12月10日、土曜日に行ってまいりました。通し狂言仮名手本忠臣蔵。ついに仇討ちも完結編でございます。
共に観劇した友と私の二人連れも足掛け三ヶ月、本懐を遂げましてござりまするーーー。どんどんパフパフわーいわーい(・∀・)
いやはや幕が閉まったその時は、我々までやり遂げた感でいっぱいでございましたよ。
上演台本もコンプリート![]()
10月の第一部、二段目松切り場の若狭之助の怒りに震える長台詞に、ヤケにグッときてしまい、劇場売店で売り切れていたところを通販で直接購入した上演台本。それ以降は、劇場に到着してまず最初に買い求めるようになりました。有名な台詞なぞ、改めて文章で見るも良いものです。
八段目 道行旅路の嫁入り
押し掛け同然の嫁入りのため力弥の住む京都山科へ向け、東海道を旅する母娘。背景の黒幕が落とされ大きな富士山が現れると心躍ります
東海道の旅って晴れた空が似合いますね。小浪は児太郎君、福助さん同様美人だよね。戸無瀬は魁春さん。小浪は鴇色の着物に萌木色の帯、真っ赤な丸ぐげの帯締め。その拵えの上品で素敵なこと![]()
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ほんっと惚れ惚れするような綺麗な色合いでねー。松並木の緑と突き抜ける青空にそびえ立つ富士山。その中で戸無瀬の真っ赤な衣装も目に鮮やか。
児太郎君の小浪は可憐すぎていないのがとても好き。というか。ちょっぴり影も持ち合わせたような雰囲気で、米吉くんの小浪より少し大人っぽく見えます。私にはちょうど良く感じられました。
内容は。遠くに見える大名家の嫁入り行列に、戸無瀬、こんな騒動の渦中になければ小浪をそれ相応豪華に嫁入りさせてやれたものを…と、少し悲しく羨む様子が、綺麗賑やか華やかな舞踊の中でスパイスになっている感じがしたのでした。戸無瀬が後妻で、小浪にとっては継母だって、この時初めて知りました。
歌詞には東海道の名所が練りこまれていて、富士山を横目に見た駿河路ですね。「薩埵峠」「三保の松原」「駿河の府中」「蔦の細道」「丸子川」「宇津の山辺」「大井川」「島田」「吉田」…このあたりは個人的には地元でして、情景がよく浮かびます。
九段目 山科閑居の場
アポなしで白無垢って![]()
家に押し掛けたものの嫁入りを拒否され、その家の庭で死のうとは、結構強引な状況![]()
由良之助も力弥も姿を見せず、初期対応は妻のお石のみで。
冷たくあしらう大星家の心の内は…。
嫁に来てもらったとしても、待っているのは悲しみであり…。直に夫と死別する運命ならば、いっそのことこの婚約は諦めてもらい他所へ嫁入りしてもらったほうが、あなたがたのためである。
まぁ、分かるけどね。
わざと冷たくしているって分かっていても、なんだかあんまり意地悪な感じの笑也さん演じるお石。低めの抑えた声でね。小浪に刀を振り下ろそうとしている戸無瀬を、襖の向こうから「御無用~」と止める声が男かと思ったよ。いや、男だけどさ。
どうしても嫁に来たければ加古川本蔵の首をこの三方に乗せてもらいたい、とか。鬼かと。
本蔵が判官を抱きとめなくても、切りかかろうとした時点で切腹は免れなかったでしょうに。逆恨みも甚だしいわな。これも二人を諦めさせる口実でしょうが…。
お石って、どういう役どころなんでしょうね。
幸せになれない結婚を気の毒に思う優しさが根底に感じられれば良かったんだけど、ひたすら憎々しい感じで見ていて気分が悪くなるというか…。役のせいなのか、演じる役者のせいなのか、そういうものなのか。とにかく好きにはなれませんねぇ。
それにしても。
加古川本蔵さまの娘を溺愛するパパっぷりが知れたことが、意外な収穫でした。
喧嘩腰のやりとりを止められて、その袂を引っ張るのは妻戸無瀬だと思い荒っぽく振り払おうとしたら娘だった時の優しい顔とかね。それ以前の台詞でも
小浪「国を出る折り、父様の仰ったは、浪人しても大星力弥、行儀といい器量といい、幸せな婿を取った」と…
小浪「身重になったら早速に知らせてくれと仰ったを、わしゃ、よう覚えている。」
戸無瀬「一時も早う祝言して、初孫の顔が見たいと、娘には甘いは父の習い」
二段目から引き続き、やっぱ好きだなぁ、加古川本蔵。
死を覚悟した本蔵から高家の見取り図と渡されてからの、これでいよいよ仇討ち準備の歯車が回りだしたという高揚感は凄かったです。ただし、全役柄の行動や心情には現代人としてはいまいち理解不能というか、共感できるところがないというか…。そんな九段目なのでしたー。
十段目 天川屋義平内の場
仮名手本忠臣蔵を通しで上演する、と言われても上演されないことの方が多いこの幕。以前歌舞伎座で通しを見た時は、この幕は上演されず。初めて見ることができました![]()
いよいよ討ち入り準備も内々に進められ、由良之助より武器調達を依頼された天川屋の主、義平。討ち入りことを周囲に悟られちゃいけないということで、次々店の者に暇を出し、女房お園まで理由も言わずに実家に帰らせる。幼い子供がいるのに一人でね。
そこに“武器調達に加担した罪”とドヤドヤと捕手に家に押しかけられ、武器の入った長持を開けられそうになって、あの有名な場面。
「天川屋義平は男でござる~」どっひゃ~~![]()
この台詞に場内、ヤンヤヤンヤの大騒ぎ。その日一番の特別に大きな大きな拍手喝采でした![]()
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ちょっとね、「なんなの、この盛り上がりは![]()
」って面白かったですよ、一瞬。
思うにですねこの場面。ほとんどの人が
- 名台詞として、「天川屋義平は男でござる」という言葉を知っていて、更に…
- 長持にどっかと座って両手を広げているポーズを写真や名場面の映像みたことがあるけれど…
- 実際にこの場面を体験するのは初めて

少なくともあたしはそうよっ。
だから結局、ほぼ全観客の「初めて見れた~~~~
」という大興奮があの拍手喝采だったんじゃなかろうか、と(笑)。
そして何よりも大喝采の原因。歌六さんの天川屋義平、カッコ良かったんですわー![]()
いやはや。歌六さんで見ることができて幸せだったね![]()
で、その捕手は、由良之助が、天川屋は口が固いのかどうかを試すべく送り込まれた浪士だったわけですが…。大迷惑なのはお園さんですよ、可哀想に、彼女からすれば…
- 訳も聞かされず実家に帰され

- あとから離縁状を書かれた挙句、親には他所へ再婚させると言われ

- 天川屋へ「訳を知らせて!」「せめて子供に会わせて!」と泣いて頼みに戻っても冷たく外に放り出され

- 締め出され戸の外で一人泣いていたら、
覆面の輩
(由良之助の意向を汲んだ浪士ですが)に無言で髪の毛を切り落とされ

櫛笄も盗まれて
(はぁぁぁ
でしたわ)、どん底な気分で号泣
。
災難にも程があるわ…![]()
そして梅玉さんの由良之助、これがまた涼しい顔で(それこそが梅玉さんなんだが)
「それこそはこの由良之助の計らいにて、(略)根よりふっつと切らせし心は、いかな親でも尼法師を嫁入りさそうとは申されまじ、嫁に取るものは猶あらじ、その髪の延びる間も凡そ百日。我々が本望遂ぐるも、百日はよも過ぎまじ。討ちおおせた後、目出とう祝言。その時にはこの櫛笄、この切髪を添えに入れ、笄髷の三国一、まずそれまでは尼の乳母、一季半季の奉公人。」
だってさ。
“めでたしめでたし”って強引に思わせようとしているけど、お園さん怒っていいからね![]()
我々は苦笑いでした。
いろんな意味で印象強くて台詞全文書き出してみたよ。
十一段目 表門討入りの場 ~ 花水橋引揚げの場
浅葱幕が切って落とされた瞬間、舞台にあの有名な拵えの46名がずらりと並んだ光景に場内「おぉぉっ」と、どよめきましたね。
3ヶ月かけて、観客も「待ってました!」の気分でいっぱいです。
46名もいると、主要メンバー意外の方はお顔の拵えもあっさりと素顔に近い感じなので、一人足軽という立場上揃いの衣装がちょいと違い、「ネイネイネイ」とお顔の化粧も拵えも髪型も大時代な雰囲気の錦之助平右衛門。立場は一番下っ端なのにやたら男前だ![]()
梅玉さんの由良之助、見る前はいまいちイメージが涌かなかったのですが、これがあっさり風味でほどよい味わい。いよいよ実行に向け準備が実際に動き始めて、冷静に淡々と指揮を取る、非常に写実的な人物造形といいましょうか。クライマックスに向けてはそれで良いのではないでしょうかね。素敵でした~。
最後の最後に出てきましたね、仮名手本忠臣蔵を通して私のアイドル桃井若狭之助様。全てを成し遂げ引き上げる46名と花水橋のもとにてご対面。
「そちも承知のかの折に、受けし恥辱はこの我も、塩冶殿も同じ事。それを思えばなぁ、若狭之助一同に礼を申すぞ。」皆さんの名前を覚えておきたい、一人一人名乗って下さい、と名乗らせる。
この46名に自分のモヤモヤも晴らしてもらい(本蔵様死んでしまったけど)、なんともお得な役どころでしたのね。
いろいろ細かいことはまだありますが先月も感想は途中で力尽きてます、どうなることやら。
あ。先月のとーっても見ごたえのあった、又五郎さん演じる七段目の平右衛門。11月の国立劇場賞優秀賞でしたよ。

