2007年6月19日に起きた、渋谷温泉施設の爆破事故は、当日から様々なメディアから取材を受けました。

午後4時ごろには、「ボーラー爆発が起きた」と連絡を受けましたが、地下にボイラーがないことは確認しましたので、「温泉ガスの爆発の可能性」を指摘しました。

設計・施工した会社は、温泉施設をいくつも手掛けていましたが、「泉質」を重視していない設計・施工を行っていました。

温泉設備は、「泉質」を考えた設計・施工を行わないと、後々様々な障害が出てきます。

温泉スケール障害やメタンガス、硫化水素ガスなど。

関東の温泉は、「メタンガス」を含むところが多く、「防爆」仕様の設備を行なう必要があります。

メタンガス爆発を指摘をすると、メディアはすぐに確認に動きました。

午後7時のNHKニュースで「温泉ガス爆発?」と報道されました。

その後、温泉法を改正し、ガス検知器の設置が義務付けられました。

メタンガスは比重が軽いので、設備室上部への検知器設置。

一方、同じく「爆発性」の硫化水素ガスは比重が重いので、設備室下部への検知器設置を働きかけましたが、こちらは見送られました。

都心で起きた温泉爆発事故は、大きな衝撃でした。

亡くなられた方がいたことは、本当に残念でした。

温泉施設の安全性が、大きく問われた事故でした。

今、温泉施設は「安全、安心」な温泉になってきています。



以下引用

2013年5月9日 東京新聞

シエスパ爆発 管理者に無罪判決 東京地裁

 二〇〇七年に東京・渋谷の温泉施設「シエスパ」の別棟が爆発、三人が死亡した事故で業務上過失致死傷罪に問われた二人の判決で、東京地裁は九日、運営会社「ユニマット不動産」(現ユニマットホールディング)の保守管理担当役員だった菅原啓之被告(50)に無罪(求刑禁錮二年)を言い渡した。

 設計担当の大成建設社員角田宜彦(つのだよしひこ)被告(55)は禁錮三年、執行猶予五年(求刑禁錮三年)の有罪判決。

 二人が事故を予測できたかどうかが最大の争点だった。多和田隆史裁判長(異動のため田辺三保子裁判長が代読)は菅原被告について「大成建設側から必要な情報提供がなく予測は不可能。管理を怠った過失はない」と判断。角田被告に関しては「専門知識があり、事故が安易に予測できたのに、適切な情報を伝達しなかった過失は大きい」とした。

 爆発は〇七年六月、シエスパ本館に隣接した温泉水くみ上げ施設の地下で発生し、休憩室にいた従業員三人が死亡、通行人ら三人が負傷した。

 判決は事故原因について、温泉水に含まれるメタンガスを排出する配管に結露でできた水が詰まり、施設内にガスが漏れ出たところに、制御板のスイッチから出た火花が引火した、と認定した。

 角田被告は、結露水が詰まりやすいU字形の配管構造を設計。多和田裁判長は「水抜きバルブを開いて結露水を抜く必要性をユニマット側に説明する注意義務があったのに怠った」と指摘した。菅原被告については「大成建設を信頼していたが、水抜きの必要性を全く説明されなかった」と判断した。

 その上で大成建設を「問題意識を持たなかった施工部門の危機管理が不十分だった」と批判した。

 

◆企業の責任 問いたかった

 シエスパの爆発事故で妻真里さん=当時(51)=を亡くした世田谷区の日詰(ひづめ)慎介さん(58)は法廷で判決を聞いた。事故から間もなく六年がたつ中、ようやく迎えた節目だったが、二被告への言い渡しは有罪と無罪に分かれた。現行刑法には企業そのものを罰する規定はないため、「やはり個人だけでなく、企業の刑事責任を問いたかった」と悔しさをにじませた。

 真里さんはデザイナーの仕事に区切りをつけ、事故の数カ月前にシエスパの飲食店で働き始めた。仲の良い夫婦は二カ月後の夏休みに銀婚式の記念に海外旅行に行く予定だった。「二人とも五十歳を過ぎ、今後の人生をゆっくり考えようとしていたところでした」と日詰さんは振り返る。

 その生活が事故で一変する。いつものように先に出勤する自分を玄関で送り出してくれた笑顔を最後に、妻は爆発に巻き込まれた。

 「なぜ命を落とさねばならなかったのか」。真相解明を司法に託したものの、時間がかかった。鑑定を重ねた捜査当局が原因を特定し二被告を起訴したのは事故から二年九カ月後。双方が相手の会社に責任があると反論し、検察側が補充捜査したため、裁判までさらに二年以上かかった。

 日詰さんは現場に何度も通い、一万数千枚の証拠書類を熟読した。被害者参加制度を利用し二十回超の公判を欠かさず見届けたが、いら立ちばかりが募った。「裁かれるのは担当者に過失があるかどうかだけ。再発防止のためにも企業責任を問うことが必要なのに」

 新たな悲劇が追い打ちを掛ける。一人娘を失った義母は「真里のところに行きたい」と自殺未遂を繰り返し、昨年六月に命を絶った。「事故の四人目の犠牲者になった」と日詰さんは唇をかむ。

 来月は真里さんの七回忌と義母の一周忌。墓前には「まだ終わらないよ」と伝えるつもりだ。企業の責任を世に問い続ける誓いを込めて。 (横井武昭)

 <シエスパ爆発事故> 東京都渋谷区の女性専用温泉施設「シエスパ」で2007年6月19日午後2時半ごろ発生。従業員休憩室や温泉くみ上げポンプのある別棟で爆発が起き、女性従業員3人が死亡、通行人らが重軽傷を負った。シエスパはユニマットグループが06年1月に開業。従業員も女性だけで、JR渋谷駅から近く、人気を集めていた