立ち並ぶマンションに、果たして人が住んでいるのだろうかと思わせる。青空が広がり、山の端がくっきりと見わたせる土曜の朝と言うのに、窓の開け放たれた部屋は何処にも見当たらない。閑散とした街を車だけが呼吸をしているようだ。軽自動車がやたらゆっくりと通り過ぎたその後ろに、パトカーがベッタリと追随する。何を如何したのか、一旦停止しなかったのか、向こうの筋からもう一台パトカーが動く。小さな車にちょっとばかり気を揉んでいる私は、茶店の大きな窓ガラスから目を凝らしている。ピカピカに磨かれた軽自動車は如何したろう。お出かけを楽しみにしていた子供達が乗っていたかも知れない。最後の一口を飲み込んで席を立つと何もなかったようにパトカーが通過するのが見えた。いつの間にかマンションの窓が開きだした。

焼きサンドの味がふっと甦る。静かな街の土曜の朝。