関東のはずれ街の、とある駅。
休日の終電間際の閑散としたホームに、私はいた。
足音の良く通る寂しいホームで見つけた、一組の若い男女。
年は20歳前後と思われる。
友達以上恋人未満の関係なのであろうか。
あと半歩だけ進めば、お互いの体が触れ合う。
そんな距離で並んで立っていた。
ホームの屋根を支える柱の陰で。
男は柵に片肘を乗せてもたれ掛かり、女は柵に手を添えて。
私が気付いてから数分。
二人に会話はなかった。
女は時おり首を下に向けていた。
足はずっと地面に”のの字”を書いていた。
何かを言いたそうで、タイミングを伺っている…
そんな風にも取れる女のそのしぐさが、何とも初々しかった。
”のの字”を書き終えたかと思うと、首を上げて女は口を開いた。
「もう…時間だね。」
「あ?…うん…。」
そっぽを向いて生返事をした男に、女が半歩を踏み出した。
奥から緩やかにカーブを描き、ホームに向かって来る電車。
乾いた目に飛び込んでくるライトがまぶしかった。
二人は光に溶けてシルエットとなり、そのまま重なって…
擦れ切った私の心に深く染み入ってくる、感慨深い場面であった。
映画を見ているような気分であった。
(※写真はイメージ)
私は知人を自宅最寄り駅まで見送りに行った帰りだった。
知人は若い。
年代で言えば、先の男女と変わらない。
電車での移動中、知人の将来についての話に耳を傾けていた。
どんな力をつけて、どんな仕事に就くか。
熱心に語る知人の目を、私は直視することができなかった。
自分の中では、20歳の頃と気持ちは変わっていないつもりであった。
負けていないつもりでもあった。
だが、改めて現実を突きつけられると、臆病な私は負けを認めることができず、逃げてしまったのであった。
知人を見送ったあと、何とも言えない気持ちのまま対面した、先のホームの一場面。
偶然重なった2つの出来事。
自身の今後の人生について、色々と考えさせられた一日であった。
若いって、いいね。
