無事に出産を終えた華が病室に戻ってきた。
病室で待機していた俺たちはまだ麻酔で眠ったままの華の顔を見て大きく深呼吸をした。
元気に産声をあげた2人は男の子だと改めて告げられた。
1人は少し眉が濃くて、もう1人はシュッとした眉だと言われて家族はちょっと笑った。
眉の形が1人は俺で、もう1人は華と翔の眉にそっくりだったから。
良かった。
3人ともここに戻ってこられて。
陽縁(ひより)も縁翔(よりと)も小さく産まれたから保育器の中にいる。新生児室で看護師さんたちがみてくれているから実際にこの手で抱くのはもう少し先になりそうだ。
ポンと背中を叩いて翔が俺に声をかけてくれた。
「潤?姉ちゃんが起きるまでそばにいてやってよ。オレたちは外の空気吸ってるからさ。潤も疲れたろ?姉ちゃんと一緒にゆっくりしてなよ」
「翔、ありがとう」
「あ、ひとつ言い忘れてた」
「ん」
「潤はもうお父さんだな、おめでとう」
「ありがと////」
素直で真っ直ぐな性格の翔らしい言葉だった。
こういう気遣いや言葉掛けは翔ならではなんだよな。
翔の言葉に続いて親父やお袋、親父さんやお袋さんからも次々とおめでとうの言葉をもらって妙にくすぐったい気持ちになった。
翔やみんなが部屋を出ていってから、眠る華のベッドサイドに椅子を持って来た俺は、華の手を包み込んでそのそばに頭をくっつけて目を閉じた。
正直全然寝てないし、気が気じゃなかったからとんでもなく疲れたしとんでもなく眠かった。
でも本当は誰より疲れてしんどいのは華なんだよな。
「華。ありがとう。陽縁(ひより)と縁翔(よりと)を産んでくれてありがとう。俺のところに帰ってきてくれてありがと…」
そうつぶやいてから俺は気絶するかのように眠りに落ちた。
夢を見た。
「陽縁!縁翔!待て待て!転ぶぞ!!」
「めっちゃよく動く子たちねぇ?」
「ぱぱー」
「ままー」
「あぶない!」
「より!」
「うあああああーーん!」
「より、だいじょぶ?」
「ひよは優しいわね」
「しっかり者だな、ひよは…」
俺たちより先に公園へ飛び出してとてとてと歩く陽縁と縁翔の後ろを華と歩いていた。
案の定勢いよく転んだ縁翔のそばに陽縁がかけより、小さな手で縁翔の頭をいい子いい子してる姿を見て、華と俺はくすくす笑ってた。
ちょっと危なっかしい性格の縁翔と、しっかり者の陽縁を見ている俺たちは幸せな気持ちでいっぱいになっていたんだ。
そんな夢だった。
「潤?起きて?潤?」
「ああ…華…」
最愛の人の優しい声で目が覚めた。
「よく寝れた?」
「ああ、おかげさまで」
「私も麻酔でよく寝られたわ(笑)」
「華…陽縁と縁翔を産んでくれてありがとう。お疲れ様…」
「ばか。今じゃないでしょ?」
「いやいや、いつ言うの?今でしょ!?」
「ふふふ」
「ははは」
目尻から涙をこぼす華の唇にキスを落とした。
ありがとう、華。
おかえり、華。
キスを解いたあとの華の顔は凄く綺麗だった。
綺麗すぎて見とれてしまうほどだった。
そしてもう一度…とねだるように目を閉じた華に吸い込まれるようにして再び重なり合った唇は、離れることなく何度も何度も顔の角度を変えながらお互いの存在を確かめ合うかのように求め合っていた。
深く深く求め合っていた。