先週放送分のキッスFM神戸より、毎週生放送でお送りしている「中山泰秀のやすトラダムス」が、JBPRESSにおいて配信されています。ご高覧賜れば幸いです。

勿論、明日も元気よく生放送でお送りします。


感謝
中山泰秀


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35023  ← JBPRESSのURLです。





【北朝鮮のミサイル発射は計算された失敗?失敗を公表した北朝鮮の思惑:金正恩はピンチをチャンスに変えるのか】
2012.04.20(金)

北朝鮮の長距離弾道ミサイルの発射失敗については、各国でさまざまな評価がある。今回の『中山泰秀のやすトラダムス』(Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)では、中山氏が北朝鮮の世襲共産主義とミサイル発射失敗について独自の視点で解説した。

北朝鮮が他に類をみない世襲共産主義国家になった理由


金日成生誕100周年を祝う軍事パレードで演説した金正恩朝鮮労働党第1書記〔AFPBB News〕

中山 北朝鮮の金正恩第1書記が4月15日、故・金日成主席の生誕100年を祝う朝鮮人民軍の軍事パレードで約20分演説し、軍事優先の路線を継承すると強調しました。

 正恩氏が国民に肉声を披露したのは初めてのこと。演説では「敵が原子爆弾によってわが方を威嚇、恐喝していた時代は永遠に過ぎ去った。今日の武力示威が、それをはっきりと立証するだろう」と述べたそうです。

 正恩氏は故・金日成主席、故・金正日総書記が推進した核・ミサイル開発などを通じ、北朝鮮は軍事強国になったと強調。ミサイル発射失敗で失った威信の回復をアピールしたと報道では伝えられています。

 北朝鮮は金日成氏、金正日氏、そして3代目の金正恩氏へと世襲を行いました。本来、共産主義では世襲が認められていませんが、北朝鮮だけは特別です。

 金日成氏の時代、北朝鮮は旧ソ連と親密な関係でした。その時、共産主義を朝鮮半島に根付かせるには世襲共産主義にしなければならないと主張したのです。

 「朝鮮半島には民族的に儒教精神が宿っている。だから、儒教の精神に則って共産主義を伝播させる必要がある」と。そうやって、旧ソ連の許しを得るかたちで金正日氏に権力を継承した、世界でも類を見ない世襲共産主義国家なんです。

ミサイル発射失敗は計算ずく?

 北朝鮮のミサイル発射は、日本のみならず中国や韓国のメディアの社説等でも取り上げられ、翻訳記事が配信されています。レコードチャイナ(Record China)というメディアには「北朝鮮ミサイル発射失敗に6つの疑問」という記事がありました。

 その6つの疑問の3つ目に、北朝鮮がロケットを自爆させた可能性があるのかという点が挙げられていますが、私は自爆の可能性はないと見ています。

 ある情報筋によると、液体燃料のミサイルの発射前には燃料を注入して噴射させる燃焼実験を行うそうです。そして人工衛星で噴射時間を読み取って事前に飛距離を計算するのですが、今回は噴射時間が非常に短かった。

 要するに、最初から長距離発射に必要な量の燃料が充填されていなかった可能性がある。もっと言えば、これは「計算された失敗」だったという見方ができるのです。日本では外交評論家の多くが単に「失敗だ」と論じていますが、それを真に受けるだけでなく、違う角度から見ることも大切ではないでしょうか。

北朝鮮は日米制裁に関係なく核実験に踏み切る


軍事パレードでは大型ミサイルも登場〔AFPBB News〕

 第4の疑問「北朝鮮はなぜ失敗を認めたのか」について、記事では「外国メディアの招待や衛星の破片位置の報告など北朝鮮は国際ルールを順守しており、政権交代の影響が見られる」という清華大学の劉江永教授の分析を伝えています。

 これはその通りだと思います。過去のミサイル発射時には情報を公開することのなかった北朝鮮が、今回初公開に踏み切った意図をしっかりと読み取る必要がある。

 第5の疑問は「打ち上げ失敗が政局に与える影響」です。日本の多くの外交評論家は、金正恩書記の権威に傷がついたという見解ですが、この記事では「専門家は影響なないと分析している」とあります。

 私も影響はないと見ています。就任直後のトップが失敗した部下に懲罰や死刑を科したら、誰もついてこないどころかクーデターが起きかねませんから、それほど厳しい処分はないでしょう。この点からも、計算された失敗の可能性が高いと考えます。

 最後の疑問「今後、核実験に踏み切るかどうか」については、おそらく日米の制裁に関係なく行うだろうと思います。朝鮮日報でも「失敗が正恩氏にとって軍掌握のチャンスに」と報じていますが、北朝鮮はわざとピンチをつくって、それをチャンスに変えようとしている気がします。

 世界中のメディアに対してオープンな姿勢を示しながら、自国民には失敗の事実を公表することで「もっと頑張ろう」というモチベーションを駆り立てる。若いリーダーのもとで、そうした演出が行われているのではないでしょうか。



日本は北朝鮮の失敗を論じる前に自らの対応を反省すべし

 4月15日の軍事パレードでは、新型とみられるミサイルが登場しました。韓国の聯合ニュースは、射程5000~6000キロの大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の可能性があると報じています。

 軍事評論家の小川和久氏は「張りぼてかもしれない」と述べましたが、もし本物だとしたら米国大陸にも届く射程距離ですから、米国にとって脅威になり得るでしょう。

 これまで北朝鮮にとって、核問題やミサイル問題、日本人拉致問題などは、中国や日本、韓国などを巻き込むための外交手段でした。それがICBMとなると、米国を交渉相手として引きずり出すことができる。ですから、このタイミングでICBMを公開したことは大きな意味があると思います。


 日本は北朝鮮の失敗を取り上げる以前に、自国の対応の失敗の方を反省する必要がある。発射をただちに覚知しながら裏付けに手間取ったり、「発射は未確認」と発表した約20分後に「飛翔体が発射された」と説明するなど、対応が二転三転しました。

 それに、政府の発表よりもテレビのニュース速報の方がずっと速い。民主党政権の危機管理能力には本当に不安を覚えます。

 私が思うに、北朝鮮問題の本質は「米中が北朝鮮の扉をどう開くか」ということなんです。ミサイル発射や軍事パレードといった対外デモンストレーションを含めた北朝鮮外交のあり方は、米国と中国という大国からの独立性を担保する唯一の方法なのかもしれません。

 北朝鮮側の視点に立ってみると、米中のどちらにも侵略されたくないという彼らの思惑や戦略が見えてくるはず。つまり、独立性を担保しながら国際社会に出ていこうとギリギリの方策を取っているのが今の北朝鮮なのだと思います。

 金正恩氏は幼少期を海外で過ごし、インターナショナルスクールも出ている。ですから、外国と自国のギャップは色々な意味で見えているでしょう。私たちも、さまざまな角度から落ち着いて国際政治を考える必要があると思います。






『中山泰秀のやすトラダムス』 4月15日 24:00-25:00放送

中山 泰秀(なかやま・やすひで)氏 前衆議院議員(自由民主党所属)。1970年大阪市北区生まれ。電通勤務を経て政治の道へ入る。2003年衆議院総選挙で初当選、2007~2008年8月まで外務大臣政務官を務める。(撮影:前田せいめい)

※Kiss FM KOBE "中山泰秀の「やすトラダムス」" は、radiko.jpでも聴取できます(関西地方のみ)。auの対応機種では、LISMO WAVEの「ラジオパック」(月額315円)を利用すると、日本全国で聴取可能です。
また、「ドコでもFM」のアプリであれば、日本全国ドコでもスマートフォン(iPhoneも大丈夫)でお聴き頂けます。