いつまでも夏日が続き、季節の変わり目が曖昧だったが、スーパーに足を踏み入れると、正月のしめ飾りなどがもうずらりと並び、商戦の素早さに驚かされた。

昨日半袖今日はコート。そんな戸惑いの中で、やはり秋は秋らしい風景をつくりだしていた。

 正月と言ってもそれほど新鮮な感慨があるわけでもないほどの歳を頂戴したが、子供の頃に思いを馳せれば、心が浮き立つほど待ち遠しかったものだ。

誰もが笑顔で、新年に相応しい顔をしていたし、少々の不手際も怒られることはなかった。

一年の始まりは誰にとっても大事なこと初めだった。一年の行事は、正月、盆、祭りだけだった。クリスマスやハローウインのような大騒ぎもない時代だっただけに、大人にとっても子供にとっても、思いはとても深いものがあった。

イベントは、多ければいいというものでもない。テレビもないくらしであっても、退屈を感じた覚えもなく、私を育んでくれた良き時代であったと思う。

秋の空を見上げると、吹き上がる郷愁にキュッとなる。