【『やってもやらなくても何も変わらなかった。』大阪市長選、ただ残るは虚しさ。】

大阪市民じゃない大阪市長が辞めて、再選を果たした。
投票日から1週間が経とうとしている。

報道各社は『橋下候補が他の3候補を破って再選を果たした』と報じるが、破られた他の候補と比較するような表現に価値すらがそこにあるとは思えない。

何故なら、そこには名も無きもう一人の候補者がいたからだ。
その候補者名は、この度次点になられた『 無効 票 』候補者だ。
得票数6万7506票(「ムナシイコノロクオク」と読み方を数字にあて、記憶すると覚えやすいかも知れない。今回の大阪市長選挙に支出された大阪市民の税金は約6億3000万円と言われている)。

『過去最低の投票率』の中、実に13.53%もの得票を得られた。
大阪市内に住まいしているからこそ分かるが、『今回は投票所に足を運ばない』と決められた有権者も多かった。

そして今日、『昨日の市長選挙はなんやったんかな...』と言った声が、メールで沢山寄せられてきている。

一言で評せば、『酷い選挙』だった。

ところが橋下陣営に言わせると、『既成政党は候補者を立てない。ボクが嫌なら落とせばいい... 』と。

今回、橋下候補に投票した有権者の中で、今年の秋にもう1度今回と同じ大阪市長選挙が行われると言う事をご存知の方が、一体どの位おいでになられたのだろうか。

また、橋下候補を支援した『維新の地方議員』などは今回の選挙戦で、その事は大抵伏せて選挙運動を展開していたのではないだろうか。

たった1年間で、3回も選挙を味あわさせられる、大阪市内に住まう人の気持ちにもなって貰いたい。

橋下候補自身が豊中市民であって、大阪市民ではない。

『私は大阪市民じゃありませんから、大阪市は何の関係もない』と、橋下候補自身よく言っていた。

6ヶ月後に再び大阪市長が一身上の理由で辞職され、行われるであろう『大阪市長選挙』に遭遇する大阪市民は、その時身近に起こる政治現象に一体何を感じ、思い、行動するのだろうか。

もう一つ。

橋下候補は今回の市長選挙期間中、街頭において説明の為に看板を使用していたが、あれは明らかに選挙違反の疑いが大きい。前回の堺市長選挙の時にも、電光掲示板を使用して選挙戦を展開していたが、これも明らかな選挙違反。

各陣営、決められたルールに則って選挙戦を戦っているのだから、決められたルールはフェアに守るべきが常識である。
今回犯した違反、罪はどうなるのか。弁護士でも公職選挙法は理解できない方もいると言う事なのか。それとも弁護士が党首なら、何でも許されるのか。

更にもう一つ、常に気になっている事がある。

橋下候補に付いている、いわゆる『SP』の多さだ。
『SP』と地元、所轄の警察などを含めると、20人じゃきかないと思う。街頭も含めた演説会場などにも、事前の警戒や調査、雑踏警備を含めて、気の毒な程沢山の警察官が動員されている。

政治家の家に生まれ育ち、幼い頃より政治の表舞台のみならず、舞台裏もこの目で観て来ているので、要人警護の何たるや、舞台裏はある程度把握している。

橋下候補に対する警備は、異様に過剰だとしか言いようが無い。
現役の安倍内閣の閣僚が大阪に来た時よりも、確実に警護の数は上回っている。
命を狙われる危険があるからと言う理由なのであれば、政治家なんぞ皆同じ。
私自身のところにもライフル銃の弾が送られて来るが、警護なんてつかない。
拉致問題や外交問題、軍事問題を主に政治活動を国において行わさせて頂いてもらっているが、大概現職の閣僚や与党三役員、そして元総理にしか警護はつかないものだ。

警護対象者は選挙の時、警察が街頭演説の場所取りや警備等を事実上する事になる。
警護対象以外は、自分達の陣営で警察から雑踏警備の依頼を受け、自主警備に当たらなければならない。経費がもしかかるとするのであれば、当然自分持ち。自腹を切るが、警護対象になると警備は全て税金でまかなわれている事になる。

前々回の市長選挙のとき、MBSの元アナウンサーと橋下候補が選挙戦を争った。
あの時は、橋下陣営だけに警察がついて警護するのは不公平だと言う事で、元アナウンサー陣営にも警護をお願いし、つけて頂いた経緯がある。もし橋下候補が命を狙われているのだとすれば、事実上小選挙区制度の中の選挙戦。当然に相手側の陣営も平等に命を狙われる危険性を孕んでいる事は言うまでもない。

過去に大阪市民に殺された、大阪市長はいない。
自分の愛する街で、自分の愛する市民に、その選挙区で殺されるようになったら、大阪市長としてその存在が、一体どのような意味を持つと言う事なのだろうか。大阪市民に、市長を暗殺するような愚かな者はいない。もし仮にいると言うのであれば、先に街の治安対策に注力すべきだ。

警護対象になると、自宅の前にも警護が24時間体制でつく。ポリボックスまで設置される。しかし警護対象者自身の希望があれば、その警護、ポリスボックスの設置を外す事が出来る。

私の父は大臣在任中、東京から大阪の地元に帰郷しても、警察のポリスボックスを自宅前に置かなかった。

ある日、親父に尋ねた。

「何故、自宅の警察による警護をお断りするの?」かと。

親父は言った。

「自分が生まれ育ったこの愛する街大阪で、自分が暗殺されるような事があるんだったら、それはもう終わりだ。第一、近所の街の人を信頼していないと言う意味に取られかねない。申し訳ないし恥ずかしい。ある意味本望だ。」と。

忘れられない思い出の一つを、今回自ら辞職して、選挙して、再び大阪市長になった人をテレビ映像で観ながら思い出している。

おかしいぞ大阪。
感覚が、麻痺をして来ている。

『井の中の蛙が大海を知らなかったばっかりに、茹で蛙になってしまった。』

と言う事にならないようにしなければならない。

少し離れ、距離間を持って、大阪を観ないといけないと思う。

少なくとも47都道府県を俯瞰し、比較して、景気経済を比較して、何が勝り、何が劣っているのか。

しっかりと見極めを行うように心がけるべきだ。
大阪は『天下の台所』ではなかったのか。

そして、次回行われる選挙に際しては、候補者の擁立を検討する。


中山泰秀