とりあえず雅紀の誤解を解き、オレもキスの上書きをしてもらって。
ちょっとだけ深めのキスをしてから手を繋いで保健室を出た。
多部先生とイノッチ先生にちゃんとお礼を言わないとなって言うと、雅紀はこくんと頷いてくれた。
雅紀に盛大な勘違いをさせた挙げ句に、明後日の方向へ考えをぶっ飛ばしてしまうほど雅紀を不安にさせたこと。
そして昔は女の子を取っかえ引っ変えしていたオレも何の気持ちも持ってない女の子からキスされてめっちゃ動揺するほど雅紀だけしか見えてないこと。
なんだか考えれば考えるほど「お前たちは先週付き合い始めたばかりのカップルか!?」ってツッコミをくらいそうなネタだったけど、こうしてほんの少しずつの誤解をその都度解いていくことが大切なんだなと改めて思った。
そしてオレが思ってる以上に雅紀もオレのことを好きでいてくれるんだな。
でれ。
って、いやいや。
ここでデレデレしてる場合じゃねぇわ。
職員室の手前のベンチで多部先生とイノッチ先生がガハガハ笑いながら缶コーヒーを飲んでるのが見えた。
2人に駆け寄ると2人はニヤニヤしてオレたちの肩をバシバシ叩きまくりながら、オレたちの話を聞いてくれた。
「若いっていいな」
「そうよね。そんなにまで妬いてくれるだなんてね?櫻井くんは幸せね?でもまた相葉くんを泣かせるようなことをしたらタダじゃおかないからね。覚悟しなさいよ?」
「くふふ。ありがとう、多部先生」
「覚悟って…。いや、もう泣かせません。すみません、今日はありがとうございました」
手を繋いだまま2人に頭を下げたオレたちは校門へ歩き出した。
「あとで湿潤効果のある絆創膏を買うのを忘れないようにしなさいよー!せっかくの綺麗な肌に跡が残るからね?」
「はーい!」
多部先生の言葉に大きく手を振って、オレたちは駆け出した。
さっきとは違う。
オレも雅紀も笑ってた。
ちゃんと笑えてたんだ。