「よく言われることだが、

漱石の死(一九一六年=大正五年)が

明治の終わりを示したように、

芥川の死は、短い大正という時代の

終焉(しゅうえん)を象徴した。

遺書にあった

「僕の将来に対する唯(ただ)ぼんやりした不安」を、

同時代あるいは後世の人々は、

時代の閉塞(へいそく)感、

しのびよるファシズムの影と重ね合わせた」

『朝日』10月3日