(臨海公園の桜)

 海浜公園が整備されて、歩道に面して幾本もの苗木が植えられた時、ただ細長い枝を付けた枯れ木のように見えたものだ。春の兆しとともにあちこちでソメイヨシノが満開を迎え、そして散り、ツツジが登場した今、あのほっそりとした木が、生き生きと春の空に花開き、「おお! 八重桜か」と、思わず足を止めた。

上下左右を見渡せば、正に春爛漫である。地を這うような小さな花でさえ、自分の開花の時をじっと待っていたのだ。 八重桜をしばし眺めながら、「豊かな教養」と言う花言葉の意を解した。瓦礫と化した戦場の地で、人間と共に息絶えたであろう花々を思った。愚かしい人間の傲慢を、詫びたい。コンクリートの隙間にさえ生命の輝きを見せてくれる強い草花にも。