な知能であり、自分の父親の姿を見て身に付けた機知(とっさに働く知恵)であった。

◎ホフステッドの次元
オランダ人心理学者のホフステッドは、膨大なデータベースを集め、文化の違いを分析することが出来た。今日、「ホフステッドの次元」は、異文化間心理学のパラダイムとして広く用いられている。

人間は各自が異なるパーソナリティをもっている。だが各人の個性の中には、地域社会の歴史によって受け継がれた、極めて独特な傾向や前提や行動様式が積み重ねられている、ということなのだ。

上記は、航空機事故原因を調査した、権力格差指標の高い国と、飛行機墜落事故の発生率を比較すれば関係性が解る。ブラジル人や韓国人は年長者や地位が上の者に対して、本当に遠慮してしまい、言うべき事が言えず・・・墜落にまで及んでしまうという分析。

◎「数字に強い」は言語で決まる
人間が簡単に記憶できるのは、2秒間で言えたり読めたりするものなのだ。中国語や日本語での数字の読みと、英語ではまったく違う結果が出る。

稲作農業者の生活は仕事の性質によって報われる。ニューヨークのユダヤ人移民が生業とした服飾の仕事ににている。意義のある仕事だ。第一に、努力すればそれだけの報酬が得られる。第二に、複雑な仕事だ。

灼熱の太陽のもと、湿気の高い中国の水田で、1年に3千時間働く貧しい農民が昔から互いに交わした至言がこれだ。『1年360日、夜明け前に起きた者で、家族を豊かに出来なかった者はいない』

◎学力格差は何故起こるか
各国の子供の登校日数は、アメリカ180日、韓国220日、日本243日

成功とは、予測しえる道をたどるものだ。最も頭のいい人間が成功するのではない。成功とは、贈り物である。アウトライアーは好機を与えられた者、そしてそれを掴む強さと平常心を兼ね備えた者だ。
非常に単純だが、見過ごされ易い教訓だ。我々は、選び抜かれた精鋭や叩上げの人間が成功するという間違えた神話に縛られているが、アウトライアーは自然に生まれるものなのだ。

「天才は、本人の才能だけでなく、才能を開花させるに至った経緯が最も重要である」一部の社会学者は、成功を「累積するアドバンテージ」と捉える。僅かな違いが、その後、新しいアドバンテージを生み、そこに乗り遅れた人は成功から溺れてしまう可能性があるのだ。天才になるのに必要な練習期間を、グラッドウェルは「1万時間」と明確に定義する。
1万時間とは、毎日8時間ずつ訓練したとしても約3年半かかる。毎日3時間では9年以上となる。

人間とは、周囲の他者の協力を上手に得る事が出来ない限り、どんなに高い能力を備えていても、成功はおぼつかない。


●● ピークパフォーマンス方程式 ●●
1万時間の法則=頂点に立つ人物は『圧倒的にたくさん』の努力を重ねている。世界レベルの技術に達するには、どんな分野でも、1万時間の練習量が必要ということ。つまり・・結果は努力の量に比例するという事(古市氏の解釈)。また周囲の人の協力なしに成功はない、つまり・・周りの人に好かれないと駄目だということ。(石井裕之氏の解釈)