建物の安全 | 中屋敷左官工業(株)

建物の安全

昨年から世の中を騒がしている、建設業の「くい打ちデータ改ざん問題」


事の発端は、横浜市にあるマンションでマンション傾きが発見され、調査してみると建物を支える杭の一部が固い地盤まで届いていなかった。
杭を打つ前に、地盤調査を一部で実施せず、別棟のマンションデーターを流用していたということ。

建物の一番重要な基礎部分、それも杭という基礎の中でも最も重要と言える部分でのこの問題。

ここ20年くらいで建設業が大きく変質してしまったように私は感じています。
平成初期にバブル経済が破綻してからの建設業は、ダンピングに次ぐダンピングが繰り返され、建設業における全ての単価が暴落していきました。

値段が安いことが一番の優先順位とされ「安かろう、悪かろう」が勝つ時代となりました。

そのダンピングは終わることなく、最終的には「やるべきことを省いてでも安くする」というところに手を付けた業者までが生まれてきました。

その結果が今回の「くい打ちデータ改ざん問題」として、出るべくして出てきた問題だと私は感じています。

ここ20年間で建設業は「安いからこれでいいんだ」「工期がないからこれでいいんだ」という価値観の支配により「きちんとした建物の作り方を忘れてしまったのではないか」とさえ思うのです。

私達はもう一度「正しい仕事」を学び直す必要があるのではないかと感じています。

本当に奇遇なのですが、当社は昨年春から自社の社内基準をもう一度見つめ直しています。
過去ブログでもお伝えしましたが昨年春の従業員研修で「材料の基本」という研修をやりました。



さらに毎月発行される中屋敷新聞にも、「中屋敷ベーシック」という作業標準を都度添付して、作業員全員が当社の作業標準をしっかりと身に付けるための活動を継続しています。


今回の「くい打ちデータ改ざん問題」は杭打ち業者だけの問題なのでしょうか?

きっと違いますよね。
建設業全体に言える問題なのだと私は感じています。

「くい打ちデータ改ざん問題」を左官業者で例えれば、こんな事件が想定されます。
「たとえば15階建てのマンションのタイル外壁で、外壁タイル下地の施工不良で30メートルの高さからタイルが剥がれ落ちて人に当たった」という事件。

この時に想定される外壁タイル下地の施工不良の原因
① コンクリートに型枠工事に用いられる剥離剤と呼ばれる薬品が付着していてそれをしっかり落とさずに補修材を塗り付けた。
② 外壁タイル下地を塗り付ける補修材に、混入しなければいけない樹脂量を入れていなかった。

私達左官業界もここ20年間のダンピング合戦で、今回の問題のように、本来しなければいけない事を省いたりしていないか?
もう一度、確認してみる必要があると思います。

この20年間に左官職人になったり、育てられた職人さん達はもしかすると、間違ったことを学んでいる可能性も0ではないかもしれません。

これと同じような事は、左官業界だけでなく、建設業のたくさんの業種にも同じ事が言えるのではないでしょうか・・・

建設業は「安全第一」とはよく言います。
今まで安全第一と言えば「作業の安全」を指すのが一般的でしたが、これからの建設業は「建物の安全」というのも同じだけ大事になるのではないでしょうか。