〇処方箋は公文書なのか?

 先日、通院中の眼科(私立の眼科クリニック)を受診した際に渡された目薬の処方箋についてのお話です。

 受診後に渡される処方箋は、いつも帰り道で近所の薬局に持って行きますが、その日は、仕事の取引先の方と会う予定も入っており、薬局に行くのは明日にしよう。と、その処方箋を鞄に入れました。

 翌日の早朝になって、急用の連絡が入り、隣町まで数日間の出張をすることになってしまった為、薬局に処方箋を持っていくことができなくなりました。

 出張先での用を終え、帰宅した5日後の夕方、鞄に入れたままの処方箋をいつも行く近所の薬局に急いで持って行きました。 

 受付の薬剤師の方が、私が渡した処方箋を見て、「これは交付の日を含めて4日以内と規定があるので4日間過ぎると・・・公文書なので」と困惑した表情で、私に説明しました。

 

 私は、公文書とは、「公的機関や公務員が職務上作成した文書が公文書」 と本で読んだことがあった為、後日、別の用で連絡した法律関係者(医療問題にも詳しい)に処方箋についてメールで確認したところ、

 

 処方箋の交付義務が医師法第 22 条 に定められており、処方箋は、作成者が公立医療機関ならば公文書で、民間医療機関ならば私文書。

 処方箋の使用期間が4日間というのは、公文書であるからというのではなく、私文書を含めた別の定めによる、「保険医療機関及び保険医療養担当規則第 20 条、21 条では、処方せんの使用期間は、交付の日を含めて4日以内とする。ただし、長期の旅行等特殊の事情があると認められる場合は、この限りでない」

 自由診療による処方箋についても4日以内という使用制限があり、使用期間を徒過してしまった場合には、再発行をお願いすることになりますが、その場合に健康保険が適用されず自由診療による処方箋発行の金額となる。

 

 診断書についても「公立病院で勤務している公務員の医師の診断書は公文書になり、私立病院で勤務している医師の診断書は私文書」という回答でした。

 

〇書類の作成者の名義を偽れば「偽造」(有形偽造)

 実は、私がインターネットで調べものをするようになったのは、ここ20年程のことで、それまでは書籍でしたが、その頃、こんな事がありました。

 刑法の解説本で 内容虚偽の文書作成(無形偽造)について調べていたら、

「私文書の場合は」作成権限のある者(本人)が虚偽の私文書を作成しても、処罰されることはないのです。しかし、私文書であっても虚偽文書を作成すれば罪になることがあります。

「虚偽診断書等作成罪」刑法160条「医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、三年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。」がそれです、と読みました。

 一方で、公務員の場合は、公文書になるので、ある法律家とお会いしたときに、「公務員の医師が刑法160条に該当する行為をした場合はどうなりますか?」と、質問したところ、「だから医師がと書いてあるでしょ?」と答えが返ってきました。

 翌日、また、その法律家とお会いしたとき、周囲には誰もいないことを確認してから、再度、「公務員の医師が刑法160条に該当する行為をした場合はどうなりますか?」と、質問したところ、イラッとした感じで、「だから医師が」と言うので、「公務員の医師の場合も、この160条でお間違いございませんか?」と確認をしても、「昨日も、答えただろう!」と大声で怒鳴られた挙句、「非学者論に負けず」と揶揄されてしました。 

 話が進まないので、私のほうから、「公務員である医師が160条に該当する行為をした場合は、刑法156条の虚偽公文書作成罪では?」と、説明をしたら納得したため、「それは、判例から来ているのですか?」と、質問したのを憶えている。

(注意:書類の作成者の名義を偽っていないため ~偽造罪ではない)

 

 この出来事があってから、プロの方に質問をするときは、質問と同時に、自分の調べた資料を先に見せて、私が調べたときは、こうだったのですが、「今でもそうですか?」「それは、この解釈から来ているのですか?」と質問をするようになりました。

 プロの方でも、この分野には詳しいが、この分野には詳しくない、とあるようなのだ。

 

 結局、冒頭での薬剤師の方が、「これは交付の日を含めて4日以内と規定があるので・・・公文書なので」と私に説明をしたときも、「あ〜公文書だからですね。ご指導有り難う御座います」と答えるに留めた。

 

  今は情報化が進み、スマホからでもインターネットで簡単に調べられる時代。