力石政法のドラマチックな逆転勝利がいまだ余韻さめやらぬ‥といった感じです。



その力石。イタリアという日本のボクサーには縁の薄い土地へ乗り込んでの試合でした。

 


そこで今日は、私がボクシングを観始めた頃すでに言われていた事で、今に至るまでクエスチョンとして残っている日本ボクシング界に渦巻くの格言のなかのひとつ


「敵地で勝つ事は至難の業」。



これを書いてみたいと思います。



私が観始めた頃すでに使い古された表現で、記憶のなかで一番最初に目にしたのは1988年3月号のボクシングマガジン(私が初めて買った号)に載っていたマーロン・スターリングVS尾崎富士雄のWBA世界ウェルター級戦でした。



何も知らなかった私は

「海外で勝つのはそんなに大変なのか」?

と思った位でしたが、その後色々な過去の試合やリアルタイムで日本人ボクサーが海外で敗け続けているのを知り、外国で勝つ事の難しさを知りました。



と同時に、日本のボクサーはちょっとひ弱過ぎるんじゃないか?

という疑問も沸いて来たのです。



何故そう思ったのかと言えば、ちょうどその時期にJr.ライト級(当時呼称)のチャンピオンにブライアン・ミッチェルが君臨していて、南アフリカ人のミッチェルが自国のアパルトヘイト政策で試合出来なくなっていた為に海外防衛戦を余儀なくされる状況で勝ちまくっていたのを雑誌のリポートでよく見ていたからです。


もちろんミッチェルが名選手だったというのはありますが、日本に来るチャンピオンが当たり前の様に防衛成功して帰国‥

というのを目の当たりにしていた当時の状況もあり、私は何故海外の選手はこうして簡単に勝つのに日本人ボクサーは海外では勝てないのだろう?


と常々思っていました。



特に当時はそもそも日本人が世界戦で勝てない状況だったので余計に印象が加味されていたと思いますが、その後現在に至るまでの状況を見ても海外での勝率は決して高くないのではないでしょうか。


特にタイ国における日本人の世界戦勝利が有史以来いまだに暫定の江藤光喜だけという有り様です。



もちろん私も長い事ボクシングを観ているので、海外試合が公正な状況下でない事が多いのは知っています。

古くはユーリや浅川誠二の韓国での話なんか未だ印象に強いですし、一昨日のイタリアも中々でしたから。


それほど海外ではナショナリズムが強烈で、あらゆる手を使ってでも自国の選手に勝ちを付ける事が当たり前なんだと分かってはいるつもりですが、一方ではそれにしても… とも思うわけです。



ではそれ以外は何?

と思いつくままおおざっぱに挙げてみると、



①日本では到底スポンサーが付いてくれない選手による噛ませ犬的な挑戦。

韓国が強かった時代の日本人挑戦者にはこのケースが目立っていた様に感じました。



②チャンピオンが強くて人気があり、日本に来てくれないレベル。これも向こうから見れば上に該当するから同じか。


あとは勝てそうな試合や選手は日本国内での挑戦や防衛戦を行うのでそもそも海外で試合をする必要がない。

それにプラスして、


③軽量級より上のクラスでの挑戦が多い。

海外で需要の少ない軽量級は試合してもお金にならないし、日本のプロモーターは大盤振る舞いしてくれるから喜んで来日するけどそれ以上のクラスとなると②と合わさって交渉も大変…


そんなところでしょうか。

強いとされている日本人ボクサーでタイに乗り込む奇特で向こう見ずな選手も中々いませんし、欧米となるとフェザー級以上の比率が多いでしょうから。



う~んこのフェザー級以上… 

これはまた海外で勝つ事は至難の業にならぶ



「フェザー級から上は層が厚いから勝つのが難しい」


というむかしから続く格言がある訳なんですが😅



で、フェザー級から上は層が厚いから勝てなくてもしゃあない

って当たり前の様に皆さん語るけど、この言葉を聴くたびに出たよコレ。なんなん?

と。



つまりフェザーから下は層が薄いうえに海外では不人気だからはるばる日本に選手が来てくれる。

そのうえ至れり尽くせりの整った環境なんだから勝って当たり前って事なんですか?

それで無敵だなんだと喜んでるの?

と、素直に私は思う訳です。


コロナ禍の時に日本人選手はジムで普段通りの練習をしているのに来日選手はホテルの部屋で缶詰めにされた生活を強いられていた時などは特にそう思いました。なんじゃそら? と。



ですので力石は世界タイトルではありませんでしたが、スーパーフェザー級という階級とあの環境での快挙は本当に大したもんだ!

と心から喝采を送りたくなりました。



日本人が地元の日本で海外から呼んだ選手に勝つというのが当たり前になった現在だからこそ余計にその価値を大きく感じます。


ちなみにもし私がボクシングビートの編集長でしたら来月号の表紙は間違いなく力石です 笑

日本ボクシング界は早急に毛色の異なるあたらしいヒーローを育てなければなりませんから。

力石にはその素養が充分あります。



話が逸れましたが日本の人口が減り、国力下がって来ているいまより先… ひょっとしたらいよいよ軽量級でも海外の選手を呼ぶ事が出来なくなる時代が来るかも知れません。


私は現時点でも地上波から消え、これだけ知名度が低くなった日本の世界王者がよく国内で防衛戦出来ているよな…

と思っているので、そう遠くない将来にはフィリピンや中南米選手の様に他所で闘うのが当たり前になるのでは?

と予想しています。


その頃になれば日本のジム制度もいまより淘汰され海外デビューをする選手も増え、いまとはまったく違う景色になっているでしょうね。



そうなると上記の格言もなかったの如く霧散するのかも‥

と、たとえ今より世界への道が険しくなる事になったとしても、そんな光景をちょっとばかり期待している私です。


先のブログと重複しますが、いまの世界王者クラスの日本ボクシングに一番欠けていて一番必要なものを力石は気付かせてくれました。


やはりね、勝負事は勝つか負けるか分からないから面白いし興奮しそして記憶に残り続けるんです。


韓国のボクシングファンも30年も前にいまの私と同じ様な事を想っていて、やがて離れていったのかな・・・