「中野はこう書いていたのだ。

 「僕は天皇個人に同情を持っているのだ

……あそこには家庭がない。家族もない。

どこまで行っても政治的表現としてほかそれがないのだ。

ほんとうに気の毒だ

……個人が絶対に個人としてありえぬ。

つまり全体主義が個を純粋に犠牲にした最も純粋な場合だ。

どこに、おれは神でないと宣言せねばならぬほど

蹂躙(じゅうりん)された個があっただろう」」

『朝日』1月19日