6ヶ月後______。


「朝比奈さんももう一人前だね。」


「そんなことないですよ。みなさんが色々と丁寧に教えてくださるから今やっていけてるんですよ。」


「朝比奈さんは最近彼氏とはどうなの??」


「それが・・『もうおまえといるのは疲れた。別れてくれ。』って言われたんです・・」
「どうして?急に?」


「前々から、私の束縛とかヤキモチにうんざりしていたみたいなんです」


「確かに、この6ヶ月毎日色々話を聞いていると、あんたは過剰な嫉妬心の持ち主だということは、私たちにもわかるわね・・でも、そんな怜も俺は好きだ。とか言ってたんじゃなかったの?」


「心変わりは早いものですね・・」


私は付き合って3ヶ月の彼氏に振られたのだった。(もちろん相手もロボット・・)


彼は、私が東京のこと全然知らない時に色々とオススメスポットを教えてくれたり、仕事の悩みなどを聞いてくれ、6つ年上なのですごく頼れるお兄ちゃんって感じでした。
でも、私はそのお兄ちゃんに甘えすぎていたみたいです。


「この人が私の王子様かな~。なんて思ってたんですが、違ったみたいですね・・」
「朝比奈さんは、何でも焦りすぎてるんですね。きっと。」


「そうだよ。それに私はもともとあんたの彼は好きじゃなかったから別れてよかったと思うけどね。」


私のことを、「あんた」「あんた」と呼ぶのは須山さんで、須山さんは38歳の一児の母で、外見は10歳は若く見えるほどきれいで、課長からも一目置かれるほど仕事ができるのです。
私は、なぜかそんな須山さんにとてもかわいがって頂いています。
「あんたは、見る目がないのよ。ほんとに・・」
「だって~。。」


須山さんは、私が彼に振られたのには、私の嫉妬や束縛も関係あるとは思うけど、それだけじゃないと言う。


彼は、一人っ子ロボットで兄ロボがいたのですが、不慮の事故に合いかえらぬロボとなったのでした・・

なので、ご両親は彼を大事に大事に育てられてきて、幼稚園からお受験をしてずっと私立の学校に通い、30歳になっても、親からお小遣いをもらい家賃を払ってもらい、実家の目と鼻の先で一人暮らしをしているような人で、結婚しても自分の趣味や欲しいものは我慢できず、実家の近くじゃないと嫌だと言う人で少し私も心配になり須山さんには全部話をしていたのでした。
なので、少しマザコンの気もあるから、将来必ず苦労すると私にいつも言っていたのだ。


「私は、男の人の見る目がないのかな?」


「佐藤さんはどうやって、彼氏さんと出合ったのですか?」


「私は、前の派遣先の社員さんなのよ・・付き合いだしたのは、私が辞めると決まってからだけどね。」


「おぉ。社内恋愛ですか??ドキドキですね。」


「そう?ここの会社もそんなこと日常茶飯事だよ。」


「そうなんですか?」


私は、まるで中高生のお昼休みのガールズトークの醍醐味である恋愛話にすごい食いついてしまった・・



「朝比奈さんはこの会社に入って半年くらい経つよね?声かけられたりしないの?」


「私はぜんぜんないですよ。。」


「きっと、朝比奈さんはかわいいから彼氏がいないわけ無いって思っているのね。」


「そうですか?私の存在なんてだれも知らないですよ・・」


「ここの会社は、理系の人ぞろいだから、声をかけるってことは彼らにとって、とてつもない勇気が必要なのよ。朝比奈さんは、彼たちからするとレベルが高か過ぎるのかもしれないね。」


「私の彼も理系なのよ、付き合って6ヶ月間は手もつながなかったわよ。じれったくて私からつないじゃったわよ。」


「でも、理系の人は浮気しないとか言うわよね?佐藤さんも彼もそんな感じ?」


「そうね。浮気はまずないね。でも、私の彼はもっぱらロボットにしか興味ないから、ロボットにヤキモチやいちゃうときがあるわね。私が髪を20cm切っても気づかないのに、新作のロボットにまつげが付いた事にすぐ気づくんだもの。あきれちゃうわよ。」


「あはは。」


「そのうち、朝比奈さんにもいい彼がみつかるわよ。」


(佐藤さんの彼は私がロボットって事に気づくのかな・・)






「素敵な所ですね。会社の中にこんなスペースがあるなんていいですね。」
「ここでご飯食べている子は、ほぼ派遣社員なんだよ。」


私は、あたりを見回した。みんなそれぞれお仲間とお弁当を食べていた。


「あのーー。そこのソファで寝ている男性は・・・?」


私の目に飛び込んできたのは、華やかな女子高のカフェのイメージのなかに、死んだように眠る私服の男性だった。しかも、一人二人ではなく、思い思いの場所に、思い思いの格好で眠っている男性が10人くらいいたのだ。


「ああ。あれはここの会社の社員さんだよ。」


「社員さんですか?仕事中にこんな所で寝ていてもいいんですか?」
「いいのよ。この会社はね。」


私は、単純に「羨ましいな~。」と口にした。


「え゛っ。その言葉はまだ早いかも・・」


私は、どう言う意味かわからなかった。


「先に食べててよかったのに~」


5分ほどして、同じ部署の4人の方がやってきた。


「朝比奈さんですよね?自己紹介するね。私は佐藤です。わからない事があれば何でも聞いてね。」
「私は、須山です。どうぞよろしく。」
「私は加藤です。趣味はアニメを書くことです。」
「加藤さんの絵は本当にプロ並みだから今度似顔絵かいてもらうといいわよ。私は阿部です。」
「朝比奈 怜です。よろしくお願いします。」
私は思わず立ち上がり、頭を下げた。
(この中にも派遣ロボットの人いるのかな??)


「ねーねー、今日総務の人たち見た?」
「あはは。見た見た。用事ないのに、こっち来すぎだよね・・」
「新しい子入るといつも見に来るんだから。」
「特に、朝比奈さんみたいに可愛くて、若い子なんか、おじさま達は大喜びよね。」


「朝比奈さんておいくつですか?」
「24歳になったばかりです。」


「若っ!!24歳で派遣なの?もったいないね。。正社員があるのに・・」
「そうですか?私みたいなの正社員で雇ってもらうなんて無理ですよ。」
(ロボットだし・・人間と同じ雇用形態じゃないんだもん>。<)


仕事中は、眉間にシワをよせて働いていた先輩方は昼にはとっても笑顔で優しかった。


「良かったです。みなさん優しいそうな方ばかりで。」
「私たちは、みんなこんな感じだよ。でも、課長には気をつけてね。今詳しく話さなくてもすぐわかると思うけど」
「課長って、あのキャリアウーマンって感じの方ですよね?」
「そうだよ。仕事と酒があれば生きていける人なの。」
「名前は・・・」


「杉森 雅子、通称お母さんだから」
「お母さんですか?」
「お母さんの様に優しいとかじゃなくて、3人の子供を育てたお母さんとは思えないくらい否家庭的という意味よね。」
「土日も会社にきて仕事しているんだものね・・」
「働き者なんですね。」
「いいようにとればね・・・」


それ以上、杉森課長の話にはならず、13時の鐘がなり、午後の仕事が始まった。

7月1日(月)天気は晴れ。


「おまたせしました。では参りましょうか。」
派遣社員には、保護者のように勤務先まで、派遣会社の方が連れて行ってくれて、色々と聞きたいことなどをかわりに聞いてくれたり、教えてくれるのだ。それは派遣ロボにも同じ。


「ここの部署は、女性の方は何人くらいいらっしゃるのですか?」
「朝比奈さんが働くところは、全員女性ですよ。とはいっても同じフロアには男性もたくさんいますよ。」
「そうですか・・派遣ロボットは何人ぐらい?」


「優しい方ばかりですから、安心してください。何かあればいつでも言ってくださいね。出来るだけの対応をされてもらいますから。ロボットは内緒にしている人を合わせて3人くらいですかね。」
「ありがとうございます。」


派遣会社の、杉本さんは背が高く、少し長めの髪に細い体がより細く見えるスタイリッシュなストライプのスーツを着こなしていた。
出身は長野だったかな。大学が東京でそのまま派遣会社に就職したとか・・
(杉本さんて、イメージしていた東京の男性と違う。話し方も優しいし、かっこいいのに気取っていないし。素敵だなぁ)



「みなさん、少しよろしいかしら。こちら新しく入られた方で、朝比奈さんです。」
「自己紹介、簡単にお願いできる?」


「はいっ。あの・・朝比奈 怜と申します。がんばりますのでよろしくお願いします。」
パチパチパチパチ___。
(ロボットということは聞かれたら言おっと・・)



「じゃあ、席はここね。彼女が、引継ぎの松本さん。彼女から色々と引継ぎしてもらってください。私今少し忙しいから、10時頃から説明するから、それまではこの会社のパンフレットでも読んで、松本さんとお話していていいわよ。」
「はい。」
松本さんに、更衣室に案内されロッカーの鍵を受け取り荷物をしまった。


この部署には、女性が8人と、キャリアウーマンって感じ女性が1人いた。



松本さんの席の横には、小さな丸椅子が用意されており、私はその丸椅子に座ろうとした。
「朝比奈さんはこっちの椅子に座って。私がこれに座るから。」
「えっ。いいんですか?」
「今日から3日しかない引継ぎ期間で覚えてもらうには、今日から実践してもらうしかないんですよ。私の時間がなくてゆっくりお伝えできないかも知れないのですが、よろしくお願いします。」
「こちらこそ。色々とご迷惑をお掛けするかもしれませんが、よろしくお願いします。」
私はペコリと頭をさげた。
(優しそうな人だな、そして何より頭よさそう・・私でここの仕事勤まるのかな)


そして、私たちは業務の引継ぎに入った。
「ここの仕事は、主に総務と経理の仕事なの。経験ある?」
「前に会社で、少し経理は経験しているのですが・・・簿記の資格とかはもっていません・・」
「そっか。大丈夫だよ。簿記の資格とはとくにいらないから。基本的なことがわかっていれば、後はここの会社独自の経理システムに投入していくだけだから」
「そうですか・・」


(システムの予備知識はすでにインポット済みだったが、能力は徐々に使っていく事が人間との共存社会のルールのひとつであった)


キーンコーン カーンコーン

「お昼行こうか。」
「はい。」
12時のチャイムが鳴っても、私と松本さん以外の方は席を立たなかった。
「みなさんは行かれないのですか?」
「すぐ来るから先に行きましょ」

会社の最上階にはリフレッシュルームと言う名のフリースペースがあった。
丸い机や四角い机があり各机には4つ椅子が付いている。
8人テーブルは打合せが出来るよう、ブースで区切られていた。
ガラス張りで、眺めもよくセルフカフェのような所だ。