28年10月国立劇場の「仮名手本忠臣蔵」第一部、大序から四段目を観劇。

 

先週、10月7日に友達を連れて見たのですが、これがまた、一生の記憶に残るであろう素晴らしい舞台だったのです。そうそう出会えるものでもありません。

 

というわけで、もっと一語一句理解しながら見たいと思い、先週の観劇後に上演台本を購入。いまいち理解できなかった大序、鶴ヶ岡社頭兜改めの場の竹本の語りや台詞まで読み込んで再観劇した次第。その他の場面は、普通に見ていれば理解できるのですな。友の言葉を借りれば、「理解を深めて追体験」。至福の時でした。

 

忘れぬように、感じたことを書き残しましょうか。

 

着到

開演30分前には着席していた我々。劇場内に人はいるものの、その時間に着席している人はごくごく少数です。人もまばらな客席に大きく響いてきた下座音楽。「着到」ですね。昔の芝居では中幕までの出演者が揃ったところで演奏されたそうですが、今はどういう基準なんだろう。そういえば、劇場で着到をしっかり聞くことってなかったなぁ…、と新鮮な気分でした。

 

口上人形

11時開演となっていても、10分前には着席し、この口上から見ないのは無粋ですよね!「えへん、えへん!」と咳払いしながら、ちゃんと脇の出演者に至るまで紹介します。初めて見た友は「拍手の量で人気の違いが分かって残酷だね」と。主役級の方の他はやはり最近テレビで時々紹介される“可愛すぎる女形”中村米吉さん、“超イケメン歌舞伎役者”中村隼人さんへの拍手が大きかったです。↑こう紹介されてるの、見たことある。

 

大序

昔歌舞伎座で通しを見た時には印象に残っていなかったのですが、この大序ではえらくゆーーっくりゆーーっくり幕を開けるのですねぇ。そして出演者全員が首を垂れた人形身で控え、東西声が響く。もうね、ここまでだけでも通しで大序から忠臣蔵を見る醍醐味に溢れているんだな。

竹本の語りで名前が出てくる順に人間になるわけですが…。高師直の左團次さん、人形身で首を垂れている間左に頭が傾いているものだから、居眠りしているようにしか見えない(;^_^A …。舟漕ぎ始めるかとヒヤヒヤしたョ。違うんだろうけど。となりに座る友に言ったら同じ事感じてたんだゼ≧(´▽`)≦

2回目は上演台本を読んでから見たのでこの大序、非常に楽しく見られました。

 

梅玉さんの塩冶判官は、表情も話し方も非常~~におっとりした人物像。目がトロンとしてます。これって、誰が演じてもそうなのかなぁ。

若狭之助と師直の喧嘩腰のやりとりも、やんわりと若狭之助を止めながらも他人事に見える。玉子色というパステルカラーの素袍で、春風に包まれているような風情。だからこそあとから襲われる悲劇との対比が鮮やかなのでしょう。

 

とにもかくにも。

私は梅玉さんなら基本的に無条件に大好きです。(でも瞬きが多いよね)

 

錦之助さんの若狭之助は初役なんですね。怒る姿は瞬き一つされず、非常にキリリとして美しくていらっしゃる。ご本人は「熱をもった役は仁ではない」と仰いますが、おっとりとした仁の役者さんが演じるからこそ短気で猪突猛進型な若殿様のキツさが中和されてて、なんとも心地よい。塩冶判官、若狭之助。玉子色と浅葱色。前段を陣取るパステルカラーのお二人がとても素敵でした。

 

二段目

桃井館 力弥使者の場

塩冶判官から若狭之助への伝言内容は、「明日未明(っていつだ?)の登城の予定となっていたが、正七ツ時(午前4時だと?!)に変更になった。お間違えないように。」というもの。

で、その口上の使者に加古川本蔵の娘小浪の許嫁、力弥が来るというから、母戸無瀬は気を利かせて小浪に口上の受取り役をさせる。小浪はもう、ウキウキソワソワ。米吉くんの小浪の愛らしいことといったら。しかしなんだか大丈夫かなぁ、この子って感じなのです。

でもね。本蔵も戸無瀬も、口上を受け取った後は許嫁の聟殿をご馳走申せと。若いカップルと、その二人を穏やかに見守る両親の良い関係が伺われます。

 

この結婚前の幸せな風景が後々のエピソードの伏線となっているのですね。この二段目を見ると見ないでは、後の八段目九段目での思い入れが違ってくるのだろうと想像できるわけです。

 

で。

 

公私混同で大事な役目を仰せつかったものの、なんだか大丈夫かなぁこの子、と小浪には思えたわけですけど。予想外に小浪に迎えられ力弥も二人っきりの間で赤面。もじもじにまにま(*^.^*)

小浪は 「その口上、受け取る役は私。直接口伝えで私に仰って下さりませ。」と、力弥にしなだれかかって言うのね。もうもう小浪、アホの子ですよ。しかし力弥はさすがにシッカリ者。「これはこれは無作法千万な。総じて口上受け取り渡しは、行儀作法が第一。」と、パッと小浪を払い、畳を下がって手をつかえる。エライ。ちゃんとしてた。

しかしその口上を聞く間もうっとり見とれてる小浪(●´ェ`●)。徹底して可愛いアホ(この場面の小浪はこれしか出てこないわ(笑))。

力弥が上記の口上内容を「若狭之助様に御申し上げ下さるべし。」と言い終えたその瞬間、奥の襖がパタンっと開いて「聞いた聞いた。」なんと殿様若狭之助、直に登場。アブナイアブナイ。いやはや、力弥がちゃんとしていて良かったね、と思った次第です。

 

桃井館 松切りの場

今回の仮名手本忠臣蔵の大筋である、塩冶判官の“刃傷”、“切腹”、“城明け渡し”以外で強烈に印象を残したこの場面。それは、若く一本気な殿様若狭之助と分別盛りな50歳、家老加古川本蔵との若様と爺や的な主従関係。

 

今から自分が言うことに、絶対反対しないで「畏まり奉る」と言うと誓ってくれ。

八幡宮での噂は既に聞いていた本蔵。自分の若殿様が何を感じどうしたいのか大方予想はついている。じっと黙し、刀を抜いて金打し誓う。

 

「金打」 刀の刃や鍔を打ち鳴らす、武士の誓いの作法なんですね。

思いつめた主の気持ちを汲んだ優しい強面おじさま、團蔵さん演じる加古川本蔵。

 

ここで思いのたけを一気にぶちまける若狭之助は、こんな感じ。

 

自分は間違った事はしていない。先の鶴ケ岡社では、師直が言った意見は違うと思ったから、自分の意見を言っただけ。師直に「少し軽率だと思います。」と言ったのが余計だったかもしれないが。師直が顔世御前にセクハラしてるのを助けたのだって正義感だ。それを逆恨みしやがって。自分を若輩のペーペーだと思って嫌がらせ悪口三昧。よっぽどその場で斬り殺してやりたかった!!!だから明日、自分は師直を切り殺す!短慮だといつもお前に怒られるし納得できないだろうけど、これが俺だ。家が断絶してしまっても恥辱には替えられない!!短気な猪武者だと世間は言うだろうから、お前にだけは打ち明けるのだ!!

 

って、思い出すだけで悔しくて泣くんだな、プライドの塊の、この殿様。

 

もーねぇ、もーねぇ。

若狭之助の殿様、愛しいっす・°・(ノД`)・°・

そりゃ本蔵だって、そう思うでしょうよ。

だからこそ「よく話してくれました。よく今まで我慢されましたね。」って優しく答えてあげるのね。

顔文字だとこんな感じだ。

 

。゚・(。ノД`)ヾ(-ω-*)ヨチヨチ

 

若狭之助は反対しないと誓わせたものの、絶対反対されると思っていんでしょうね。

「バカにしてるのかムキー?」って(笑)。

そんなことはないと松の枝をスパッと切り落とし、「この通りに遊ばせ。今夜はぐっすり休んでください。目覚まし時計はセットしておきますから」だって。

で、満足の若狭之助は、師直を討つ気満々、討ち果たした上は自分は罪人一家は断絶するわけで。

それでもなんとも満足げに「もう逢わぬぞよ、さらばじゃ。」って部屋を去る。ってゆーか、寝に帰る?

殿様が部屋を出ていった瞬間、猛烈ダッシュアセアセで師直へ賄賂の支度の加古川本蔵。

好きだ、この二人!なんて素敵な主従関係だろーーーーー。

 

結果、刃傷事件には及ばず、やる気満々だった若狭之助の胸のモヤモヤが残る程度ニヤリで全てが穏便に済んだ本蔵の根回しの巧さ。家老の鏡じゃないですか、この方。

 

…。

この後やってくる、塩冶判官家の悲劇と背中合わせに存在する場面だと思われます。

 

長くなったので、今回はここまで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梅の花の散りゆく時期になると必ず思うことがある。
土に散り落ちた花は、散ってのち朽ちてゆく姿までも美しいと。
K様宅のお庭もまた、そう。



特に紅梅の深い紅色は、苔むす土に鮮やかに映える。

初めてそれに気づいたのは何年か前の鎌倉の旅。東慶寺の境内を散策した時だった。
ちょうど今の時期で、桜にはまだ早い。梅が咲き終え、ざわめく竹林と草木が息づく素敵な場所だった。
そこで紅梅の、既に咲き終えて土と苔の絨毯にそっと撒かれた姿が鮮やかに目に飛び込んできた。



花びらが、本来、自然の中であるべき、最後の姿とはかくも美しいものかと。




アスファルトで舗装された道路に散る花びらの最後、茶色く変色し、ドロドロと排水口付近に溜まる姿のなんと悲しいことか。樹木は…、土の土地にあってこそ本来の姿で。
例えば、桜並木に綺麗とはしゃぐ現代人は、その桜の表面のほんの一部だけしか見れていないのだろう。

道路の街路樹の桜が、ちょっと悲しく見える、近年の私なのでした。





土、苔、花。