何故、草を刈るのか?


私は、しがない都会育ちのりーまんであるが、実家は田舎で農業を営んでいる。

小さい頃から、田舎に帰ると何故か草刈りをしていた。

誰からも褒められたことはないし、跡取りとして期待されているわけでもない。

それなのに、何故か日が暮れてお婆ちゃんが「そろそろやめるべぇ~」と言うまでひたすら刈っていた。

世間では子どもや部下を「褒めてそだてろ」というが、それは嘘だ、と私は思っている。

褒めたところで実力が伴ってなければ、ただ調子にのるだけの勘違いヤローが増えるだけだ。


そんなこんなで、大人になった今でも、誰も褒める人もいないし、報酬も無いのに実家に帰れば草を刈っている。

何故か?

「そこに草があるから」

 雑草との戦い


久しぶりに訪れた実家の裏庭は雑木林と化していた。

地球温暖化の影響はこんなところにも出ている。

まるで熱帯雨林のジャングルだ。


草刈りなどという生易しい状況ではない。

放置されていた草は、今や大木へと成長していた。

道具には竹切り用の鋸を選択した。


まずは花を付けると、衣服にまとわり付いて厄介な「ひっつき虫」とよばれる種をつけるセンダングサや篠から退治していく。

センダングサ系は根が浅いので抜けるが、篠は切るしかない。



竹も本来の竹林からはみ出して生えているので、切り倒していく。

草刈りをしていると、だんだんと疲れてきて頭もボ~っとしてくる中、まるで自分が大虐殺をしているような幻覚に襲われる。

雑草や竹を切るたびに、「ウギャァ!」「イテッ!」という悲鳴が聴こえてくるのだ。

仕方がない、これは戦争なのだ。


 ラスボスとの戦い



草や竹を切り倒していくと、いよいよラスボスが姿を現した。

少し前までは、可愛い草だったものが、2〜3年で恐ろしい怪物に成長していた。



装備が竹切り用の鋸と革手袋のみでは心許ないが、今の武器はこれしかない。



案の定、ここで植物達の反撃を喰らう。

親指を見ると、防護服である皮手袋着用がパックリと裂かれ、血がでていた。



倒した木の幹を良く見ると、あちこちから鋭いトゲが出ていた。

一歩間違えば大怪我をするところであった。


 戦いの後を振り返る



竹を切るときは、このように根元から切らずに1mぐらいの高さを、残して切る。

そうすると、竹は自分が切られたことに気づかずに根っ子から養分を送り続けるので、根っ子から枯らす事ができるのだ。



これは切ってからしばらくたった状態だが、ここまでくれば足で蹴飛ばすだけで抜ける状態になっている。



これがラスボスの正体だ。

少し前までは雑草の中に紛れていたのだが、驚くほどの成長スピードである。

しかも、いくつもの鋭いトゲを生やしている。



ラスボスは倒したものの、奥にはまだ、怪物達がウヨウヨしていた。

しかし、しがないりーまんとしての職務に戻る時間となってしまった…

仕方なく任務を最後まで遂行すること無く、戦場を後にしたのであった。

背中から、植物達の勝利の雄叫びを聴いたような気がしていた。