次の日。
ウキウキソワソワしながら雅紀が出かける支度をしている。
何を持っていくつもりなのかとそーっと後ろから覗き込むと、入試に受かって欲しいとの願いを込めて渡した白衣と聴診器をリュックに詰め込んでた。
「おま、それ…持ってくのか?」
「え?ダメ?」
「ダメなんかじゃねぇけど。なんか/////な///」
「んだよ。自分から渡しといて今さら照れんなや」
「はい。おっしゃる通り」
「くふふふふー🎶」
誰がどこからどう見ても浮かれポンチで支度をしている雅紀はちょっと可愛い。
昨日の夜中までオレを鳴かせてたヤツと同一人物だなんて思えねぇわ。
「なぁ、雅紀」
「ん?」
「首…これでバレないか?」
「んー。昨日はそんなにつけなかったから大丈夫なはずデスケド」
「そんなに???」
「ん?ああ、いや、見えるとこには…ゴニョニョ…」
「ふはは。ま、いっか。オレも結構やっちゃってたからな。痛くねぇ?」
「んー。ちょっと滲みたけど大丈夫…な、はず」
雅紀は夏になってから見えるところにキスマークをつけるのを遠慮するようになってきた。
でもオレは相変わらず雅紀の上で跳ねるもんだから雅紀の胸はオレが立てた爪で引っかき傷が絶えない。
お互いそんなことを気にしつつ、チュッてキスをしてからタクシーをアプリで呼んだ。
リュックを背負い、松葉杖をついた雅紀の背中を支えながらタクシーに乗り、診療所へ向かう。
いつか2人でこうして出勤する日が来るんだろうな。その時はオレの車でな。
後部座席で指を絡めて手を繋いで指先で雅紀にトントントントントンと合図をした。
雅紀もくふふって笑ってトントントントントンと返事をしてくれた。
それはいつしか2人でしたヘルメットを5回ぶつけての合図だ。
アイシテル。
アイシテルよ、雅紀。
「斗真先生、これは…こういう考え方ですか?」
「うーん。それも一理あるけどな?こんな症例もあるんだよ。なぁ、潤?」
「ああ。アメリカではこんな風に考えることもあって…」
「へぇ。なるほど。すげぇな。勉強になるわー」
雅紀の質問に斗真が答え、潤も意見を出してくると、オレも興味が湧いて一緒に話を詰めていった。
なんか面白いな。
「なぁ、雅紀くん。この白衣と聴診器…って?もしかして翔の?」
「ひゃひゃひゃひゃひゃ。さすが斗真先生。お察しの通りですー!」
斗真がニヤニヤしながら突っ込むと、なんの悪びれもなく雅紀がヘラヘラと答えては潤がじどーーっとオレを睨む。
んん。
前言撤回!
やりづれぇ!!!!
んもおおー!!!