「小倉百人一首」 21
「小倉百人一首」21番は「素性法師」(そせいほうし)の歌です。 今来むと 言ひしばかりに長月の 有明の月を 待ち出でつるかな (いまこんと いいしばかりにながつきの ありあけのつきを まちいづるかな)貴方が,今すぐに行くと言うから,私は今か今かと待ち続けていました.そうしたら、有明の月を見ることになりました.まるで月を待っていたかのように.平安時代では男性が女性の家に会いに行くのが通例でした.これは女性の気持ちを汲んで詠んだのですが、 この技法は当時結構流行ったと言われます。「小倉百人一首」の18番・「藤原敏行朝臣」の歌も,同じように,男性が女性の立場になって詠んでいます。 ※ すみのえの 岸によるなみよるさえや * 夢の通い時 人目よくらむ (藤原敏行朝臣)素性法師は,「小倉百人一首」12番の作者である「僧正遍照」の子である。父・遍照は第54代仁明天皇に仕えていましたが、仁明天皇の急逝後出家し,叡山に入り、高僧として活躍したのです.そしてまたその子も第56代清和天皇の元で左近にまで上り詰めたのですが,父・遍照の命令で出家したのです。親子共三十六歌仙に選ばれ,古今和歌集にも多く収められています。 和歌も素晴らしいけれど,二人の人間性にもぐいぐいと興味を持ちますね。父と子の歌を今一度ここに記してみましょう。 ※ 天津風 雲の通ひ路ふきとじよ 乙女の姿しばしとどめむ 僧正遍照 ※ 今来むと 言ひしばかりに長月の 有明の月を待ち出でつるかな 素性法師 ー