【 オウム事件の背後に透けて見える、ロシアと北朝鮮
事実を闇に葬らず、国は後年に情報公開する制度制定を 】


今回の『中山泰秀のやすトラダムス 』(Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)は、元産経新聞記者の今西和貴氏を交え、松本・地下鉄サリン事件や会社員VX殺害事件などオウム真理教をめぐる一連の事件、そして大阪市の公募区長、維新政治塾の塾生選抜について語った。
上九一色村の捜査直後に、突然焼失したオウム真理教モスクワ支部


中山 地下鉄サリン事件の殺人容疑などで特別手配されていたオウム真理教最後の指名手配犯・高橋(克也)容疑者が逮捕され、連日メディアを賑わしています。


 地下鉄サリン事件が起きた当時、私は秘書官として永田町に勤務していました。その日はたまたま荷物があったので車で出勤し、幸運にも被害を免れたのです。首相官邸近くに到着すると地下鉄の通気口から大きなファンの音が鳴っていて、周囲には体育座りでうなだれる人の姿がありました。
 外務省の前にはもっと多くの人がいた。一体何が起きたのかと驚いていたところに、秘書仲間から安否確認の連絡が入り、事件の存在を知ったのです。

 94年に起きた「会社員VX殺害事件」の現場を実際に見に行ったこともあります。この事件は、大阪市淀川区の路上を歩いていた会社員がオウム真理教信者に注射器に入れたVXの溶液を噴霧され、抵抗したため注射器の針が首に刺さり死亡した、VXガスによる世界初の殺人事件です。
 会社員は教団の大阪支部の分裂を図ったとしてスパイだと決めつけられていた。この事件は猛毒のVXガスを使用したうえに、見張り役と実行犯に分かれ、実行犯が2人で被害者を挟み撃ちにするなど、極めて計画的な手口によるものでした。

 また、関西のテレビ番組でコメンテーターの勝谷誠彦さんがオウムとロシア(旧ソ連)の関係を指摘していて鋭いなと思いました。かつてモスクワ市の露日大学にオウム真理教モスクワ支部がありましたが、発起人となった国会議員の名が挙がっていたことは忘れられない記憶です。
 しかし、教団拠点のあった山梨県旧上九一色村に家宅捜索が入った直後、突然露日大学で火事が発生し、その支部のあった部屋だけが焼失したのです。
 現地の新聞を取り寄せて出火原因を調べると、原因は「冷蔵庫のコンセントに積もった埃が漏電を起こして火事になった」となっている。証拠隠滅を匂わせるような出来事ですが、オウム真理教絡みの事件にはこうしたケースが多かったと思います。


オウム真理教と北朝鮮のコネクションが存在した?


中山 他にも忘れてはならないのが、松本サリン事件です。事件当時、第1通報者である河野(義行)氏は、自身の妻が被害者であるにもかかわらず容疑者としての疑いをかけられました。
 マスコミ各社も一斉に河野氏が犯人であるかのような報道を繰り広げた。あの報道はどこからどんな経緯で出されたのでしょうか。

今西 もとを辿れば長野県警でしょう。河野氏は後に事件を回想していますが、強引に連行された上に「お前が犯人だろう」と断定的な尋問を受けたそうです。
 警察当局は記者会見で公式発表したわけではありませんが、記者が夜回り取材をした際にそういうニュアンスが漏れ伝わり、一連の誤報道につながったと聞いています。
中山 被害者を加害者に変えてしまう報道の過熱というのは恐ろしいものですが、一方で煙を立たせる人もいる。
 ある筋から聞いた話ですが、どうも河野氏はカモフラージュに使われたフシもある。河野氏宅と隣接した場所に長野地裁松本支部の裁判官宿舎があり、そこに人事異動で移ってきた裁判官がいたそうです。
 以前、その裁判官は京都地裁で北朝鮮系の組織に対する家宅捜索の許可を出しており、それによって命を狙われているという情報が警察当局に入っていた。そこで裁判官を松本に逃げさせたが、オウム真理教が追いかけてきたのだと。


 もしこの話が本当だとしたら、オウム真理教は先に述べた“ロシア・コネクション”以外にも“北朝鮮コネクション”を持っていた可能性が高い。日本とロシアと北朝鮮という、この不思議なトライアングルの謎を解く鍵を、一体誰が握っているのでしょうか。
 先日逮捕された菊地(直子)容疑者や高橋(克也)容疑者か、それとも松本(智津夫)死刑囚か、あるいは元幹部の上祐(史浩)氏なのか。
 おそらく真実を知るのは幹部クラスしかいないはず。いずれにせよ全ての特別手配犯が逮捕された今、解明を急いでほしいと思います。
 また、私は松本死刑囚の死刑執行に異論はありませんが、彼の頭の中には表に出ていない情報がまだあるはずです。もしくは、取り調べによって自供したものの、国が国民に伏せている情報があると推測します。これをしっかりとオープンにしてもらいたい。
 米国には情報自由法(FOIA:Freedom of Information Act)があり、英国にも「The Secret Law」があります。これは、ある時点では公開できない情報であっても、国が年限を切って後に情報公開を行う制度です。
 情報がひた隠しにされたり、特定の組織や人物の利益のためだけに利用されて、国民の知る権利が侵害されるとしたら、それは問題です。今こそ、情報自由法の日本版を制定すべきではないでしょうか。



金のあるなしで塾生を選ぶ維新政治塾は能がない



中山 続いての話題に移ります。大阪市が全国から公募していた全24区長が内定したと報道されました。4分の3を民間人から選び、最年少は27歳だそうです。この報道を今西さんはどう見ていますか。
今西 正直、またアドバルーンなのかなと思います。橋下(徹)大阪市長は常にメディアに対してツカミになるような話題を提供しますから。実際に会ったわけではないですが、社会人経験4~5年ぐらいの27歳の人が予算と権限を持ったとしてどれほどの仕事ができるのか、非常に懐疑的に見ています。

中山 橋下氏と言えば、大阪維新の会が維新政治塾の受講生約2000人のうち、選挙資金のある915人を正式な塾生に選抜したという記事がありました。面接で「選挙資金がない」と回答した受講生は選ばれず、塾生を次期衆院選の候補者に養成する狙いもあると見られているようです。
 
資金のことが問題にされているようですが、実際には公職選挙法で法定選挙費用の上限は決まっていて、支出が限度額を上回ると公職選挙法違反で罰せられます。

 それに、面接では維新側から「維新で出馬するなら1000万円、他党だと2000万円くらい必要」と言われ「金の話ばかりでがっかりした」とこぼした受講生もいたという記事もありました。

 政治家というのは、学歴や社会的地位、財産や収入に関係なく万人に認められた者がなるべきです。そのようにしてデモクラシーをつくってきたのが、日本の政治史のはず。

 大阪維新の会には、もっと本物の政治を目指してほしい。金のあるなしで選抜するのはおかしいし、資金がないのなら、政策に賛同して資金を提供してくれる出資者を募らせることも候補者にとっての大切な修行だと思います。

 せっかく高い意識を持って集まった人に「結局カネか」と冷めた思いを抱かせたことは残念です。
今西 私も同感です。先日には大阪市が支出削減のための事業見直し方針「市政改革プラン」素案のパブリックコメント(意見公募)を実施した結果、意見総数の94%が反対だったという結果が報じられています。

 中には利害関係者が組織的に反対意見を送ったと見られるケースもあるようですが、意見総数2万8399件のうち反対意見は2万6763件です。誰かが組織的に邪魔したところでこれほどの数字は出ないでしょう。

 パブリックコメントの意義を明らかにするためにも、公募結果の内訳を開示すべきではないでしょうか。




『中山泰秀のやすトラダムス』 6月17日 24:00-25:00放送
※Kiss FM KOBE "中山泰秀の「やすトラダムス」" は、radiko.jpでも聴取できます(関西地方のみ)。auの対応機種では、LISMO WAVEを利用すると、日本全国で聴取可能です。また、「ドコデモFM」のアプリでは、日本全国でスマートフォン(ドコモのAndroid搭載端末、auとsoftbankのiPhone)で聴取できます。