私はいま、先日紹介したボクシング漫画「仮面ボクサー」の作者、島本和彦が書いた「挑戦者~チャレンジャー~」を読んでいます。



この漫画の主人公の闘う階級がウェルター級。


作品内でもウェルター級がいかに大変なクラスかという事を説明する場面が出てきます。



内容は高校生の主人公がウツウツとした気持ちを抑えられずに街の喧嘩屋をしていたところ、ボクサー志望の青年に返り討ちに合います。



それを期に主人公は


「ボクサーという人種がみな強いのか」‥?



と興味を持ちます。

このあと後楽園ホールへ乗り込み、

主人公はなんと!勝ち名乗りを受け引き揚げて来た選手に通路で強打を喰らわしノックアウト 笑


選手の関係者にボコボコにされたところでジムのトレーナーに素質を見初められる‥ 


という冒頭からの始まりで単行本全4巻なのですが、そのあと訳あって子供の頃に離ればなれになっていた新進気鋭のウェルター級選手である実の兄を目指して同じ階級でブロデビュー。



そして兄との宿命の対決…



そこに絡むウェルターという階級の難しさ、厳しさを盛り込む興味深い内容で、先の仮面ボクサーと違いこちらはシリアスな展開でグイグイ引き込まれて行きます。



惜しむらくはハナから四巻という短い中で無理矢理まとめようとしていたのか、ひとつひとつの試合が結末すら端折る位に先を急いでいる点です。


結果的にクライマックスへ行くに従ってジェットコースターの様に展開が速くなり、物足りなさが残ってしまうという完成度になってしまっているのが実に残念!



もし、はじめの一歩とは言いませんが、あしたのジョーやがんばれ元気のせめて半分でも続けていれば…

きっと歴史に残る名作となり得た作品だと私は思いました。



そんな挑戦者~チャレンジャー~でも取り扱われたウェルター級。

この作品が描かれた当時からなにも変わらず、その遠き頂まで到達した日本人は2024年現在も未だ存在しません。



思えば私がボクシングを観始めた1988年。

つまりこの作品の連載開始と同じ年ですが、

尾崎富士雄がアトランティックシティでマーロンスターリングに善戦したあの試合が日本人で一番頂上に近付いた日でした。



当時はボクシングの事をよく知らなかったので

それほど貴重な事とはまったく知らず、その一年半後に日本で実現したマークブリーランドへの挑戦に至っては、


何故尾崎なんだ!?日本には尾崎しか居ないのか?


とあまりの差に愕然とし、その後見返す事も無く最近まで来てしまいました。



尾崎の挑戦から35年。

その間、お得意の日本開催はおろか挑戦でさえ、ウクライナで挑んだ2009年の佐々木基樹が唯一で、尾崎から佐々木まで実に20年も掛かっています。


そこからさらに15年経過しましたが、「挑戦者~チャレンジャー~」のなかのセリフの重味はまったく変わっていません。



相変わらずウェルター級は日本人にとって別世界のままです。


認定団体が増え、世界チャンピオンが常に複数当たり前に居る様になった現在でも挑戦すら容易ではない、ある意味白井義男がダドマリノに史上初の世界挑戦をした頃の様にチャンピオンベルトは遠い。



しかし、これこそが本来の世界タイトルの遠さ、高さなんじゃないだろうか?


こうも思うのです。



もはや現在の軽量級中心で、最短世界奪取や複数階級制覇や防衛戦でいくら強かろうと、

いくら巧かろうと、

パウンドフォーパウンドで1位になろうと・・・


驚く事も感激する事も失くなった私ですが、

ウェルター級やスーパーミドル以上のクラスに挑み続ける日本人ボクサーを見つめる目だけは、ボクシングを初めて観た、尾崎富士雄にやるせなさを感じたあの時と同じピュアな心で観る事が出来ます。



そんなクラスに挑み続ける但馬ミツロ。



ボクシングファンの中には誹謗に近い言葉を浴びせる人や、冷ややかな目線の人も居ますが、先日の試合であのランクの選手に敗れて不甲斐ないと思ったどころか、私はそれほど世界が遠い重量級に嬉しくなりました。



ミツロも、ウェルター級初の日本人世界チャンピオンになる!と大言壮語する佐々木尽もカッコいいです。



ウェルター級で世界タイトル挑戦まで辿り着いた歴代日本人ボクサー。

辻本章次→ ピピノクエバス。

龍反町→  カルロスパロミノ。

尾崎富士雄→

マーロンスターリング & マークブリーランド。

佐々木基樹→  ビチェスラフ・センチェンコ。



僅か四人!

しかも相手が歴史に名を残すチャンピオンがほとんど…

というとんでもない舞台に挑んで来た男達に敬意を。

そしてこれから挑戦しようという若きボクサーに心からの応援を贈りたいと思います。




まさに「挑戦者~チャレンジャー~」!!!