僕は、今まで多くの審査請求については関わってきたが、
ただの一度もその詳細については語った事はない。
究極の個人情報だからだ。
でも、今回は本人の性別・僕との関係はもちろん、
一切特定出来ないようにして、
なおかつ、本人の同意を得た上で、その骨子を公開しようと思う。
こういうケースで、不服申し立てが認められるのは非常に珍しいからだ。
同じように困っている人の参考になればいいと思っている。
具体的に言うと、
この人は前医にパーソナリティ障害という診断名をつけられてしまっていた。
パーソナリティ障害では、原則、
障害年金を認められる事はまずない。
だから、社会保険労務士等の専門家にも相談したが断られ、
やむなく僕がボランティアで引き受けた。
今回の争点ははっきりしていた。
「パーソナリティ障害という診断名を完全に否定できるかどうか」だ。
この点については、現主治医が徹頭徹尾否定して下さり、
精神病圏である事を主張してくれた。
多分、審査官から何度も文書での照会や、
審査官によっては平気で診察中に嫌がらせのように
電話をかけてくるケースもあると聞く。
この現主治医はその都度、誠実にご自身の信念を曲げる事無く対応して下さり、
結果的に今回の結果につながったと思う。
その医師としての真摯な姿勢には感謝すると同時に、
心より敬意を表したいと思う。
パーソナリティ障害と診断されて、その生きづらさや、
年金の申請すらも諦めている方も非常に多いと思う。
それらの方に、少しでも参考に何かの手助けになれればいいと思った。
さすがに決定書の謄本は無理だが、
僕が書いた(実際は僕の名前は一切出していないし、
もちろん1円の報酬も貰っていない。
ご本人のつらさを一番理解しているのはご家族であり、
今回の請求代理人もご家族の人の名前で書かせて頂いた。)
審査請求の趣旨の全文を公開する。
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「審査請求の趣旨および理由」
明らかな事実誤認と、当方との見解の相違があるため、
個別に列挙し、
それに対して明確な反証を求めるものとする。
1)前医の受診状況等証明書について、
傷病名が「境界性パーソナリティ障害」とあるが、
これは現医では完全に否定されている。
元々、パーソナリティ障害という概念自体そのものが傷病名と言えるかどうか、
甚だ疑問である。
専門医の間でも同じ病態の人を指して、ある専門医は気分障害だと診断し、
ある者は発達障害だと診断し、ある者は統合失調症と診断し、
パーソナリティ障害など存在しないという医師も居れば、
操作主義といわれる診断法をもって、
安易に「パーソナリティ障害」の診断名を乱発する医師も居る。
鮮明な記憶を例にとれば、
大教大付属池田小学校事件の宅間被告がいい例である。
繰り返しになるが、現医においての裁定請求者の診断名は「気分障害」であり、
前医の「境界性パーソナリティ障害」という診断は事実の誤認である。
万が一、現医の診断名を否定するのであれば、
その客観的な理由を説明する事を求める。
2)不支給の理由に、
「請求のあった傷病名、気分障害について、
請求日である平成22年○月○日現在の状態は、
国民年金法施行判別表に定める程度に該当していないため、
支給されません。」とあるが、
不支給の理由があまりにも具体性に欠ける。
裁定請求者は診断書に記載の通り、
長年にわたり気分障害という精神の障害により
日常生活に著しい制限を受け、
「働く事も出来ない。」 「家から出る事も出来ない。」
「他者とのコミュニケーションも全くとれない。」という状態が続いている。
病院にも自力ではなかなか行けず、
体調のいい時を見計らって家族が何とか連れて行く、
それすらも無理な時は、
薬だけでも2週間に1度家族が取りに行っているのが現状である。
また、なかなか本人が他者とのコミュニケーションが取れない事から、
診断書には記されていないが、
常に死に対する要求とは背中合わせであり、
過去にも首を吊り、後数分、発見が遅れれば死に至った自殺未遂も起こしている。
(この点に関しては、現医から診断書に「自殺企図」「希死念慮」を
加筆してもよいという同意を得ている)
また、今回の不支給の決定を知り、
そのショックから衝動的に○月○日の日に自殺未遂も起こしている。
本人の苦しみももちろんの事、
我々家族も片時も心の休まる状況がないというのが現状である。
この間、我々家族は多大な犠牲を強いられてきた。
更に、今後も全く見通しが立たない状態である。
この状態を精神障害といわない、生活障害といわない、
障害基礎年金の程度といわないというのであれば、
一体どのような状態を指して精神障害というのか極めて疑問である。
最後に、今回の不支給の決定は裁定請求者本人はもとより、
我々家族にとっても、
到底受け入れられるものではない。
もしも今回の審査請求で納得のいく説明が得られないのであれば、
引き続き2審、
それでも駄目であれば民事訴訟の場で徹底的に争う所存である。
※(添付資料)・・・加筆診断書
代理人 ○○ ○○
(請求者の父)