今年も胸やけ・胃もたれ診療について講演してきました。 | なくい外科内科胃腸内科クリニックのブログ

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2017年5月8日、宮城県岩沼市あさひ野にオープンした「なくい外科内科胃腸内科クリニック」です。
かかりつけの皆様やクリニックに興味をお持ちの皆様に、
少しでもお役にたてる情報を提供できればと考えております。

先日、亘理郡医師会学術講演会におきまして「胸やけ・胃もたれ診療、どうしてますか? -GERDFD併存を念頭に置いた診療の試み-」と題して講演を行ってまいりました。

 

総合南東北病院在職中には大変お世話になった先生方が数多く参加されており、改めて開業後のご挨拶をすることができる大変よい機会となりました。講演では、これまでの食道外科医・内視鏡診療医としての経験をもとに、最新の胃食道逆流症(GERD)診療ガイドラインと機能性ディスペプシア(FD)診療ガイドラインの解説と、GERD・FD併存の取り扱いが明確でないこと、内視鏡診療を行っていない先生方がどのように取り扱っていけばよいのか、ご提案をさせていただきました。

 

クリニックでは、胸やけまたは胃もたれの症状があると、改定Fスケールという問診票をご記入いただくようにしています。改定Fスケールでは、胸やけ症状と胃もたれ症状どちらも7項目ずつ質問項目があります。最も気になる訴え(主訴)は胸やけまたは胃もたれのどちらかですが、どちらか一方だけの症状しかない患者さんよりもむしろ、どちらの症状も少なからずあると訴える患者さんの方が多いのです。当クリニックでの調査結果によると、主訴がどちらか一方の症状であった患者様が80%であったのにも関わらず、Fスケールでどちらの症状もあると回答した患者様は88%にのぼりました。こうなると、どちらか一方の症状に対してガイドラインにに基づき治療を行っても、十分効果が得られない場合や、もう一方の症状が残存し、結果的には患者さんの満足度が上がらない可能性があります

 

さらに、ピロリ菌による慢性胃炎があり除菌されていないことが、症状に関連している場合もあります。これを放置したままGERDの治療やFD治療をすすめても症状が残存しやすくなるばかりか、胃酸を抑えるPPIという薬剤を投与されてしまうと、ピロリ菌検査の感度が低下し、検出されないまま放置されてしまう可能性があります。実際に保険診療上もPPI処方を継続しながらピロリ菌検査をすることは認められておらず、検査前には2週間の休薬が必要とされております。そうなると、PPIを止めている間に患者さんに胸やけ症状を我慢してもらわなければならないとかというジレンマが生じてしまいます。

 

この問題に対して、少しでも後戻りするような診療にならないよう、少しでも心配な症状・経過があれば早めに内視鏡検査を行っていただくことと、①除菌治療②GERD治療③FD治療の順番で治療を進めていただくことをご提案させていただきました。

 

昨年の角田市医師会に続いて、亘理郡医師会の先生方とガイドラインの問題点や記載のない領域について意見交換できたのは大変有意義でした。どちらの医師会の先生方も同じように、内視鏡検査への敷居の高さからやむをえず内服治療の選択を優先する診療を行う現状がわかりました。内視鏡診療を通して地域の方々に貢献していく当クリニックでは、近隣の開業医の先生方が少しでも内視鏡検査依頼の敷居を感じないよう、今後も一層検査依頼に柔軟に対応していきたいと考えております。