ロッテの佐々木朗投手の契約がかなりずれ込んで成立した。

基本的に選手は個人事業主であり、球団とは事実上の業務提携みたいなものであるので、契約内容で時間がかかるという事は別段問題ではないのであるが、ところが佐々木朗投手が早期のメジャー移籍を希望したという報道が出た事で騒動となった。

 

25歳未満でポスティング利用の場合は、アメリカメジャーリーグの規定で青田買い禁止のルールが決められており、金額の上限総額500万ドルまでと決まっている。

つまり2026年からポスティングでない場合は、球団の実入りが1億円に届かないのではとされ、大きく減るという事になるのである。

 

その時に球団の実入りというワードが出て来たのであるが、この点で不思議なのは「なぜFAの人的補償廃止」の人達は、ポスティングでは球団の実入りに言及するのに、人的補償の時は保証金の上乗せではなく、ドラフト権の譲渡に固執するのだろうか?

という点である。

 

ドラフト権の譲渡というのはメジャーリーグでは行われているが、メジャーリーグの場合はドラフトは完全なるウェーバー順であり、順位が最下位のチームからドラフト指名が出来る事になっている。

この場合ドラフト権の譲渡が行われても、各球団の指名順に影響はないので比較的譲渡というのはすんなりと行きやすいし、元球団はそのFA選手にQOを提示する事が必要になっている。

提示がない選手の移籍には譲渡は発生しないが、提示の場合は譲渡が発生する。

 

日本にこのルールを導入した場合、ドラフト1位が平等な指名権になっているという点が問題である。

Aランクで1位を譲渡となった場合、譲渡権を得たチームがくじ引きに勝てる確率を上げる為に同じ選手に2票という戦術も利用できる事になる上に、ドラフト権に絡まない他の10球団への影響もこの平等順位の1位譲渡では出てしまう。

なら影響のない2位で良いかとなるかと言われれば、それも難しい。

2位の場合最短指名順で13番目の選手になるし、最奥では24番目の指名である。

24番目の指名であれば、もはや人的補償の29番目の選手の方が有力な選手になる可能性がはるかに高いと思うからである。

ドラフト権譲渡の問題はそれだけではない。

 

新人選手には「契約金」がかかるという点を、FAでのドラフト譲渡権派のプロ野球OBの人達は忘れているような議論をしている。

契約金はドラフト1位で1億円というのが慣例になっているが、譲渡権で指名したドラフト1位相当の選手には1億円出さないのか?という事になってしまう。

仮に両者に1億円出すとなると、普通にドラフト指名するよりもFA移籍された球団は契約金が余計にかかる事になってしまうのである。

 

FAでの金銭のみでAは80%、Bは60%。

金銭+補償の場合はAは50%、Bは40%である。

ドラフト1位の契約金は1億円、2位は7000万円~8000万円が基準である。

 

今年他球団でプレーするAランク、Bランクの選手の例を挙げると。

 

◆カープからオリックスの西川選手。

推定1億2000万→4800万+ドラフト2位指名権

◆西武からソフトバンクの山川選手。

推定2億7000万→1億3500万+ドラフト1位指名権

 

このルールとなると、山川選手の場合はドラフト1位の契約金は確保出来るが、西川選手の場合はドラフト2位の契約金すら確保出来ていない事になる。

翌年のドラフトに補強となるドラフト権の金額に到達するには、Aランクしか無理という事になってしまうのである。

だがその部分を言っているプロ野球のOBの人は誰もいない。

 

 

私が良く提言している案は、以前巨人の前監督の原氏が言っていた譲渡金の増額である。

原氏は5倍と言っていたが、それはあまりにも高すぎる。

 

私はAランクは旧年俸の3倍、Bランクは旧年俸の2倍というのを条件にすべきであると思っている。

この場合を今年の他球団プレー選手に当てはめると。

 

◆カープからオリックスの西川選手

補償金2億4000万円

◆西武からソフトバンクの山川選手

補償金8億1000万円

 

これであれば十分な補償金であり、人的補償を求める必要がないと言えるだろう。

但し選手の流出をカバーする方法として、FA流出選手の人数分だけ助っ人枠を1枠を翌年のみ増枠とする。

この場合、今シーズンは西武とカープは1軍助っ人枠6人、1試合の出場選手枠5人と1枠増加となる。

助っ人は当たりはずれが多いし、助っ人枠増枠で試して全員成功となっても誰か一人は翌年1軍の試合に出られず手放す必要も出て来る可能性もあるので、必ずしも有利とはならない。

だが若い助っ人を獲得して育成するという方法もあれば、補償金を貯めて次の年以降のFA獲得に参戦するという方法も取る事が出来る。

 

FAの年数を減らすという言葉も選手会は言っているが、そもそも人的補償が増えたのは選手会が金銭補償を減らすように言って以降である。

以前はAランクであれば金銭のみを選べば旧年俸の1.2倍貰えたのである。

それがなくなれば、どの球団も人的補償しか選ばなくなる。

だが補償金が2倍、3倍で確定すれば、人的補償という言葉は一切なくなるだろう。

 

この案を提案する人がもっと増えて欲しいと思うのであるがどうだろうか?

 

もちろんドラフト権の譲渡やFA短縮6年を「ドラフト新人選手の契約金を0円とする」というルールになるのであれば、そのルールでも良いと思う。

ロッテの佐々木朗投手のポスティングが早期に認めにくいのも、高額の契約金と年俸に対して球団が得た金額が賄えていないというのも大きい。

もし新人選手の契約金を一律廃止という事であれば、球団はグッズ収入で十分支払い分を回収出来ているので、佐々木朗投手は今年からメジャー挑戦出来ていたかもしれない。

 

FA権とポスティングはかけ離れているように見えて、実際はかなり密接になっているのである。

 

 

ドラフトを完全にウェーバーにする、補償金を増額する、助っ人枠を補償にする。

そこに贅沢税を追加出来ればさらにいいが、贅沢税の場合は契約の詳細を誰もがきちんと分かる状態にしないと正確な額は把握できなくなる。

だが契約の詳細を「選手会に所属していない選手」に求めるのは難しい上に、誰もが正確な物を公開したくはないだろう。

ならば金銭補償の最大限の増額であれば、取られる側も十分な金銭が獲得できるようになるので、それが現実的な案であると私は思います。

 

単純な譲渡権で終わらない事を願いたいですね。