プロ法律家のクレーマー対応術

  横山 雅文  投稿日:2008年 9月12日(金)16時16分0秒
 
  悪質クレーマーとの交渉は必ず堂々巡りとなり、不当要求を呑まない限り、平行線になる。
だから、悪質クレーマーに長期間関わることには、全く意味がない。

「社長が出てきて謝罪しろ」と言うことはあるが、会社の方針や指示に基づくものであるか顧客の生命、身体に損害・危険を発生させたりした場合でなければ、社長が直接謝罪する必要はない。それ以外は、その担当部署の長が謝罪すべきであり、それで足りる。
先ずは、要求に応じられない理由を丁寧に説明することが必要であり、重要。
それでも引き下がらない場合には、「後日、文書で回答します」と言って書面での回答に持ち込む。

性格的問題クレーマーは、自分の不満を企業により全て解消するのでなければ、絶対に納得しない。企業が困惑し、労力を使い、痛手を受けそれにより自分が溜飲を下げる、或いは、自分の有能感を感じることが目的なのである。

性格的クレーマーは、交渉窓口弁護士移管の通知を出すことでほぼ確実に収束する。

クレーム全般に共通する鉄則は、事実確認が済むまでは、損害の査定等の次のステップに進んではいけない。人間は弱いので、直ぐに保険で対応すれば等、安易な方向に習慣がつきやすいので、注意が必要。
クレーマーの担当者は、現に交渉をするために相手の印象で影響を受け判断を誤り易い。

『客を信用しないのか!』に対して⇒『・・お客様の申告を拝聴致しましたが、そこに不自然なものがあり、合理的な説明を求めても、お客様がそれをされなければ、客観的に見て、そのような申告事実を前提で賠償することは出来ないと言うことです』と返す。

迷惑料を小額でも払って示談する場合は、「本件について今後一切の請求をしない」と言う条項を入れた示談書を必ず取り交わすこと。

事実確認をしなければならない場合は『事実関係の確認と報告については、私が責任者ですので、事実関係についてのお話は、私がお聞きします」と返す。
軟禁状態を回避する為には、相手方支配の領域での交渉はしないこと。長時間になった場合は、『すでに2時間経過しておりますで、本日はいったん引き取らせて頂きます』とか『夜8時以降はお客様宅にいてはならないことになっておりますので辞去させて頂きます』と返す。特に大事な事は、言うと同時に腰を上げること。そうでなければ「おいおい、まだ・・」となってしまう。

電話や面談ではなく、文書による回答は社長名義でなく、担当課長名義であっても、会社がその部署に与えた権限に基づく会社の意志表示となる。

初回接触のポイントは、苦情受付の使命は事実確認なので、激烈な非難には反応せずに受け流すこと。10分もすれば興奮は冷めてくるので、そこを見計らって事実確認の質問をする。

『誠意を示せ』に対しては⇒『金銭での賠償を求めていると言うことですか』とか『金銭の賠償でなければ、何を要求されるのでしょうか』と追い込む。

反社会的悪質クレーマーの場合は、追い返したことで安心せず、直ぐに弁護士に連絡して相談し、対応を依頼すべき。 強引な不当要求の継続は恐喝罪となる。
反社会的勢力に対する注意は、面子をつぶす行為、馬鹿にして笑ったり、小物扱いにすると何をするか解らないので、絶対にしてはいけない。

悪質クレーマー対応の7つの鉄則
①「お手数をおかけして、申し訳ございません」のお詫びから入る。あくまで、責任を認めるお詫びとは違う。 
②最優先で事実確認をする  
③自分がプッツンして感情的にはならないこと 
④合理的説明をしても平行線になったら、もう一度だけ丁寧な言葉で説明・説得をしてみる。 
⑤同じ要求の繰り返しになったら、『社内で検討し文書で回答します』とし
「本件に関しましては、弊社と致しましては、重ねて申し上げましたとおりの対応しか致しかねますので、これをもって最終的なご回答とさせて頂きます」と通知する。
⑥違法行為があれば法的措置にでる ⑦対応を記録し対応の指針とする

刑法
住居侵入罪⇒拒否したが押しかけてきた。退去を求めても居座った。
脅迫罪⇒お前の家を知っている、小さい子供がいるよな、帰り気をつけろなど。
強要罪⇒念書を書かなければ、ネット上のバラスぞ。など、義務のないことを行わせた時。
信用毀損・業務妨害罪⇒虚偽の風説をネット上でひろめた。
威力業務妨害罪⇒店舗前で大声を出され客が入ってこれなくなった。

●●ピークパフォーマンス方程式●●
初回接触では下手に出る必要はあるが、2回目以降では正当理由であるならば当方の主張もする必要がある。また、当方には顧問弁護士がいると言うことは先に伝えておいた方が相手の行動を抑制出来る。基本的な刑法条項くらいは知識としておく。