【『中山泰秀のやすトラダムス』2月15日放送分の記事をJB PRESSにて公開いたしました。ご一読頂けましたら幸いです。中山泰秀 】
《輸送から救出へ、自衛隊法整備に向けての議論を。世界中に広がるテロの危険から国民の安全をどう守るか。》

今回の『中山泰秀のやすトラダムス』(2月15日放送/Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)では、国境を越えて勢力を拡大するISIL(いわゆるイスラム国)の話題を取り上げたほか、自衛隊による在外邦人救出に関する法整備や、韓国で加藤達也前ソウル支局長の出国禁止措置が続いている問題などについて語った。

世界各国で進むISILの”フランチャイズ化”

中山 JBpressが配信した『日本の近くにある脅威:東南アジアに潜むISILの影』という記事で、ISIL(いわゆるイスラム国)に参加する外国人義勇兵の増加が問題視されていると指摘しています。

 特に世界最大のイスラム人口を抱えるインドネシアと、イスラム教徒が多いマレーシアからは何百人もがISIL戦闘員としてへシリアやイラクに渡ったとされ、インドネシア政府は「帰国したジハーディスト(聖戦主義者)が武装集団を活気づける危険性がある」と危機感を露にしているとのことです。

 ナイジェリアのイスラム武装組織ボコ・ハラムをはじめ、世界中のイスラム原理主義と呼ばれる過激派や組織がISILとの連帯を強調したり忠誠を誓うような構図が広がりつつあります。ある意味、ISILの”フランチャイズ化”が進んでいると言えるのではないでしょうか。

 情報化が進んだ現在は、既存のメディアに頼らずとも個人や組織がネットによって自ら情報を発信できる。そしてそれをメディアが煽り立てることによって、莫大な予算を投じなくても彼らは結果的に宣伝活動ができてしまうのです。

 以前も述べましたが、ISILの特徴は21世紀のIT・デジタル技術とアナログ的な手法を融合させた犯罪を行う点にあります。一方ではプロフェッショナルな映像技術を駆使し、精緻に作り込んだ映像を作成・公開し、他方では脅迫や誘拐などの昔からある犯罪手口を見せている。

 手段や形態の多様化を意味する「超限戦」という言葉がありますが、今や戦争は国家対国家ではなく、国家に個人がITを使って戦いを挑める時代になっています。事実、米軍主導の有志連合がシリア北部ラッカに空爆を実施した際、米国統合参謀本部(JCS)にISIL側からと見られるサイバー攻撃があったという話も聞きます。

 それに、犯人は必ずしもシリア近辺にいるとは限りません。しかし、彼らが相当な技術や情報を有していることを考えると、トラッキングによって犯人を特定するのは容易ではないでしょう。今後はより効果的なサイバーテロ対策が求められます。

自衛隊の海外邦人救出に向けた法整備を

 海外で起きた不測の事態に際し、自衛隊が他国領内で日本人を輸送する初めての訓練がタイで行われました。海外のとある国で政変が起きたという設定で、現地の日本人を脱出させるために自衛隊が派遣され、他国の領土内を車両を使って輸送するという訓練です。

 アルジェリアでの人質事件をきっかけに法改正されたことで、自衛隊は日本人を海外で陸上輸送することが可能になりました。

 ただ、今の法律で自衛隊が輸送任務の際に武器を使えるのは正当防衛などに限られており、武装勢力やテロ組織を制圧して日本人を救出することはできません。

 今回の訓練でも、武装した相手への対応は想定できず、武装していない群集への対応を確認するにとどまっています。

 先の衆院予算委員会で安倍(晋三)首相は「領域国の受け入れ同意があれば、自衛隊の持てる能力を生かし、救出に対して対応できるようにすることは国の責任だ」と語っています。

 私も日本人が海外でテロリストなどに拘束された場合、自衛隊が救出できるよう法整備を検討すべきだと考えています。その場合は、当然ながら相手国の了解が取れていることが前提であり、また相手国や有志連合の協力が必要不可欠です。

 今回のISILによる日本人拘束事件を例に挙げると、シリア政府の許可を得てシリア領内に入った場合、同国内には約2~3万人のISIL戦闘員が分散しているとも言われ、レスキューを行うのは多くのリスクを伴います。そうした、起こり得る様々な事態を考慮に入れた上で邦人保護の方法を考えていく必要があります。

産経新聞前ソウル支局長の出国禁止を続ける韓国

 韓国を訪問中の自民党の二階(俊博)総務会長は13日、ソウルで朴槿恵(パク・クネ)大統領と会談したと報じられています。

 朴大統領らの名誉を傷つけたとして産経新聞の加藤(達也)前ソウル支局長の出国禁止状態が続いている問題で、二階氏は「日本国民は皆心配している。自由に日本に渡航し家族と会えるようになることを望む」とする安倍首相の意向を伝えたとのこと。それに対し朴氏は「問題は司法の場に移っており、司法の判断に委ねるしかない」と答えたといいます。

 また同じ13日、韓国の聯合ニュースは加藤氏の仮処分申請が棄却されたことについて、ソウル行政裁判所の棄却理由などを中心に報じ、「産経前支局長、しばらくの間、日本に帰れず」の見出しで速報しました。

 これは大きな問題だと思います。民主主義・自由主義を標榜する韓国政府が、ソウルという日本から目と鼻の先にある場所で、我が国の新聞社支局長を出国禁止にするのは一体どういうつもりなのか。

 そもそも、加藤氏の書いた記事は別のメディアの情報を引用したものだそうですが、引用元の記事を書いた記者は何ら罪に問われていません。

 日韓関係が揺らぐ中で友好ムードを作ろうと思っても、これでは難しいと言わざるを得ないでしょう。朴氏は「司法の判断に委ねるしかない」と言っていますが、法治国家を謳いながら一メディアの言論の自由を奪うのは言語道断です。

 もし日本国内で、韓国メディアの関係者が日本をバッシングするような記事を書いたとしても、日本政府がその人間を拘束することはまずあり得ません。我が国と同じように言論の自由が保障されている国家として、韓国には一刻も早い加藤氏の釈放を強く望みます。

目の当たりにした言われなき誹謗中傷

 最後にお伝えしておきたいことがあります。今回、私は日本人拘束事件でヨルダンの現地対策本部長を務めましたが、一部メディアの報道では、私が携帯電話の電源を切っていたなどと伝えられているようです。

 事実関係を申し上げると、私は携帯電話の電源を切っていません。仮に電池切れなどで電源が入っていなかったとしても、私には常に秘書官が同行していますし、大使館にいる以上、日本の外務省からの連絡がつかないということは普通に考えてあり得ないことです。

 誤解を恐れずに言うと、一部のスポーツ紙は直接の取材もせずに記事を書くことがあります。また、週刊誌の中には期限付きで質問状を送ってきて、それに対して回答を出しても「期日内に回答がなかった」と、事実に反する報道をするところも存在します。

 現地対策本部で私は「日本国民の皆さんが私たちをいつも見てくれている。そのつもりで、恥ずかしくない姿勢で取り組もう」と訓示を述べ、チームが一丸となって必死に対応にあたりました。にもかかわらず、帰国後に言われのない誹謗中傷を受けたことは、本当に残念で仕方ありません。

 こうしたバッシングに対して、私たち政治家が「嘘だ」と声を上げることのできる場所が十分に整備されているとは言えません。しかし、メディアの心ない嘘の情報であるにもかかわらず、中にはそれを信じてしまったり、心配してくださる人がいる以上、事実関係だけははっきりさせておきたいと思い、取り上げさせていただきました。

 多チャンネル時代の今こそ、自分で色々な情報を収集しながら、何が本当かを見極める目を養っていただきたい。「やすトラダムス」が、そのヒントになれれば幸いに思います。

『中山泰秀のやすトラダムス』2月15日 24:00-25:00放送

Kiss FM KOBE "中山泰秀の「やすトラダムス」" は、radiko.jpでも聴取できます(関西地方のみ)。auの対応機種では、LISMO WAVEを利用すると、日本全国で聴取可能です。また、「ドコデモFM」のアプリでは、日本全国でスマートフォン(ドコモのAndroid搭載端末、auとsoftbankのiPhone)で聴取できます。