君を見掛けた
偶然に、必然かのように
離れていく後ろ姿を追い掛けながら
僕の心は激しく戸惑っていた
「久しぶり」と声を掛けた、全身に鼓動が響いていた
振り返った君と視線が合ったとき
周りの喧騒が消え去った
二人ベンチに座って
言葉にならぬ気持ちに戸惑っていた
彼女は綺麗な大人の女性になっていた
僕のいない場所で、大人の女性になっていた
当たり前のどうにもならないその事実に僕は嫉妬した
彼女の左手を一瞬見た
指輪はなかった
ずっと胸にしまっていたことがある
あの日、夕陽の眩しい放課後
教室での僕の姿
君に見られてしまったこと、本当は気付いてたんだ
教室から走り去る足音 微かに聞こえたから
涙の訳を話そうか迷ったけれど
目を合わせてくれない君に、打ち明ける切っ掛けを失ってしまった
あれから君は、
二人でいてもどこか寂しげな表情を時折見せるようになった
ずっとずっと気になってた
勇気が持てなかったこと、謝りたかった
ごめん、と言いたかった
膝に置いた手を見つめる
少し俯いた角度の、君のその横顔が好きだった
あれから君は、どんな人と出逢ったの?
何度笑って、何度泣いたの?
知りたい
大人になった君を知ってしまいたい
どうして僕たち また出逢ったんだろうね