私が会社勤めをしていた頃、入社してきたある青年は、なかなか優れた仕事ぶりでした。将来は、優秀な幹部になる人物だと思って目をかけていたところ、突然退職してしまいました。理由を聞くと「鮨屋の職人になります。3年経てば独立させてもらえる」と言うのです。
「開業資金はあるのか?」とたずねると、「店主が出してくれるのです」と言います。「わが子でもない者に、そこまでする人はいない」と言っても、「大丈夫です」の一点張りです。
結果は、2年間ただ働き同然に使われたあげく、クビになりました。本人がくじけたわけでも、怠けたわけでもないのに。
その後、そば店で働いたり、あちこちを転々としたようですが、本人は「サラリーマンの一生は決まっているが、商売人になれば大きな成功を得ることができる」と思い込んでいました。最後には挫折(ざせつ)し、妻とも別れて行方をくらませてしまいました。
彼は商売の良い面しか見ていなかったのです。自分の適性も考えず、商売のむずかしさも知らず、ただ、夢だけが大きかったわけです。
「足が地についていない」と言いますが、空想だけでは何事も成功しません。
世の中には、能力があるにもかかわらず、いくつもの会社を転々として、一生を終える人がいます。夢と現実を一緒にする人たちで、その違いの大きさに気づいて挫折する人が多いものです。
<まとめ>
夢を実現するには、現実でのたゆまぬ努力が必要。
「会社を運営するのはたいへんだ。その苦労は誰にでも勧められるものではない。仕事が見つからなくて、自分で会社を起こすことが一つの解決法として考えられる場合もよくある。だが、そんなふうにして始めた会社の成功率は低い。十社中九社は五年でつぶれ、五年間生き残った企業も十社のうち九社は遅かれ早かれつぶれる。だから、「会社を始めたい」とよほど強く思っていないかぎりそんなことはしないほうがいい」
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<110ページ-111ページより抜粋>
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