はぁ、いいお湯だった。
あれからお父さんと2人で飲んでいたけど、意外にもお父さんは酔いつぶれてしまった。
そんなに強くないのかな。だとしたらビール1杯でつぶれた雅紀は間違いなくお父さんのDNAを引き継いでるんだろうな。
「お風呂いただきました。ありがとうございました」
「はーい。今日は私たちのワガママを聞いてくれてありがとうね」
雅紀が昔着ていたというスゥエットを貸してもらってそれを着てからリビングのお母さんに声をかけると、温かいお茶を出してくれた。
床にひっくり返っているお父さんと、ソファーで爆睡している雅紀。
なんだか同じ顔をしていて笑える。
「翔ちゃん、本当にありがとう。雅紀のこともお父さんのことも。ありがとう」
「いえ。オレの方こそありがとうですよ。なにせ最初はオレの顔を見ることすらお父さんは受け付けてくれていなかったのにこうしてお酒をいただけるようになるなんて思っていなかったですから…蒼翔もおいで?」
お母さんと話しながら蒼翔に手を伸ばすと、待ってましたといわんばかりに駆け寄ってきた蒼翔はすぐにオレのあぐらの上に座った。
クンクンと鼻を鳴らしながら甘えてくれる蒼翔が可愛い。
相葉の家で幸せになれて良かったな。
翔さんに救ってもらえて良かったな。
いらない子なんかじゃないって思えるようになって良かったな。
なぁ。
いつかオレと雅紀の子としてオレたちんところに来てくれよな。
その日が来るまでにオレたちは自分磨きをするからさ。
「…お母さん…お願いがあります。いつか蒼翔をオレたちの息子として引き取らせてください。雅紀だけじゃなくて蒼翔までもオレがお母さんから取り上げてしまうような形になって申し訳ないんですが。オレにとっては雅紀も蒼翔もいてくれないと困るんです…」
「翔ちゃん、ありがとうね。取り上げるだなんて思わないでちょうだい。アナタは私の息子なんだもの。そうでしょ?」
「ありがとうございます…」
「ふふ。翔ちゃんも酔ってるのかしらね?泣いちゃって…」
ぐず。
鼻をすする音を聞いてお母さんはティッシュを差し出してくれた。
そしてそんなオレの頬を蒼翔がぺろりと舐めてくれた。
「んー。そうだぞー。翔も雅紀も俺の息子だぁー」
「あら。寝言にしては妙にハッキリしてるわね」
「ははは。そうですね」
お父さんの言葉が嬉しくて仕方ない。
『翔くん』から『翔』に呼び方が変わっている。
オレにとってすげぇ幸せなクリスマスプレゼントだよ。