【 子供に威力あるショットガンを持たせるようなものだ。】



民主党政権が「秘密保全法」を通常国会に提出すると言う。

国家の機密事項を守ろうとする事や、「秘密」というものに対して、そのような国家としての動きがある事自体は好ましい事であるとは思うが、果たして国民の期待に応えられるような良い法律ができるのか? また、その法律を運用できるだけの信用に足りる政治が、現在の民主党政権によってハンドリングする事が可能なのか? これらがこの法律を立法する時の大きな2つの問題点となるだろう。

アメリカには「フリーダム・オブ・インフォメーション・アクト=情報自由法」と言う、政府が国民に対してどのように情報を開示するのかという法律がある。国民の知る権利を同時に保証している事や、年限をきって国家機密を公開する事など、良く考えられた法律であると思う。

ここで考えなければいけない事は、アメリカでは政権交代が生じても、共和党と民主党両政党ともに自由主義・民主主義を標榜しており、実質共産党が非合法化されているので、アメリカという国家の進み行く方向性に変化は起こらないという事である。従って、守られるべきである国家機密や情報等は、政権が交代しても守られる。左翼による、もしくは国家転覆を目論む者達から一定度セーフティーゾーンにある。

しかし日本ではそうはいかない。一度、政権交代が生じると、民主党と自民党ではあまりにも変化が起こり過ぎる可能性が否定できない。特に左翼的なイデオロギーと縁が深い政治家やそういった背景の政治集団やグループ、活動家。そういう政党の出身者が多数在籍している事を考えると、かえってこの法律が成立する事により、国家的なリスクが高まる恐れがあると憂慮する。
具体的に言えば、左翼に都合の良い事だけを情報開示したり、しなかったり。それが発展すると、日本国自体の将来に大変大きなリスクが生じる可能性がある。

この法律を、時の政権によって、都合の良いように恣意的に運用されてしまう時のリスクが、今の政権の歩みと姿を観ていると、非常に高い事が心配だ。

仮に、原発被害に関する情報が秘密に指定された時は、法律に則って本来開示すべきそれらの秘密や情報を、隠蔽させてしまう事がいとも簡単にできてしまう事になる。

そもそもは、軍事機密やオペレーションが十分に共有できない日米間において、アメリカの本音を代弁すると「情報自由法もない国家に、FXで話題のF-22Aラプター等の戦闘機が売却できる訳もない。日本に売ればたちまち中国を始めとする軍事的に対峙する可能性がある別の国家に、それらの軍事機密や戦略の情報が流出してしまう。もっと言えばウィキリークス並みの情報流出の恐れがある国家が日本だ。」と言う事であろう。「せめて、オーストラリアのレベルまで追いつけよ。」と言う事であろう。

防衛庁が「省」に昇格した事も、これらの情報共有を日米間で行う為の最低限の準備行為であったと言えよう。戦後60年以上過ぎた日本では、もうこれ以上効果のあり過ぎた戦争直後の「GHQの占領行政政策」が、今度は時代の経過とともに、アメリカへのリスクになりかねない時が来たからだ。アメリカはその事を良く理解しているはずだ。

問題は日本の現在の政府だ。以前にも、官房機密費はいくらだったとか、それを公表するかしないかで、あれだけ国会や政治を国民を巻き込む形でもめる事を容認する政権与党も、他に類を見ないだろう。すなわち、そんな情報よりもさらに重要性の高い機密情報が、かえってリスクにさらされてしまう危険性が、起こってしまうという事を指摘し、国民の注意を喚起しておきたい。

言論の自由とのバランスもある。下手をすれば、マッチポンプもできうる可能性を秘める法律だけに、十二分に法文の中身や、運用の仕方、そして何よりもこの法律を運用する政権与党の政治家の質が最大の問題点だ。

拙速に焦って作り上げてしまう事が、許される法律ではない。
今の民主党野田政権は、何かしらの成果をあげようと、どこか焦っているように思う。
この法律は、十分に研究し、落ち着いて作り上げなければならない。
国家の命取りになる。

これは、子供に威力のあるショットガンを持たせるようなものだ。

私は現役8年間の衆議院議員時代、この法律を「フリーダム・オブ・インフォメーション・アクト・日本版」として議員立法するべく研究してきており、ライフワークとしている経験と目標を有しているだけに、現政権のこの法律の立法に関して、非常に大きな懸念を抱いている。また、アメリカ国務省のご協力を得て、衆議院議員になる以前に、米国に国務省より招聘を頂き、情報自由法に関する研究を行わさせて頂いていた。正直、私には政治家としての大きなこだわりのある部分なのだ。

日本国家を守る為の法律が、日本を殺してしまう法律にもなってしまう。
諸刃の剣だ。

他にも関連する問題に関して書き綴りたいところもあるが、一先ずこの程度にしておく。







以上




中山泰秀








「秘密保全法、通常国会提出へ=漏えいに最高懲役10年検討」
時事通信 10月7日(金)2時33分配信

政府は6日、外交や治安などに関する国家機密を公務員が漏えいした場合の罰則強化を柱とする「秘密保全法案」(仮称)を来年1月召集の通常国会に提出する方針を固めた。7日に「情報保全に関する検討委員会」(委員長・藤村修官房長官)を開き、法制化を急ぐ方針を確認する。機密情報の管理徹底や米国など関係国との信頼確保が狙いだ。ただ、同法案は国民の知る権利や報道の自由、情報公開を制限しかねないだけに、与野党から異論が出る可能性もある。
同法案は、(1)防衛など「国の安全」(2)外交(3)公共の安全・秩序の維持―の3分野を対象に、「国の存立に重要な情報」を新たに「特別秘密」と指定。特別秘密を取り扱う公務員が故意に漏えいした場合の罰則について、最高で懲役5年か10年とする方向だ。