人がやっていない効率の高い努力
今年の技能五輪全国大会の課題
発表になった図面がこちら。
袖壁は軽量鉄骨と呼ばれる下地材を自分で組み立て、石膏ボードをカットして自分で取り付ける。
そして、その下地角にコーナー定規と呼ばれるものを取付け、そこにUトップという下塗り材を塗り付け、最後はマリンライムという漆喰材料を塗り付け鏝押さえで仕上げる。
さらに下の図面の三種類の石膏モールディングを製作し、寸法通りに切断し、
壁最上部にぐるりと取り付け、さらに巾木もぐるりと取り付け、壁には六角形の額縁となるように2ヶ所取り付け、その中を着色してスタッコヘッドカット仕上げを行う。
これを経験3年程度の若手技能者が10時間という制限時間の中で仕上げるというのですから、今年の課題のセッティングはやはり難しい・・・。
競技課題が発表された段階で自分達が持っていたものは、組合主催の研修で得た知識と、島田さんに教えていただいた置き引きの基本と、土の塗り壁トレーニング、そしてこの三年間現場で身につけた野帳場左官の技術だけでした。
お盆休みが終わり藤木君と2人きりでのトレーニングを始めるにあたって、2人で打合せをしました。
「翔希、大会までの暦を書いてみると、日曜日以外毎日トレーニングをしたとして、大会までに俺たちに与えられるトレーニングの日数は55日間しかない。
通しのリハーサルをもちろんやらなければならないわけで、その日数を考慮すると今回必要な技能習得まで40日間しかとれない。」と。
40日間の中で、今までまったくやったことの無い軽量鉄骨組み立て、石膏ボード切断、取り付けはじめ、ほとんどの経験の無い作業を身に付けなければなりませんでした。
「人と同じ事をしていては人と同じ結果しか得られないのだから、今回勝つためには、人がやっていないことを最高に効率の高い努力でしなければならないんだ」
「人がやっていない最高に効率の高い努力」こそが自分達にとってはモデリングだったのです。
まず一番最初にしたことは「計画」です。
40日で何を身に付けなければならないのか?を具体的にはっきりさせ、そのスキルをどのようにして身に付けるか?ということを計画します。
左官技能とは「技術」と「道具」と「材料」の組み合わせで出来ています。
まず課題における作業を大分類し、今度はひとつひとつの作業を「技術」「道具」「材料」に分解して準備をします。
そして作業ごとに、この3つを明確にしてから行動に移す。
「まずはやってみよう!」で始めてしまうと、後から違ったやり方に変更した場合にまたゼロからのスタートとなる。
トライエラーはそれはそれで発見という学びの側面はありますが時間がかかります。
今回はそれでは間に合いません。
今回は上手くいく「モデル」を見つけてから行動に移すというまさに「モデリング」で実行しました。
モデリングは「上手くいく人をその通り真似る」という概念から来ています。
モデリングの最大の長所は「最短時間で習得できる」ということです。
モデルの通りやれば上手い人と同じ結果を得られるということ。ある意味考えなくても良いとうのは逆にモデリングの短所でもあります。
まず私達が一番最初に取り組んだ作業は、左官仕事ではない軽量鉄骨組み立て、石膏ボード切断加工、取り付け作業でした。
鉄製の間仕切り材を切断して、組み立てビスで固定します。
実際の大会時の模様です。
石膏ボードを寸法通りに切断して、取り付けます。
こうして袖壁の下地が出来上がります。
実はこの作業、藤木君はかなりの高い精度で作り上げることが出来ます。
それもダントツに早く
その秘密を次回ご紹介します〜