ブルブル…ブルブル…
「はい?」
『まさ、ごめん』
「翔ちゃん?声、どうした?」
『風邪…みたいだ…』
「そっか。ちゃんと治してね?喋るのキツいだろ?」
『ごめ』
「いいって。早く寝て」
『まさ』
「ん?」
『好き』
「ふふ。知ってる。俺は愛してるけどな!」
『…ばか』
ふふ。
可愛い。
甘えたモードになった翔ちゃんから電話かかかってきた。つか、翔ちゃんがダウンしたことは少し前に知ってた。
翔ちゃんのお母さんから母ちゃんにLINEで連絡があったし、その一報を受けた母ちゃんはすぐ俺に知らせてきたから。
翔ちゃんもきっとそこは勘づいてただろうけど、それでも直接伝えにくるところは翔ちゃんらしくてカッコいいのに、ついでに甘えちゃうあたりは可愛くてたまらない。
本音を言えば逢いたいよ。
抱きしめたいし、抱きしめて欲しい。
声を聞きたいしキスだってしたい。
だけどさ。
仕方ないことってあるもんな。
夢で逢いに行くよ。
夢で逢えたら。
手を繋いで歩こう。
蒼翔と一緒にさ。
・
・
・
・
「雅紀!早く早く!」
「うっせえ!おいコラ!蒼翔!こっちだってば!」
「わんわん!わんわん!!」
翔ちゃんが花畑の真ん中で両手をブンブン振って俺を待ってる。
そっちに行きたいのにリードの先にいる蒼翔は言うことを聞いてくれない。
まるで俺が翔ちゃんの所に行ったら翔ちゃんを抱きしめるのが分かっているかのように反対方向へ行こうとしてるんだ。
くっそー!
ヒョイと蒼翔を抱き上げた俺は翔ちゃんの所にダッシュして行った。
そして右手で蒼翔を抱えたまま左手で翔ちゃんの腰を引き寄せた。
嬉しそうにはにかみながら翔ちゃんはキスをくれた。
俺と翔ちゃんの間に挟まれた蒼翔はバタバタ暴れてたけど、なんだか嬉しそうにバタバタしてるように思えたんだ。
そして右手で蒼翔のリードを持った俺は、左手で翔ちゃんの手を捕まえて3人でゆっくり歩き始めた。
横に並んで歩いたんだ。
すげぇすげぇ幸せな夢だった。