「春の海 ひねもすのたり のたりかな」

蕪村の歌をもう一度口にして見たい気になった。20度をこえる暖かな陽射しは久しぶりに地上の全てを虫干ししたようにからりとした屈託のない笑いを誘う。

「お天道さんが見てるよ」二言目にはそう言って戒めた母の言葉は、人生終盤に差し掛かった今の私に、まるでボンドでくっ付けたように張り付いている。お天道さんは偉大だ。この陽射しは森羅万象の母なる神だと思う。

人間の姑息な欲望や嫉妬が作り出す様々な事象に尾ひれをつけて、巷を掻き回す愚かさを、お天道さんは笑っているに違いない。

 「春」は躍動の季節。大きく深呼吸して、お天道さんの「目」を感じよう。 

後戻りのない人生は、前進しかないのだから、いくとうりもある道をじっくりと選ぼう。

「我が人生に悔いなし」そう言える自分を、私はお天道さんに見て欲しい。

    「春の海 ひねもすのたり のたりかな」